【映画コラム】少女から大人の女優へ『メアリーの総て』『輪違屋糸里 京女たちの幕末』

2018年12月15日 / 16:57

 続いては『壬生義士伝』に続く浅田次郎原作の新選組外伝『輪違屋糸里 京女たちの幕末』。

 幕末、壬生浪士組が新選組へと転化していくさまを、土方歳三(溝端淳平)を慕う京・島原輪違屋の天神・糸里(藤野涼子)、平山五郎(佐藤隆太)の恋人で桔梗屋天神の吉栄(松井玲奈)、芹澤鴨(塚本高史)の愛人・お梅(田畑智子)といった女性の視点から描く。

 本作のクライマックスは、土方らによる、芹澤、平山の暗殺だが、それに協力した女性たちがいたというのは浅田流の新解釈。芹澤の屈折を巧みに表現した塚本と、本作の撮影当時は、まだ16歳だった藤野の熱演が印象に残る。

 『ソロモンの偽証』二部作(15)でデビューした藤野涼子(芸名は同作で演じた役名から取られた)は、続く連続テレビ小説「ひよっこ」(17)でも注目を集め、本作(撮影は『ひよっこ』の前に行われた)が時代劇初挑戦となった。

 両親や周囲から「古風な顔だから、かつらや着物が似合うのでは?」と言われ、自身も時代劇には興味を持っていたという藤野。本作の主人公の糸里と撮影時の藤野は同い年だったが、糸里は江戸時代の女性で、しかも舞妓ということで、その生き方は全く異なる。

 それ故、少女から大人の女性へと変わっていく糸里の心情を、加島幹也監督から一つ一つ丁寧に教えられながら演じたという。

 「この作品は私にとって、学生から大人へと考え方が変わる第一歩になりました」と語る藤野。憧れの女優はオードリー・ヘプバーンで、将来は『麗しのサブリナ』(54)のような映画にも出てみたいという。

 どちらも今後が楽しみな2人の女優。次はどんな役で観客の前に姿を現すのだろうか。
(田中雄二)

(C)2018 銀幕維新の会/「輪違屋糸里」製作委員会

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