【インタビュー】舞台「陽だまりの樹」早乙女友貴 手塚治虫原作の「今の世の中の状況とリンクする物語」で挑む武士役

2021年3月2日 / 08:00

 手塚治虫の名作『陽だまりの樹』が舞台化され、3月5日から上演される。本作は、幕末を舞台に、ちゃらんぽらんな性格だが、医師としての情熱と優れた技術を持つ手塚良庵と、剣の才能に恵まれ、正義感が強い下級武士・伊武谷万二郎が、時に恋敵となり、時に友情を結び、時代の波に飲まれながら、信じる道を進む姿を描く青春劇。良庵を舞台初主演となる菅田琳寧(7 MEN 侍/ジャニーズJr.)、万二郎を早乙女友貴が演じる。今回は早乙女に、本作での殺陣や見どころを語ってもらった。

伊武谷万二郎役の早乙女友貴

-原作や脚本を読んで、本作のどんなところに魅力を感じましたか。

 今の世の中の状況とリンクする物語だと感じました。単に男と男の友情というだけでなく、世の中に対するそれぞれの思いが丁寧に描かれているので、とても共感できる作品でした。このままじゃ駄目だという焦燥感も、今の世の中に共通すると思います。きっといつの時代も、完璧ではなく、(民衆が)「変えなくちゃいけない」という思いを持つというのは、興味深いことですよね。

-早乙女さんは、どの人物に一番共感しましたか。

 万二郎は、「俺がやらなきゃ変わらない」という思いで、真っすぐに突き進んでいく不器用さがある人物で、良庵は、違うとは思っていても自分で変えるつもりはなく、ただ時代の流れに身を任せる人物です。それぞれ魅力的なキャラクターだと思いますが、共感という点では、どの人物がというよりは、この作品のメッセージ性に共感しました。どの時代になっても争い事は絶えないし、誰かの権力によって自分たちがやりたいことも抑え込まれてしまう。それを万二郎たちは変えようともがくわけですが、僕自身もそういう世の中は絶対に変えるべきで、みんなが平等でいられる時代であってほしいと思います。そういう、作品が伝えたいメッセージはすごく納得ができるものでした。

-今現在、万二郎をどのように演じたいと思っていますか。

 原作では、万二郎はやんちゃなところも残っている、明るさも持った人物に描かれていますが、今、稽古を通して僕が作り上げている万二郎は、もっと侍っぽさのある人物です。良庵と対照的に映るように演じたいと思っているので、原作よりも、もう少しどっしりとした印象の人物にしたいと思っています。

-本作では、早乙女さんの殺陣も見どころの一つだと思いますが、今回は、どのような殺陣を予定していますか。

 まだ殺陣もついていませんが、万二郎は侍なので、侍らしいものにしたいとは考えています。僕が今までやってきた殺陣は、エンタメやショーの要素とリアルさを組み合わせていることが多かったのですが、今回は、よりリアルを追求したいと思います。侍なので、昔ながらの、古典的要素を入れても面白いのかなと思っています。

-演じるキャラクターによって殺陣も変わると思いますが、常に変わらずに意識していることはありますか。

 殺陣というものに対して、一番大事なのは重心で、(体の軸に)芯が通っていることでしっかりして見えます。なので、僕は下半身を意識しています。足の運び方、例えば、足の避け方、逃げ方、運び方によっても役の見え方が変わってくるんです。役柄を殺陣に落とし込むことができるので、殺陣をつける段階で、そこは大切にしています。

-良庵役の菅田さんの印象は?

 (取材当時)まだ稽古が始まって2日なので、深い話まではできていませんが、すごく真面目な方だと感じました。熱心に稽古に取り組んでいますし、学びたいという姿勢が素晴らしいと思います。良庵とは正反対な印象です(笑)。

-万二郎の武士としての生き方について、早乙女さんご自身はどう思いますか。例えば、同じ時代に生きていたら同じ行動をしますか。

 いや、違う行動をすると思います。この時代(幕末)の人たち、特に武士の人たちは、正義や忠義を持ち、男はこうあるべきだという絶対的な信念があり、どんな犠牲を払ってでも、その信念を守ったのだと思いますが、僕はそこまでやれません(笑)。どちらかというと良庵に近いと思います。いろいろなことをやってみたいし、もっといろいろなやり方があるんじゃないかと模索するタイプです。物語の中で、国を良くするために万二郎が行動を起こしますが、それよりも、もっといい対処法があるんじゃないかと思いました。でも、そんな万二郎のことを、すごく男らしいとは思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

二宮和也「子どもたちの映画館デビューに持ってこいの作品です」『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』【インタビュー】

映画2025年5月17日

 テレ東系で毎週月~金、朝7時30分から放送中の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」の映画化第2弾。番組のメインキャラクター「ぷしゅぷしゅ」と相棒「にゅう」が、バカンスで訪れた「どんぐりアイランド」を舞台に繰り広げる冒険をオリジナルストーリーで描き … 続きを読む

【週末映画コラム】異色ホラーを2本 デミ・ムーアがそこまでやるか…『サブスタンス』/現代性を持った古典の映画化『ノスフェラトゥ』

映画2025年5月16日

『サブスタンス』(5月16日公開)  50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、容姿の衰えによってレギュラー番組を降ろされたことから、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、禁断の再生医療「サブスタンス= … 続きを読む

新原泰佑、世界初ミュージカル化「梨泰院クラス」に挑む「これは1つの総合芸術」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年5月16日

 世界中で大ヒットを記録した「梨泰院クラス」が、初めてミュージカル化される。主人公のパク・セロイを演じるのは小瀧望。日本・韓国・アメリカのクリエーターが集結し、さまざまな人種が混じり合う自由な街・梨泰院で権力格差や理不尽な出来事に立ち向かう … 続きを読む

グレッグ・ターザン・デイビス「とにかく、ただ純粋に面白い映画を撮ることだけが、自分たちに与えられたミッションでした」『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』【インタビュー】

映画2025年5月15日

 トム・クルーズ主演の大ヒットスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が、5月23日の公開に先駆けて17日から先行上映される。前作『ミッション:インポッシブル/デッ … 続きを読む

研ナオコ、認知症のおばあちゃん役で9年ぶりの映画主演「主演女優賞を狙ってます(笑)」岡﨑育之介監督「研さんの人生の奥行きがにじみ出た」『うぉっしゅ』【インタビュー】

映画2025年5月12日

 人生に迷いながらソープ嬢として働く若い女性・加那と、彼女に介護されることになった認知症の祖母・紀江の交流を明るくポップなタッチで描いたユニークな映画『うぉっしゅ』が絶賛公開中だ。  本作で、加那を演じる若手注目株の中尾有伽と共に、紀江役で … 続きを読む

Willfriends

page top