松本若菜「ただただ、1人の女性を生きたいという思い」“松本劇場”から一転、心優しき骨髄移植のドナー役『みんな生きている ~二つ目の誕生日~』【インタビュー】

2023年2月13日 / 14:58

 骨髄移植によって命を救われた俳優の樋口大悟が、自身の体験に基づき、企画・原案・主演を務め、骨髄移植を待つ患者と骨髄を提供するドナーの現実を描いた『みんな生きている ~二つ目の誕生日~』が全国順次公開中だ。本作で、急性骨髄性白血病に侵された青年・桧山大介(樋口)に骨髄提供をするドナーの桜井美智子を演じたのは、TBS系の「夕暮れに、手をつなぐ」などで活躍中の松本若菜。昨年、「やんごとなき一族」(フジテレビ系)で“松本劇場”と話題を集めた怪演とは真逆の、心優しき骨髄移植のドナー役に込めた思いを聞いた。

松本若菜 (C)エンタメOVO

-骨髄移植を待つ患者の苦しみやドナー側の葛藤をリアルに描いたヒューマンドラマですが、オファーを受けたときの気持ちは?

 主演の樋口さんが、実際に白血病を経験し、ドナーの方から提供された骨髄液で命を救われたと聞き、「生半可な気持ちではお返事できないな」と思いました。だから、二つ返事で、というわけにはいかなかったのが正直なところです。時間的にどのぐらい、とははっきり言えないんですけど、台本がまだ出来上がっていなかったので、頂いたプロットを何度か読んでじっくり考えました。

-出演の決め手は?

 表現をしている人間として、何かお手伝いできることがあるなら…と。私はドキュメンタリー番組が好きで、普段からいろいろな番組を見ていたので、骨髄バンクについても初歩的な知識はあったんです。実際に、今もドナーを待つ患者の方たちがいますし、そういうことを知っていただく映画に参加するのは、意味のあることかもしれないなと。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、それが素直な気持ちです。

-演じる上で心掛けたことは?

 私が演じた美智子は、ドナーになると決めた後は、自分の中での葛藤や家族の反対もありながら、「自分が決めたことだから」と進んでいく、強い女性です。でももともとは、「そういえばドナー登録していたな」ぐらいの感じなんですよね。だから、マザー・テレサのような善意にあふれた“特別な人”ではなく、ごく普通の女性に見えるように心掛けました。

-役とご自身との距離感はいかがでしたか。

 私は結婚もしていませんし、子どももいないので、「家族のために」という部分は想像するしかないんですけど、「大切な人を傷つけたくない」、「もし大切な人が同じような病気になったら、どうする?」という美智子の葛藤は理解できました。特に、本当に骨髄提供をするのかと尋ねる夫の高志(岡田浩暉)に、「もし、自分の娘が交通事故に遭って、輸血が必要になったときのことを考えるの」と答えた場面は、一人の母親としてリアルな心情だと思ったので、丁寧にやりたいと思っていました。両沢(和幸)監督も、その気持ちを酌み取ってくださり、撮影も丁寧に進めていただくことができました。

-美智子のような役は、一歩間違えると表面的な善人になってしまいそうですが、どこにでもいそうなリアルな女性に見えたところがすてきでした。

 そこは意識していたところでした。そういう意味では、ドナーとして骨髄採取を終え、麻酔から覚めた美智子が真っ先に「患者さんは?」と尋ねるんですけど、医師の先生が「(採取した骨髄液が)先方に届いている頃です」と答えたとき、「よかった…」とつぶやく場面があるんです。その「よかった」は「患者さんの元に届いたんだ、よかった」だけでなく、「私も生きている、よかった」という気持ちも伝えたいと思っていました。

-松本さんは“松本劇場”と話題になった昨年の「やんごとなき一族」をはじめ、最近の「夕暮れに、手をつなぐ」や「探偵ロマンス」(NHK)などで、一癖ある人物がハマり役になっている印象があります。本作の美智子は、それらとは真逆のごく普通の人ですが、気持ちの違いなどありますか。

 実は撮影順でいうと、この作品は皆さんが私のことを知っていただいた昨年よりも前なんです。もちろん、キャラクターが違うので、役の作り方などは違いますけど、そこに特別感を持つと偽善者になりそうなのが嫌だったので、今回は本当にただただ、1人の女性を生きたいという思いでいました。

 
  • 1
  • 2

関連ニュースRELATED NEWS

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

timelesz・橋本将生「『大切な人を守りたい』という気持ちは共感できる」 菊池風磨のアドバイスも明かす【インタビュー】

ドラマ2025年10月21日

 timeleszの橋本将生が主演するドラマ「ひと夏の共犯者」(テレ東系)が毎週金曜深夜24時12分~放送中だ。本作は、大学生の主人公・岩井巧巳(橋本)が、推しのアイドル・片桐澪(恒松祐里)との夢のような同居生活を送るうちに、彼女の中にもう … 続きを読む

高橋一生、平山秀幸監督「アクションはもちろん、人間ドラマとしてもちゃんと娯楽性を持っている作品に仕上がっていると思います」「連続ドラマW 1972 渚の螢火」【インタビュー】

ドラマ2025年10月20日

 1972年、本土復帰を間近に控えた沖縄で、100万ドルの米ドル札を積んだ現金輸送車が襲われ行方を絶った。琉球警察は本土復帰特別対策室を編成。班長には、警視庁派遣から沖縄に戻って来た真栄田太一が任命される。班員は、同級生でありながら真栄田を … 続きを読む

オダギリジョー「麻生さんの魅力を最大限引き出そうと」麻生久美子「監督のオダギリさんは『キャラ変?』と思うほど(笑)」『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』【インタビュー】

映画2025年10月17日

 伝説の警察犬を父に持つオリバーとそのハンドラーを務める鑑識課警察犬係の青葉一平(池松壮亮)のコンビ。だが、なぜか一平だけにはオリバーがだらしない着ぐるみのおじさん(オダギリジョー)に見えており…。  この奇想天外な設定と豪華キャストが繰り … 続きを読む

【映画コラム】初恋の切なさを描いた『秒速5センチメートル』と『ストロベリームーン 余命半年の恋』

映画2025年10月17日

『秒速5センチメートル』(10月10日公開)  1991年、春。東京の小学校で出会った遠野貴樹(上田悠斗)と転校生の篠原明里(白山乃愛)は、互いの孤独を癒やすかのように心を通わせていくが、卒業と同時に明里は栃木に引っ越してしまう。  中学1 … 続きを読む

大谷亮平「お芝居の原点に触れた気がした」北斎の娘の生きざまを描く映画の現場で過ごした貴重な時間『おーい、応為』【インタビュー】

映画2025年10月16日

 世界的に有名な天才浮世絵師・葛飾北斎。その北斎と長年生活を共にし、自らも絵師“葛飾応為”として名をはせた娘・お栄の生きざまを描いた『おーい、応為』が10月17日から全国公開となる。劇中、北斎(永瀬正敏)の弟子の絵師“魚屋北渓”として知られ … 続きを読む

Willfriends

page top