「この映画を作るに当たって、本当にたくさんのものを日本からお借りしました」『ザ・クリエイター/創造者』ギャレス・エドワーズ監督【インタビュー】

2023年10月19日 / 16:20

 2075年、人間を守るために開発されたはずのAIが、ロサンゼルスで核爆発を引き起こした。人類とAIの戦いが激化する中、元特殊部隊のジョシュア(ジョン・デビッド・ワシントン)は、人類を滅亡させるAIを創り出した「クリエイター」の潜伏先を突き止め、暗殺に向かう。だがそこにいたのは、幼い少女の姿をした超進化型AI(マデリン・ユナ・ボイルズ)だった。ジョシュアはある理由から、暗殺対象であるはずのAIをアルフィーと名付け、守り抜くことを決意するが…。SF大作『ザ・クリエイター/創造者』が10月20日から全国公開される。公開に先駆けて来日したギャレス・エドワーズ監督に話を聞いた。

ギャレス・エドワーズ監督 (C)エンタメOVO

 

-今回はどういうところからアイデアを得て、映画化を思いついたのですか。

 インスピレーションは、いろいろなところから得ましたが、一番初めは、イギリスで夜遅く仕事をしていた時に、テレビである映画のクリップを見たことです。それは侍と小さな子どもが出てくるもので、とても心に響いたので、あれは一体何だったのだろうと一生懸命調べたら『子連れ狼』だと分かりました。それで、いつかあの2人のキャラクターの力学や関係性を映画の中で描きたいと思いました。それが2000年のことです。SF的なことで言えば、聖なる三つの物があります。それはエイリアン(モンスター)、宇宙船、そしてロボットです。その内の二つは『GODZILLA ゴジラ』(14)と『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)でやったので、今回はロボットにしようと思いました。

-今回のテーマは、ジョシュアとアルフィーを通して、人間とAIとの関係について描くことだったと思いますが、果たしてかわいい子どもの姿をしたAIを殺せるのかというジレンマが象徴的に描かれていましたね。

 それは、もし時間を逆行して子どもの頃のヒトラーをあやめることができたら、あなたはどうしますか? という結構有名なジレンマともつながります。実行したら、自分もヒトラーと同じように罪人になるのではないかということが難問となります。この映画には、それに近いものがあります。そうした奇妙なジレンマみたいなことを考えたり、友だちと話すのが好きなんです。

 AIに関しては、今後われわれの社会に、そうした難問がたくさんやってきます。例えば、家の中や車で扱っているAIは果たして生きているのかということです。もしあなたが車を激しくぶつけてしまったとして、そこにAIが入っていたとしたら、それをデリート(消去)しますかというようなことがこれから起きてくるわけです。それで結局は人間とは? という問い掛けにたどり着くんですけど。今回は、それをテーマとして大きく掲げたわけではなくて、人間がいかに自分とは異なる人々を滅ぼそうとするのかというメタファーとして使ったんです。ただ、やっぱりAIがテーマの一つだから、作っていくうちに、そういう哲学的な問い掛けが当然出てきたし、非常に運がいいことに、今日的な問題として、そうしたことが毎日見出しで語られる時に公開することができました。

-『GODZILLA ゴジラ』はもちろん、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』でも香港のドニー・イェンを起用するなど、今回も含めて、監督はアジアへの意識がとても強いと思いますが、その理由は?

 どうしてかは自分でも分からないんですけど、アジアには強い思い入れがあります。12歳の時に、家族旅行で香港とタイに行きました。12歳はいろいろなものがインプリントされたり、イメージが強く残る時期だと思います。だから、それが大きかったのかなと思います。その時に見たことが、この映画のあるシーンにもなっています。タイのチェンマイの葉巻工場では、働いている女性たちがノールックで(対象を見ずに)おしゃべりしながら作業している姿が印象的でした。大人になってから、あれがAIだったら面白いんじゃないか。AIがだんだんと目覚めてきて、「ここはどこだ」と混乱しているんだけれども、女性たちはノールックで作業しているから、気にもせずに普通に自分たちのゴシップか何かを話しているみたいなシーンはどうしても入れたいなと思いました。

 アジアに引かれるのは、やっぱり欧米の文化とは全く違うと感じるし、未来世界にいるような気がするからなんです。だからスリリングだし、インスピレーションもすごく得ています。日本で撮影して、日本のものを使って映画を作りたいといつも思っているけど、何か「盗んで作っているんじゃないか」という罪悪感もちょっとあります。ただ、クリエイティビティ(想像力)というものは、動物を掛け合わせて進化してきたのと同じように、あれもこれも持ってきて何かを作り出すという行為なので、まあいいのかな、許されるのかなとは思いますが。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

高杉真宙「見どころは、何よりも坂口健太郎さんと渡辺謙さんの演技だと思います」『盤上の向日葵』【インタビュー】

映画2025年10月30日

 『孤狼の血』で知られる柚月裕子の同名小説を映画化。昭和から平成へと続く激動の時代を背景に、謎に包まれた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)の光と闇を描いたヒューマンミステリー『盤上の向日葵』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松 … 続きを読む

Willfriends

page top