富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

2025年11月30日 / 08:00

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」に出演する。本作は、日本を代表する世界的作家・村上春樹の同名長編小説を原作とし、フランスを代表する世界的アーティストのフィリップ・ドゥクフレ演出・振付、藤原竜也主演による世界初の舞台化。2025年11月5日に開催された原作小説の朗読会に出演し、舞台でピンクの女を演じる富田へ原作小説の魅力や演じる役柄について聞いた。

富田望生【ヘアメーク:千葉万理子/スタイリスト:杉山凌】 (C)エンタメOVO

-村上作品の中でも人気の高い小説が世界初の舞台化となりますが、出演することについてどう感じていますか。

 背負うものが本当に多そうで、ドキドキです。お話をいただいたとき、もちろん村上春樹さんという存在は知っていましたが、小説を手に取ったことが今までなかったので、やっと読む機会が訪れたという感覚がありました。この物語が舞台になることについて役者としても楽しみですし、原作が大好きな方も、もしかしたらそうじゃない切り口からこの作品に出会う方もいらっしゃると思いますけど、そういった方たちにお届けする日が近づいているので、すごく楽しみです。

-原作は海外でも人気が高く、海外公演も決定していますが、その点についての心境や意気込みは?

 舞台の海外公演は初めてで、海外に行くのも10年ぶりぐらいになるのですが、いろいろな感覚を得られる新しい挑戦だと考えています。海外の方々がこの物語をどう受け止めているのかということと、演劇をどう受け止めるのかということで、いろいろな反応が見られるだろうなと思っています。その反応に1人の人間として出会ってみたい気持ちもあって、その好奇心で今回は挑戦する気持ちが決まったのもありましたが、意気込みとしては頑張りますとしか言えないです(笑)。

-インタビュー後に、村上春樹ライブラリ―で僕役の駒木根葵汰さんと小説の朗読会を実施されますが、実際に原作を声に出して読んでみた感覚は?

 より音が強く想像されるようになった気がします。この作品に限らず小説を読んでいて、物語に出てくる場所がどういう場所なのかをすごく想像するんです。雨が降っているシーンだったら雨音を想像して、それが梅雨の雨なのか、冬の雨なのかとか感覚をすごく研ぎ澄ませて、そこから匂いを発生させたりとかしながら読むのですが、その音の部分がすごく鮮明になっている気がします。

-朗読劇の経験は?

 初めてです。ナレーションの経験はあるのですが、小説の朗読をすごくしてみたかったということもあって、今日の朗読会がどんな会になるのか楽しみです。駒木根さんがどのような感じで来るのかも分からないですが、今の段階で舞台のお稽古をしているわけでもないですし、ピンクの女として読むわけでもないので、私自身の声でこの小説を読むということに今は徹したいと考えています。

-ピンクの女は最初の登場シーンで声をほとんど出すことができないキャラクターですが、朗読会はもちろん、ピンクの女を舞台でもどのように表現されるのか気になります。

 そうですね。音という概念を取られてしまっているので、たぶんですが、視覚的なことも物語上で生まれていることから、舞台の表現だと音は発さないことになるのではないかなと想像しています。ですが、今回の朗読をそうするかというと、やっぱり小説の朗読ではあるので、書かれているものを私なりに丁寧に読むことに徹したいです。

-小説を読まれて、原作の魅力や面白みをどう感じていますか。

 どこか昔のことを思い出す瞬間が“私”というキャラクターにはあります。“私”が、それは特定の匂いと出会ったときだと言っていますが、私も昔からそういう経験があって、感度が高いデジャビュじゃないですが、フラッシュバックというか、その瞬間が昔からあるタイプなんです。だから、私自身としてこの小説の物語を進んでいった感覚がありました。すごくファンタジーだと最初は思いましたし、上下巻あるから長いなとか、本当に簡単な入りでしかなかったんですけど、気付いたら、ものすごく自分の中に潜在的に備わっているものが、そこで過ごしているような気持ちになって、それがすごく私にとってのこの原作の魅力だと感じています。

-台本を読んで感じた、ピンクの女の舞台での魅力や見どころは?

 すごく大人びているようで、すごく子どものようで、すごく真面目に語ったと思えば、急に現実を突きつけてきたりと、このジェットコースターは、藤原さんが演じる“私”という役にとって翻弄(ほんろう)される存在だと思います。そこが私の感じる彼女の魅力であり、未知な部分です。ピンクの女にとっての“私”という存在と、“私”にとってのピンクの女という存在、演じる上ではどちらの角度からも考えることになると思っています。俯瞰(ふかん)的に考えたときに見えてくるものもきっとあると思うので、ピンクの女の感情任せだけにこの物語を見ずに、物語を私自身で感じながらピンクの女を見つけていければと思っています。

-今日の衣裳もピンク色で非常にかわいらしいですが、ビジュアル撮影のときはピンク色ながら大人びたスーツ姿でありつつ、でも胸に大きなリボンを付けているという印象深い姿でした。

 大人っぽさと子どもらしさ、そのはざまにいるイメージがよく出ていたと思います。17歳の役柄ですが、私の17歳と彼女の17歳は生きてきた環境が違う。でも、年相応の興味はあるはずなので、ピンクの女の中で流れている時間というのは、やっぱり17歳の時間だなと感じたりもしています。考え始めると、ずっと考えられてしまうので、とにかく第一に愛を忘れないことだと思います。“私”に向ける興味が、彼女が満たされるために必要としている愛なのであれば、それをちゃんとピンクの女自身も見つけてくれるような旅を私がしなければと今は考えています。

-プライベートでの洋服のコーデもピンク色を好んだりしているのですか。

 ピンクは好きです。昔はピンクのものを身につけるとか着るとかはなかったんですけど、年々好きになっています。例えば文房具とかも含めてピンクを選ぶことがほとんどなかったんですけど、最近は私服にも入れ込んでいるので、ピンクの女の格好になれることがすごく楽しみでもあります。衣装からもらえるパワーというのは、演じる上で大きいので、ビジュアル撮影をしたときも、着た瞬間に何か一つピンクの女を理解できたような気もしていました。ピンクの女と私が近づいた瞬間だったとも思うので、稽古着とかもピンクのTシャツとかピンクのものにしてみようかと思っています(笑)。

-ドラマや映画での活躍だけでなく、舞台などさまざまなジャンルでも活躍されていますが、映像作品の面白さと舞台の面白さについて、それぞれどう感じていますか。

 映像では、レンズを通すというのは不思議なことで、そこで生きてはいるんですけど、撮る監督も人間だし、構えるカメラマンも人間だし、そこに光を当てて音を採取していくのも人間であって、その人たちがそれぞれの部署でやっていたものが一つに収まっている結晶だと感じています。舞台は、それぞれの部署の方のものがもちろん掛け合わさってはいるのですが、掛け合わさったものが生ものとしてそこで生きている。結晶として残るか、生ものとしてそこに存在するかという違いでしょうか。

 私はどちらも好きで、映像はテスト後に基本的に本番は1回きりだと思っていて、舞台もそのときの本番は1回きりですが、稽古で繰り返して、何度も話し合って、本番を何度も踏んでということで、普段、映像をやっている身からするとご褒美のような時間なんです。うまくいかなかったから明日やればいいは絶対に通用しないのは分かっているのですが、同じことをやっているはずなのに本番がいつも違うというのがすごく面白い。これはやっぱり生ものでしか体験できないことだと思うので、今からご褒美が始まるぞと思いながら稽古を待っているところです。

(取材・文・写真/櫻井宏充)

舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は、2026年1月10日~2月1日に都内・東京芸術劇場プレイハウスのほか、宮城、愛知、兵庫、福岡で上演後、ワールドツアーを実施。

舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」


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