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NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」で、主人公の文(ふみ=井上真央)や吉田松陰(伊勢谷友介)の叔父、玉木文之進を演じている奥田瑛二。山鹿流の兵学者で、萩に松下村塾を開き、幼い松陰をスパルタ教育で厳しく指導する。気骨のある人物を数多く演じ、演出・監督業でも活躍する奥田が、演技の神髄を語る。
玉木文之進という人物を調べてみたら、とてもスパルタで、清廉、何事にも一筋の人ということが分かりました。そのスパルタぶりがすごくて、思わず自分の父親を思い出しました。近所の人に軽いいたずらをしただけで、道路に出されてバットでたたかれるんです。でも、父には愛があって3時間もしたら許してくれました。だから文之進も愛があれば厳しくてもいいのではないかと覚悟を決めて臨みました。
役者ですからカチンコが鳴れば、本気でいってしまうという習性があります。ですから本番では本気でなぐったのですが、子役の女の子のにらみ返してきた目に涙が浮かんでいて、カットの声が掛かったらセットの隅で声を出して泣いていました。
そうですね。それと後々松陰が「ああいう叔父だったけど、われわれを思う気持ちで鍛え上げてくれたから…」と言っています。この一言が全てを救ってくれると思いました。
象山は宇宙人のような人です。崇高な未来を見詰め、世界的にも突き抜けた精神の持ち主でした。一方、文之進は現実を見据えて日本国をどうしていくかを考えた教育者。宇宙人と人間をどう演じ分けるかですね。
文之進としては松陰のしていることの方が本当は正しいのかもしれないと思いながらも、自分のイデオロギーではそこまで容認することはできないという葛藤があったと思います。松陰が死んだ時のショックは相当なものであったはず。そういう思いを心の中に持っていれば演じられると考えています。
萩では墓や家には行けませんでしたが、文之進の教え子である乃木希典を祭った東京の乃木神社の奥にある正松(せいしょう)神社へ行きました。そこに「玉木文之進・吉田松陰の御柱(みはしら)を祭る神社である」と記されていたので深々と一礼をしたら、心が打ち震えて涙が出てきました。これでもう何があっても文之進が守ってくれると思いました。
以前からよく知っていますが、彼は一生懸命で、本質に近づくための努力は惜しまない人です。今回は松陰にぴったり。伊勢谷は肩の力が抜けていていいですね。松陰像としては爆発的なものを獲得するのではないでしょうか。
撮影が始まってから、ずっと観察してきましたが、ひたむきに役に取り組む姿が印象的です。彼女は演じているときに一瞬にして役を輝かせることができる人。プレッシャーは一切見せない人です。
これだけいい俳優が参加しているわけですから切磋琢磨(せっさたくま)の場ですよね。でも、若い人の中には自分たちの世代がやってきた役作りとは違うものがあったりします。高良健吾も伊勢谷友介も、私たちの何倍も本を読みあさって役を作っていくんです。驚きましたし、私たちも見習って役作りやドラマへの関わり方を考えなければいけないなと思いました。佐久間象山役をやったころから、大河への参加の仕方が変わってきた気がしますね。
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