【大河ドラマコラム】「鎌倉殿の13人」第20回「帰ってきた義経」義経の最期を際立たせた2人の女性

2022年5月27日 / 12:13

 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。5月22日放送の第20回「帰ってきた義経」では、源義経が悲運の最期を迎え、斬新な展開と義経役の菅田将暉ら、俳優陣の見事な演技が話題を集めた。

静御前役の石橋静河 (C)NHK

 そのドラマの盛り上げに貢献した存在として筆者が注目したのが、2人の女性、義経の愛妾・静御前(石橋静河)と正妻の里(三浦透子)だ。

 静との悲恋は義経を語る上で不可欠なエピソードであり、誰もが登場を期待していたに違いない。とはいえ、静はあくまでも義経の愛妾に過ぎず、直接歴史を動かす働きをしたわけではない。

 そう考えると、北条義時(小栗旬)が主人公の本作では立ち位置が難しく、ともすれば「義経のかたわらに寄り添っているだけ」になりかねないのでは…とも思っていた。

 だが、名手・三谷幸喜の脚本は、そんな素人の予想を遥かに上回るドラマを生み出した。それを明らかにするため、この回の静の活躍を振り返ってみたい。

 都から姿を消した義経が奥州・平泉にたどり着いたと知った義時は、「九郎を生かして鎌倉に連れて帰るな」という源頼朝(大泉洋)の命を受けて平泉を訪問。

 「私はもう戦をするつもりはない」と畑仕事に勤しむ義経と再会した義時は、ふと、「静さんのことは残念でしたね」と静がたどった悲痛な運命を口にする。

 それは、義経の子を身ごもっていた静が、義経と別れた後、鎌倉方に捕まり、軟禁された状態で出産。生後間もない男の子の命を奪われた後、鎌倉から姿を消した、というものだった。

 これを聞いて悲しみと怒りを募らせた義経は、兄・頼朝との戦いを決意。ところがそれは義時の計略だった。計算通りに義経が動いたことを察した義時は、義経を疎んじる平泉の主・藤原泰衡(山本浩司)を唆し、義経を討ち取らせる…。

 普通であれば、離れ離れになった義経と静は、それぞれ無関係な形で悲劇的な末路が描かれてもおかしくない。ところがこの回では「義経が藤原泰衡の裏切りに遭い、最期を迎えた」という史実に絡める形で静のエピソードを挿入することで、義経の最期を描くドラマの流れに組み込むことに成功。

 義経への思いを込めて「しづやしづ」と頼朝の前で舞った見せ場も鮮やかで、より強く2人の一体感を印象付けた。

 
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