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明智光秀(長谷川博己)が幕臣として腕を振るい始めた大河ドラマ「麒麟がくる」。10月25日放送の第二十九回「摂津晴門の計略」では、幕府の政務を取り仕切る摂津晴門(片岡鶴太郎)が、文字通りの策士ぶりを発揮。将軍が与える領地を利用して、光秀を巧みに罠に陥れた。火ぶたを切った2人の対決の行方が気になるところだが、それと同じぐらい光秀の運命を左右しそうなのが、近衛前久(本郷奏多)との出会いだ。
これまで、武家の棟梁である将軍を支えて幕府を立て直すことが世の平安につながると考え、足利義昭(滝藤賢一)の将軍就任に尽力してきた光秀。だが、腐敗した幕府の内情を目にして、それがそう簡単ではないことを悟る。そんなとき、旅芸人一座の座長・伊呂波太夫(尾野真千子)に導かれ、公家の名門、近衛家の当主・前久との対面を果たす。この初対面では鼓も披露し、前久から一定の信頼を得た様子がうかがえた。
だが、前久はもともと、義昭と対立していた三好勢が擁立した足利義栄の14代将軍就任を帝(天皇)に推挙した人物。義昭の15代将軍就任をきっかけに京を追われ、旧知の間柄である伊呂波太夫を頼って光秀に対面したという経緯がある。これに対して、義昭の将軍就任を後押ししたのは、前久と対立する二条家の当主・晴良(小籔千豊)だ。
さらに、前久は「晴良は、足利義昭が将軍になったのをいいことに、摂津と幕府を味方につけ、私を都から追い払うた。目当てははっきりしておる。近衛の領地を奪い、摂津たちと、わが物にするということだ」とも語り、晴良と摂津のつながりを明かした。
つまりこの対面によって光秀は、自らが仕える将軍・義昭を後押しする一派に対立する人物と関わりを持ったことになる。それは同時に、幕府を牛耳る摂津だけでなく、朝廷を含む権力闘争に巻き込まれる可能性が出てきたことを意味する。
また、「今、幕府を変えられるのは信長じゃ」と織田信長(染谷将太)を評価して前久が去った後、伊呂波太夫が口にした次の言葉も光秀を動かした。
「本当は、前久様はこういうこともおっしゃりたかったのです。この都には、公家や武家や私のような町衆がいて、そして、帝がおいでだと」
この言葉をきっかけに、帝(天皇)の存在を意識するようになった光秀は、帝の苦境を訴える太夫と共に、壁が壊れた御所を訪れ、信長からは「将軍は帝の門番」との言葉を聞かされる。そしてこの回は、完成したばかりの二条城の外壁に手を触れながら、壁が崩れた御所に思いをはせる光秀の姿で幕を閉じた。その胸に浮かぶものは何か。将軍の上に帝がいることを認識した光秀の行動は、これからどう変わっていくのか。