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深田恭子と松山ケンイチ演じる夫婦のリアルな“妊活”の描写が話題を集めている「隣の家族は青く見える」(フジテレビ系毎週木曜午後10時放送)。だが、本作の見どころはそれだけではない。妊活に加え、リストラや同性カップルといった、今の世の中で避けては通れないさまざまな問題と向き合い、考えさせつつ、温かなタッチでつづっている。その手際の良さには、毎回うならされる。
舞台は、複数の世帯が暮らす集合住宅“コーポラティブハウス”。筆者も初めて知ったのだが、これは、各人が同じ敷地内で設計の異なる個別の住宅に暮らす居住形式で、マンションと一戸建ての中間といった印象だ。
主な登場人物は、前述の妊活夫婦のほか、父親がリストラに遭ったことをひた隠しにする家族、子どもをつくらない約束で婚約したカップル、素性を隠した男性同士のカップルという4組の人々。穏やかに始まった共同生活の中で、徐々に各家庭の事情が明らかになるとともに、波紋が広がっていく。
世の中で注目を集めるさまざまな問題を、各家庭に当てはめた意欲作だが、それだけに中途半端に扱えば批判されかねない。だが本作では、丁寧な妊活の描写に象徴されるように、それぞれの問題と真摯(しんし)に向き合おうとする作り手の姿勢が伝わってくる。
とはいえ、真面目なだけではゴールデンタイムの連ドラとしては魅力に欠ける。それを補っているのが、ハートフルなホームドラマというスタイルだ。世の中にある問題をホームドラマという形式で口当たり良く料理して、敷居を低くする。本作から垣間見えるそんなバランス感覚は、ドラマ全体の心地よさにつながっている。