【インタビュー】ドラマ「TOKYO VICE」アンセル・エルゴート「実際に日本に住んだことが、この役のためにとても役立ちました」

2022年4月22日 / 07:00

 WOWOWと米HBO Maxの共同制作オリジナルドラマ「TOKYO VICE」のWOWOW独占放送が、4月24日からスタートする。物語の舞台は1990年代の東京。日本の大手新聞社に就職したアメリカ人青年ジェイクが、特ダネを追い掛けるうちに、危険な闇社会へと入り込んでいく様子が描かれる。ジェイク役のアンセル・エルゴートに話を聞いた。役柄同様、日本語が主体で時折英語が混ざるスタイルでの受け答えに驚かされた。

ジェイク役のアンセル・エルゴート (C)エンタメOVO

-日本語のせりふを覚えるのは大変だったと思いますが、今回は、日本語を話すだけではなく書くシーンもあったので、驚きました。どのようにして覚えたのでしょうか。また、演じるに当たって何かリサーチはしましたか。

 本間さんという、日本語と歴史の先生と一緒に、毎日4時間勉強しました。書き方も教わりました。また、事件記者を演じるために、ロサンゼルスでは本物の記者と一緒に取材をしたり、シャドーイングもしました。ジャーナリズムを勉強する学生として、インタビューの仕方を習ったり、実際に記事も書きました。合気道もしましたし、翻訳のためにいろいろなものを準備して勉強もしました。それがマイケル・マン監督のスタイルで、その役に成り切り、役に没入することで、実際に役を演じたときには、観客には、地に足の付いたリアルな印象を与えることができるのだと思います。

-理解するのが難しかった日本の文化や風習はありましたか。

 それほど難しいことはありませんでした。実は新型コロナの影響で新年を日本で迎えました。そのとき、(共演者の伊藤)英明さんがふるさとに招いてくださいました。毎日温泉に入って、ご家族と一緒に食事をして、お母さんの手料理をごちそうになりました。初詣にも行きました。英明さんの息子さんと一緒におみくじをして、大吉を引きました。だから、私はベリー・ラッキーガイです(笑)。

-今回の監督はマイケル・マンで、先の『ウエスト・サイド・ストーリー』はスティーブン・スピルバーグが監督でした。彼らのような巨匠の演出というのはどのような感じですか。

 マイケル・マンはとても力強い監督です。考えていることを明確に表現します。クルーにはちょっと厳しいときもありますが(笑)、そんな監督を皆尊敬しています。スピルバーグもそうですが、2人とも、撮影前にしっかりと準備をするので、撮影をするときにはとても居心地がいいです。また、準備万端なので、ちょっとでもおかしなところがあればすぐにそれが分かります。とてもリアルで没入感のある経験ができました。2人と一緒に仕事ができて、とても幸せです。マイケル・マンは「1日に9時間、日本語の勉強をしろ」と言いました(笑)。実際は4時間だったのですが、でもその後に、代々木公園で友だちを作って、日本語で話したり、レストランでも日本語で注文しました。実際に日本に住んだことが、この役のためにとても役立ちました。

-入社試験の時の表情の変化や目の動きなどがとても印象的でした。

 実際に、私もジェイクと同じように一生懸命日本語の勉強をしました。だから入社試験のシーンのときは、自分がひらがなの書き方を覚えたことが重なって、髪をかきむしるジェイクと同じ気持ちになりました。それに、マイケル・マンがカメラのま後ろにいて、いろいろとうるさいことを言ってきたので大変でした。彼はそういう監督です(笑)。とてもいい経験をしました。

-このドラマは、今後のキャリアにどのような影響があると考えていますか。

 まずは、この「TOKYO VICE」のシリーズをもっと続けていきたいです。それは日本語を勉強することも楽しいし、日本にいることがとても好きだからということもあります。私にとっては、初めて学んだ外国語が日本語でした。その経験はとても素晴らしいものでした。なので、今後はほかの言語も習えたらと思います。でも、まずは日本語をマスターしたいです。時間はかかるかもしれませんが、とても有意義なチャレンジだと思います。

-日本の作品に出てみたいと思うことはありますか。

 もちろんです。

-このドラマは、ハリウッドのクルーが日本に来て撮ったものですが、完成作を見て、どう思いましたか。

 エピソード1は、長いプロローグのようなものなので、舞台設定をしているだけです。この後、実際にジェイクがやくざを調べていったりして、どんどんと面白くなっていきます。ほかのキャラクターも役割が大きくなっていって、ジェイクとは別の意味で、主役のようになっていきます。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

【映画コラム】実話を基に映画化した2作『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』『栄光のバックホーム』

映画2025年11月29日

『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(12月5日公開)  太平洋戦争末期の昭和19年。21歳の日本兵・田丸均(声:板垣李光人)は、南国の美しい島・パラオのペリリュー島にいた。漫画家志望の田丸はその才能を買われ、亡くなった仲間の最期の雄姿を遺族 … 続きを読む

Willfriends

page top