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『ナイトメア・アリー』(3月25日公開)
訳ありの青年スタン(ブラッドリー・クーパー)は、怪しげなカーニバルの一座に潜り込む。そこで、偽読心術師のジーナ(トニ・コレット)とその夫でアルコール依存症のピート(デビッド・ストラザーン)とチームを組み、偽読心術を身につけた彼は、ショービジネス界での成功を夢見て、座員のモリー(ルーニー・マーラ)と共に都会へ旅立つ。
やがてスタンは、偽読心術と天性のカリスマ性を武器に、豪華なホテルのステージで上流階級の人々を相手にショーを繰り広げるようになるが、心理学者のリリス(ケイト・ブランシェット)との出会いが、彼の運命を大きく変えていく。
ギレルモ・デル・トロ監督が、エドマンド・グールディング監督、タイロン・パワー主演の『悪魔の往く町』(47)をリメーク。カーニバルの見世物小屋、ギーク(グロテスクな芸を見せる見世物師)など、いかにも彼好みの道具立てなので、この題材を選んだ理由は何となく分かる気がするが、よくもこんな渋い映画を見つけてきたものだと感心させられた。
『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)公開時のインタビューで「偉大な巨匠の映画ではなく、メキシコでいうところの“日常シネマ”が大好き」と語っていたので、彼にとっては、前作もそのうちの一本だったのかもしれない。
この映画は、1940年代のフィルムノワールを意識した画調、見世物小屋のおどろおどろしい雰囲気が、“デル・トロ・ワールド”とも呼ぶべき独特の世界で表現されている。また、前作よりも心理劇としての要素が強くなっていたり、主人公のスタンよりも、彼を取り巻く三者三様の女性たちの方が目立つところが現代風だ。中でも、偽読心術師のスタンと心理学者のリリスとの心理分析対決には興味深いものがあった。
また、ウィリアム・リンゼー・グリシャムの原作に寄った結果なのかどうかは分からないが、前作との大きな違いは、ギークの存在を際立たせているところだろう。脇役では、カーニバルの座長を演じたウィレム・デフォーと、偽読心術の鍵を握るピートを演じたストラザーンが印象に残った。