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リリーフ『ワン・カップ・オブ・コーヒー』(91)
ベテラン投手ロイ・ディーンの夢を新人の黒人投手が引き継ぐ様子を描く。1950年代末のマイナーリーグのうらぶれた雰囲気が出色で、野球しか生きる術を知らない男の悲哀がにじみ出る佳作。ちなみに“ワン・カップ・オブ・コーヒー”とは、コーヒー一杯を飲む間(あっという間)しかメジャーリーグにいられなかった選手を表すスラング。マイナーリーグの厳しい現実があればこそメジャーリーグの輝きがあると実感させられる。
監督『ミスター・ベースボール』(92)
二ューヨーク・ヤンキースから中日ドラゴンズにトレードされた強打者ジャック・エリオット(トム・セレック)の姿を通して日米のカルチャーギャップが浮き彫りになるコメディー。監督役は高倉健。セレックも健さんも野球経験はほとんどなかったというが、名選手と監督らしく見せてしまうところが映画のマジック。2人の間で苦労する通訳(塩屋俊)がこの映画の主人公という見方もできる。
(田中雄二)
*『KyodoWeekly』5月25日号から転載し、加筆。