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実はこの回、義時が姿を見せたのは、冒頭に引用した運慶との再会が最後で、頼家の死を知った後の様子をわれわれはまだ知らない。「全てが終わったら、私から話す」と語っていた頼家の母・政子(小池栄子)への報告も済んでいない。全てが片付いた後、義時の中で急激に深まった闇は、悲しみとともに義時自身をさらに黒く染めていくのだろうか。
そんな義時には、「いつか、おまえのために仏を彫ってやりたいな」という運慶の言葉が一筋の光のように響いたに違いない。もしかしたらこれが、義時にとって心のよりどころ、救いになっていくのかもしれない。
頼家を巡る一連の悲劇が幕を下ろした今、運慶の言葉を胸に留めつつ、これからの義時を見守っていきたいと思う。
(井上健一)