「どうする家康」第31回「史上最大の決戦」 家康と秀吉の決戦を盛り上げる松本潤とムロツヨシの名演【大河ドラマコラム】

2023年8月18日 / 17:40

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「どうする家康」。8月13日放送の第31回「史上最大の決戦」では、織田家後継者の座を巡って、信長の息子・信雄(浜野謙太)を味方につけた主人公・徳川家康と、柴田勝家を破って勢いに乗る羽柴秀吉の争いが描かれた。

「どうする家康」(C)NHK

 この家康と秀吉の決戦の行方を盛り上げたのが、家康を演じる松本潤と秀吉役のムロツヨシの名演だ。

 ひ弱だった昔とは打って変わって、このところすっかりたくましさと冷静さを身に付けた家康。この回、秀吉との決戦を控えた信雄が、父・信長の重臣だった池田恒興(徳重聡)に裏切られ、「なぜ池田はわしを裏切る!?」とうろたえていたが、その姿はかつての家康を思い出させた。だがここでの家康は、信雄を「総大将がうろたえるな!」と叱責(しっせき)し、改めてその成長を実感させた。

 それは同時に、家康にしたたかさももたらした。この回、重臣・石川数正(松重豊)に贈り物を持たせて秀吉の下へあいさつに向かわせ、出方を伺う駆け引きを見せたくだりは、その好例だ。これまではひ弱さゆえ、「白兎」と呼ばれてきた家康だが、もはやその面影はない。むしろ、おなじみのあだ名「狸オヤジ」へとつながる道筋が見えてきたようにも思える。

 さらに、その変化を引き立てたのが、時折見せる柔和な素顔だ。この回でも、側室・於愛の方(広瀬アリス)と一緒のときの穏やかな表情は、家康の根底にある優しさが失われていないことを実感させ、さりげないコントラストで軍議の場での険しい表情を印象付けた。

 内面の一貫性を保ったまま、家康の成長を実感させる。その松本の演技は見事だった。

 
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