【映画コラム】老境のドヌーブの姿が感慨深く映る『アンティークの祝祭』

2020年6月13日 / 07:00

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、公開が延期になっていた映画が徐々に公開され始めた。6月5日から公開されたカトリーヌ・ドヌーブ主演の『アンティークの祝祭』のその一本だ。

(C)Les Films du Poisson – France 2 Cinema – Uccelli Production – Pictanovo

 最近、意識や記憶がおぼろげになってきたクレール(ドヌーブ)。ある日「今日が私の最期の日」と確信した彼女は、長年集めてきたさまざまなアンティークコレクションを、自宅の庭のガレージセールで処分することにする。そんな中、クレールの奇妙な行動を知った娘のマリー(キアラ・マストロヤンニ)が20年ぶりに帰宅する。

 本作は、ドヌーブとキアラという実の母娘の共演と、人形や時計、肖像画などの豪華なアンティークコレクション、そして美しく幻想的なラストシーンが見どころだが、天下の美女とうたわれたドヌーブが、認知力が衰え、白髪で太った姿を見せるところには感慨深いものがある。それにしてもキアラは、お父さんのマルチェロによく似てきた。

 ただし、たった1日の物語なのに、クレールの意識を反映した現実と幻想の境を描いているので、時間の経過や人物像が曖昧になり、見ながら混乱させられるところがある。監督のジュリー・ベルトゥチェリは、いささか自分の趣味や理屈を出し過ぎた結果、整理不足に陥ったのではないかと思われる。

 これを見ると、タイプは違うが、是枝裕和監督の『真実』(19)の方が、老境のドヌーブをうまく生かしながら、きちんと母と娘の話にしていたとも思える。フランス人よりも、日本人の方が彼女を生かした皮肉は面白い。(田中雄二)


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