「光る君へ」第一回「約束の月」 幼少期を描いたドラマからうかがえる今後への期待【大河ドラマコラム】

2024年1月13日 / 09:40

 一方、まひろと深い絆で結ばれることになる“三郎”こと藤原道長についても、「栄華を誇った最高権力者」という教科書的なイメージから、傲慢(ごうまん)な人物を想像していた。ところが、第一回を見る限り、「怒ることが好きではない」と語る穏やかな性格で、かなりのんびりした印象。そんな道長が権力の座を上っていくにつれ、どんな変化を見せるのか。キャラクターの成長、変化も大河ドラマの大きな見どころだが、その点で演技力に定評のある柄本への期待は高い。

 まひろと道長に関して、挙げておきたい点がもう一つ。番組公式サイトで公開されている制作統括・内田ゆき氏のインタビューを読むと、「物語の中盤くらいまでは、政治のことは藤原道長を主軸として描かれます。これは、まだまひろが政治に関わるような位置にいないからですが」との記述がある。この「主人公とは別の人物が大きな歴史を動かし、その中で主人公のドラマを描く」という構造は、「青天を衝け」(21)の渋沢栄一と徳川慶喜、「鎌倉殿の13人」(22)の北条義時と源頼朝の関係を想起させる。だが、主従ではない上、「母の仇」という因縁で結ばれたまひろと道長の関係は、これまでとも違った印象。そんな2人がどのようにドラマを動かしていくのか、気になるところだ。

 もちろん、まひろと道長だけでなく、宮廷を中心とした平安文化や貴族たちの権力闘争(と書くと「鎌倉殿の13人」を思い出すが、それをいかに上回るか?)、さらにこの回登場した「散楽」の一座を含めた当時の庶民文化がどのように描かれていくのか。気になる点はまだまだある。そもそも、平安中期が大河ドラマの舞台になるのは、平将門を主人公にした1976年の「風と雲と虹と」以来、48年ぶり。今までにない平安大河の見どころは盛りだくさん。これから1年間、どんな物語を紡いでくれるのか、期待を込めて見守っていきたい。

(井上健一)

「光る君へ」(C)NHK

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