【映画コラム】ヒロインを中心としたユニークな群像劇『おらおらでひとりいぐも』と『ホテルローヤル』

2020年11月13日 / 06:06

(C)桜木紫乃/集英社 (C)2020映画「ホテルローヤル」製作委員会

 桜木紫乃の直木賞受賞作を映画化した『ホテルローヤル』は、北海道、釧路湿原を望む高台にあるラブホテルを舞台に、ホテルの経営者(安田顕)の一人娘・雅代(波瑠)が、非日常を求めてやって来る人々の切ない人間模様を見つめる話。

 そんな本作は、原作者の桜木の実家だったラブホテルを舞台にした連作小説を、現代と過去を交錯させながら一つの話として描いているのだが、父の後を継いでホテルを切り盛りすることになった雅代は、当然、さまざまな客の赤裸々な性行為や恥ずかしい姿を垣間見ることになる。

 だから、彼女はずっと観客の興味を代弁するような傍観者なのだが、最後はちゃんと“主人公”になるという構成が面白い。

 これは、作り手たちが、全ての登場人物を大事に描いた結果でもある。だから、決して幸せではない登場人物一人一人の悲喜劇を見ているうちに、彼らがいとおしくなってくるし、彼らと関わることで雅代の心境が変化していく様子もすんなりと受け入れられるのだ。

 そんなこの映画には、1970年代のアメリカのニューシネマのような雰囲気があると思ったら、ラストとそれに続くカーテンコールに、78年の名曲「白いページの中に」が流れた。一体誰がこんな選曲をしたのかと思ったら、武監督とのこと。ハマり過ぎていささかずるい気もしたが、これには見事に一本取られた。

 さて、武監督作品と言えば、11月27日公開の『アンダードッグ』よりも、この映画の方に引かれる。どちらも性の問題を大きく扱っているが、それを見ていて嫌な気分になるかならないか、あるいは雑多な登場人物たちの描き方、というところで差がついた。

 これは、もちろん原作物とオリジナルという違いはあるが、多分、脚本家(本作の清水友佳子と『アンダードッグ』の足立紳)の持っている資質や品性の違いが大きく影響していると思われる。(田中雄二)

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