「スター・ウォーズ in コンサート」初期3部作プレミア公演が29日、東京オペラシティ コンサートホールで行われた。
同コンサートは、映画のせりふや効果音はそのままに、劇中に流れる音楽をフルオーケストラが生演奏するもので、映画をライブ感覚で体験できる。
この日は、ニコラス・バック指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏で、『スター・ウォーズ』シリーズの原点である旧3部作の『新たなる希望』『帝国の逆襲』『ジェダイの帰還』が上映された。
『新たなる希望』の本編上映前には、ストームトルーパー(帝国軍の歩兵)とダース・ベイダーが現れ、前景気をあおる。そして、場内が暗くなり、アルフレッド・ニューマン作曲の、20世紀フォックスのファンファーレがフルオーケストラの演奏で鳴り響くと、場内は歓声に包まれ、興奮のるつぼと化した。
スクリーンに宇宙空間が出現し、ジョン・ウィリアムズ作曲のワクワクするような序曲に乗って、「A long time ago in a galaxy far, far away…(昔々、遠い遠い宇宙の彼方で…)」という字幕に続いて“STAR WARS”のメインタイトルが浮かんで消え、星空に画面下から堂々と解説タイトルが進み出し、遥か彼方の暗黒に向かって遠ざかっていく。この、おなじみのオープニングで観客のボルテージは最高潮に達する。
今回、改めてオーケストラの演奏による『スター・ウォーズ』のメインテーマ曲を聴いて、本作に影響を与えた黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』(58)の、佐藤勝作曲の高揚感に満ちたマーチ風のテーマ曲と似ているのではないかと感じた。
冒頭は、しばらく音楽が鳴りっ放しだ。かつてその黒澤監督が、本作の監督であるジョージ・ルーカスや、スティーブン・スピルバーグに「君たちの映画は音楽を使い過ぎだよ」と注意した、というエピソードを思い出したが、もちろん、この後、無音楽になるところもあり、ちゃんとシーンに合わせて、緩急を付けて音楽を配置していることが確認できた。
そもそも映画のサウンドトラックは、映画用に整音された音楽。従って、このコンサートも、最初はオーケストラの大音量が浮いている気がしたのだが、慣れてくると、一転して快感に変わる。そして、世が世なら、ジョン・ウィリアムズはクラシック音楽の大作曲家になっていただろうと確信させられるのだ。
また、少々、マニアックな視点で言えば、砂漠に住むサンド・ピープルの登場シーンのバックミュージックは、砂漠を舞台にした『アラビアのロレンス』(62)のモーリス・ジャール作曲の音楽をほうふつとさせる。そして、それが流れた直後に、同作にも出演していたオビ・ワン役のアレック・ギネスが現れる面白さもある。そんなことを今回発見した。
途中、20分のインターミッションを挟んで、あっという間の2時間25分。今回は97年に公開された「特別篇」のため、オリジナル版(77)にはなかった長いエンドロールがあるが、そのバックにオーケストラ演奏のメインテーマが流れることで、全く長く感じない、それどころかもっと聴いていたいと思わせるものがある。
数年前、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)のエンディングの音楽を、目を閉じて聴きながら、「これがオーケストラの生演奏で聴けたらどんなに素晴らしいだろう」と思ったものだが、今回、その夢がかなったことになる。
この日、筆者は時間の都合がつかず、残念ながら『帝国の逆襲』と『ジェダイの帰還』を“聴く”ことはできなかったが、『新たなる希望』だけでも十分満足できた。全編見事な演奏だった。
(取材・文/田中雄二)