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さらに、亡き兄・宗時(片岡愛之助)の「坂東武者の世を作る。そして、そのてっぺんに北条が立つ」という最後の言葉を思い出した場面。
一見、兄の遺志を継いで行動したようにも見えるが、それを思い出したのは全てが終わった後。とすると、頼朝の件と同じように、義時が自分を正当化するための言い訳とも受け取れる。
このように、比企一族滅亡を画策した義時の行動には随所で迷いが感じられ、必ずしも固い決意があったとは思えない。まさに「苦渋の決断」だったのではないだろうか。その微妙なニュアンスを巧みに表現した三谷幸喜の脚本と小栗の演技も見事だった。
そして、その苦渋の決断を経て、全てが終わった後、危篤だった頼家が息を吹き返す想定外の事態。この事態を義時がどう受け止め、次にどんな一歩を踏み出すのか。固唾(かたず)をのんでその行方を見守るばかりだ。
(井上健一)