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そして極めつけは、義時が時政の後を継いで執権に就任する経緯だ。謀反を共謀した義時の義母りく(宮沢りえ)は、時政と共に伊豆へ送られることになる。
義時との別れ際、執権を継がなかったことをとがめたりくは、「小四郎いいですか。あなたはそこに立つべきお人」と言葉を贈る。
これに義時は「父上と義母上の思い、私が引き継ぎます。これは、息子からの花向けです」と返し、自ら執権に就任する。これ以上、親子の絆を強く実感させるものはない。
親子の別れを描きながらも、そこから浮かび上がるのは、むしろ決して断ち切ることのできない絆の強さだ。
余談ながら、シチュエーションは全く異なるものの、別れの中に親子の絆を強く感じさせたという点で、本作と同じ三谷幸喜が脚本を手掛けた大河ドラマ「真田丸」(16)の“犬伏の別れ”の名場面を思い出した。「真田丸」が戦国の世を生き抜く真田家の物語であったように、「鎌倉殿の13人」もまた、北条家の物語なのだ。
別れを迎えたとはいえ、時政はまだ亡くなったわけではない。今後も何らかの形で、その断ち切ることのできない親子の絆が生きる展開を期待したいところだ。
(井上健一)