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【軍師官兵衛インタビュー】寺尾聰 「一番したたかな人物として演じたい」 41年ぶりに大河ドラマで徳川家康役

 NHKで放送中の大河ドラマ「軍師官兵衛」で、「国盗り物語」以来41年ぶりに徳川家康を演じている寺尾聰。家康は織田信長(江口洋介)とは同盟を結び、豊臣秀吉(竹中直人)にはライバルとして一歩遅れをとりながらも乱世を制し、天下取りを成し遂げた。

 数々の映画、ドラマでさまざまなタイプの人間を演じてきた寺尾が、老練な策略家としての家康の心情に思いをはせながら、「軍師官兵衛」後半の注目点を語った。

 

徳川家康を演じている寺尾聰

-黒田官兵衛についてはどう考えていますか。

 官兵衛はとても切れる人で、うまくタイミングさえ合っていたら、あの人の時代があったはずです。そういう見方をすると、官兵衛と向かい合ったシーンはとても面白いですね。それに、若々しい官兵衛ではなくて、いろいろと経験を積んできた官兵衛と向かい合うというのが非常に面白かったです。

-41年ぶりの家康役ですが、今回はどのような役作りをお考えですか。

  一番したたかな何人かのうちの一人というふうに演じたいと思っています。ただ、家康は信長、秀吉と比べると、とても作りにくい役だと思うんです。でも期待していただきたいと思っていますし、一方では見る方の想像を裏切ってみたいとも思っています。また、せりふで説明する家康にはあまりしたくないと思っています。せりふがなくても芝居ができる間を制作スタッフがつくってくれているのでありがたい。寡黙で相手を見据えて、一歩ずつ出ていく、そんな感じの家康像を作っています。

-官兵衛を演じている岡田准一さんをどのように見ていますか。

 岡田くんは、黒澤明監督の門下で私の兄弟子に当たる小泉堯史監督の『蜩ノ記』(今秋公開予定)に出演していますが、彼は小泉監督から「大きく演じてくれ」と言われたそうです。彼は器用で努力家で真面目なので、「大きく演じてくれ」というのは最高のサジェスチョンだと思います。岡田くんは期待が大きい後輩の一人です。俳優という仕事を真っすぐに見詰めて生きています。役者同士って面白いんですよ。家康がグッという目をすると、官兵衛も背中をスッとして向かってくる。主役にどういうボールを投げるか。岡田くんがどういうすてきな官兵衛を作るのかを見るのが楽しい。今のところ、「来たな」というかなりの手応えがあります。

-ここ数年は若手の俳優との共演が増えていますね。

  最近は意識して若い俳優たちと共演しています。岡田将生くんや向井理くん、松坂桃李くんら、若くて才能あふれる人たちと向かい合うと、すごく面白いんですよ。僕が若い時は、先輩にぶつかっていっても、自分のことばかり考えてそっぽを向いている人が多くてつまらなかった。ある程度の年齢になった今、若い人には「俺の方がキャリアは長いけど、スクリーンや画面に出たときにそれは関係ない。見た人が素晴らしいと思う芝居をすればいいのだから何も遠慮することはない」と言ってきたけど、最近はそんなことを言わなくても、みんなどんどんぶつかってきます。

-今後、松坂桃李さんが演じる黒田長政とは深く関わっていくことになりますね。

  彼も私も同じ土地に縁があってどこか親近感を覚えるのと、過去にドラマで共演もしているんです。これからどんどん彼とのシーンが出てくるでしょうから、どういう向き合い方ができるのか楽しみです。稽古場で見ていると彼は真っすぐにやっているけど、どこまで真っすぐにやりきれるのか。それに大河ドラマは同年代の俳優がいっぱいいるから、(しのぎを削っているような)意識もあるでしょうし。そういういろんなことが良い形で出てくればいいなと楽しみにしています。他の若い俳優も、自分の演技だけではなく、向き合う相手の俳優の演技も含めてそのシーンの全体を俯瞰でも見られるようになればもっと面白いと思います。そうなればもっと楽しい作品作りができるようになりますから。

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