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また、義時を演じる小栗の演技にも目を見張るものがあった。悲しみに沈む冒頭から、姉・政子(小池栄子)や比企一族の娘・比奈(堀田真由)との交流を経て徐々に笑顔を取り戻し、曽我兄弟の陰謀を知るラストで眼光の鋭さを取り戻すまで、義時の変化を繊細に表現。各場面における小栗の表情を見比べてみれば、その微妙な違いに気付くはずだ。
しかも、大河ドラマの撮影が回ごとではなく、何話もの台本の間を行き来しながら行われていることを考えると、場面ごとに的確な表情を見せる小栗の表現力には、やはり並々ならぬものがある。
一見バラバラな史実にフィクションの混じった義時の生きざまを交差させつつ、八重を失った義時が人生を模索する物語にまとめ上げる。派手な出来事こそなかったものの、「義時の生きる道」のサブタイトルに偽りない見応えある物語に仕上がり、第一線のスタッフとキャストがそろった大河ドラマの真価を改めて思い知った回だった。
(井上健一)