【映画コラム】女性監督による2本の佳作『Coda コーダ あいのうた』『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』

2022年1月20日 / 07:15

『Coda コーダ あいのうた』

(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

 ろうあの家族と、彼らの生活を“通訳”として支える健常者の娘の、音楽を媒介とした自立を描き、フランスで大ヒットした『エール!』(14)を、米・仏・カナダの合作としてリメークした『Coda コーダ あいのうた』。 

 タイトルの「CODA」は、「Children of Deaf Adults=耳の聴こえない両親に育てられた⼦ども」のこと。『愛は静けさの中に』(86)でアカデミー主演女優賞に輝いた母親役のマーリー・マトリンをはじめ、父親役のトロイ・コッツァー 、兄役のダニエル・デュラントと、実際に聴覚障がいがある俳優たちが家族を演じている。監督は女性のシアン・ヘダー。

 ボストン近郊で漁業を営むロッシ一家は、長女で高校生のルビー(エミリア・ジョーンズ)以外は、父も母も兄も耳が聞こえない。だが、彼らは臆することなく、明るくオープンな家庭生活を送っていた。

 そんなある日、ルビーに歌の才能があることを発見した音楽教師(エウヘニオ・デルベス)が、彼女に音楽大学のオーディションを受けることを勧める。ところがルビーの歌声を聴くことができない家族は猛反対。彼女は悩んだ末に夢を諦める決意をするが…。

 というストーリーは、ほぼ『エール!』と同じだが、弟を兄に、農場を漁村へと設定を変えている。一方、『エール!』では主人公の才能を見抜いて助力する音楽教師が目立っていたが、この映画で同じ役を演じたデルベスもいい味を出していた。

 さて、『エール!』は、日本で開催されたフランス映画祭で観客賞を受賞したが、この映画も、サンダンス映画祭で史上最多となる、観客賞、審査員賞、監督賞、アンサンブルキャスト賞の4冠に輝いた。つまりはこのストーリー自体が、観客に受ける要素を多分に持っているということだ。

 ただ、粗削りなところが魅力で、フランスの音楽が中心だった『エール!』に比べると、この映画は全体的に洗練され、流れる音楽も「レッツ・ゲット・イット・オン」(マービン・ゲイ)、「ユア・オール・アイ・ニード・トゥ・ゲット・バイ」(タミー・テレル&マービン・ゲイ)、「青春の光と影」(ジョニ・ミッチェル)、「アイ・フォート・ザ・ロウ」(クラッシュ)など、比較的ポピュラーなものになっている。

 両作を見比べて、同じ題材が、国やスタッフ、キャストの違いで、どう変化するのかを考えてみるのも楽しい。

 
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