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『ハウス・オブ・グッチ』(1月14日公開)
実話を基に、大手ファッションブランド、グッチ一族の崩壊の様子を描く。監督は84歳のリドリー・スコット。
労働者階級の家で育ったパトリツィア(レディ・ガガ)は、グッチ家の御曹司でありながら弁護士志望のマウリツィオ(アダム・ドライバー)と知り合い結婚する。
だがパトリツィアは、次第に一族の権力争いに参入し始め、夫をたきつけてグッチ全体を支配しようとする。やがて2人の結婚生活は破綻し、マウリツィオに裏切られたパトリツィアはある決断をする。
マウリツィオの父をジェレミー・アイアンズ、伯父をアル・パチーノ、いとこをジャレット・レトというくせ者ぞろいの配役が目を引く。
また、イタリアの一族が舞台で、パチーノが出ているせいもあるが、身内同士の醜い権力争いの様子などは、まるで小規模な『ゴッドファーザー』シリーズを見ているような気分になる。
とはいえ、彼らが繰り広げる争いはどこか滑稽で喜劇的なところがある(ガガ=パトリツィアがエリザベス・テイラーに似ているだって…)。そして彼らが不幸になればなるほど、どこかでざまあみろと思って見ている自分がいる。まさに「他人の不幸は蜜の味」状態だ。
そして、この2時間40分のドロドロ話を飽きずに見させる大ベテラン監督スコットの腕前はやはりたいしたもの。先に公開された『最後の決闘裁判』もそうだが、80歳を過ぎてこれだけの映画が撮れることに驚かされた。
また、これも『最後の決闘裁判』に続いて、ドライバーの怪演が見られる。ガガやアイアンズ、パチーノ、レトとのデフォルメされた掛け合いの様子は、まるで妖怪同士のようにも見えてくるから楽しい。華麗なファッションに包まれたガガの、イタリアの肝っ玉母さんぶりも見ものだ。
時代背景が70年代後期から始まるので、「オン・ザ・レディオ」「アイ・フィール・ラブ」(ドナ・サマー)「ハート・オブ・グラス」(ブロンディ)「フェイス」(ジョージ・マイケル)など、懐メロがふんだんに流れるのも聴きどころだ。
(田中雄二)