【インタビュー】映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』のん「すずさんは同志みたいな感覚です」

2019年12月19日 / 10:30

 2016年に公開され、大きな反響を呼んだ『この世界の片隅に』から3年。新たに250を超えるカットが書き加えられ、約30分も長くなった『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が12月20日から全国公開される。戦時中の広島と呉を舞台にした本作で、主人公すずの声を演じたのんに、映画への思いや、新たなシーンについて聞いた。

主人公すずの声を演じたのん

-前作から3年たって、改めて主人公すずの声を演じた気持ちは?

 最初は、ファン目線というか、「あのシーンも加わるんだ」と思うと、すごくうれしくて興奮しました。でも、いざ「自分がやるんだ」と気付いたら、3年たっているし、期間をおいて同じ役に挑むのは初めてだったので、「自分にできるのかな」と、ちょっと不安になりました。でも、改めて原作を読んだり、前作を見返しているうちに、何となくすずさんの皮膚感がよみがえってきて、つかむことができました。

-今回はすずの“女心”が強調されていましたが、演じてみていかがでしたか。

 確かに、そういう描写がたくさんありますが、その女心は、友だちみたいな感覚でリンさんを大切に思う気持ちがとても強いと感じました。でも、秘密の友だちみたいなところもあって、すずさんはリンさんのことを特別な人だと感じているんだろうなあ、と思うところもありました。だから、すずさんが、周作さんとリンさんの秘密を知ったときに、リンさんを取られたような気持ちにもなるのかなと。そういう複雑な感情が行き交う部分を大事にしました。

-前作では描き切れなかった“秘密”を明かすことについてはどう思いましたか。

 今回は、すずさんの嫉妬心や、自分の中で処理し切れない感情が出ている、というのは、すごく感じました。すずさんがリンさんに「嫁の義務を果たさなければ」とか、「子どもを産まなければ」と話すシーンでは、すずさんがその義務を果たさなければ北條家にはいられないと思っていることがすごく感じられます。そこでリンさんに「この世界に居場所はそうそうのうなりゃせんのよ」と言われるのですが、「すずさんは、こんなに一生懸命自分の居場所を探していたり、不安に思っていたんだ」とふに落ちました。その中で、周作さんとリンさんとの秘密を知ったときは、自分の居場所が脅かされる、自分が人の居場所を侵していたのかもしれない、という複雑な気持ちだったんだろうなあ、という衝撃を受けました。それを表現することが一番重要だなと思いました。それはせりふではなくて、「はあ」みたいな息遣いだったり、言葉にならないもので表現しなければならなかったので、何度もやり直しました。

-そこにはプレッシャーもあったと思いますが、自分の中でも処理をするのは大変でしたか。

 大変でしたね。プレッシャーはそれほどなかったのですが、どれが一番すずさんの感情に沿っているのか、どれが正解なんだ、という部分では、とても悩みました。ただ、やっていくうちに「あっ、これだ」みたいな手応えがあって、(片渕須直)監督からも「OKです」と言われて、納得しながら進められたので、あとは気持ちよく演じることができました。

-前回もそうですが、言葉遣い(広島弁)は大変でしたか。ちなみに私の妻は広島の出身なのですが、のんさんの言葉遣いには全く違和感がなかったと言っていました。

 そうおっしゃっていただけると、とてもうれしいです。よろしくお伝えください(笑)。広島弁はとても大変でした。前作のときも手こずったのですが、演技が乗ってくると言葉がおろそかになり、言葉遣いに集中していると演技がおろそかになり…。そういう苦労があったので、自分になじむまで繰り返し言ってみなければいけないと思いました。前作のときは、普段から広島弁を使うようにして、せりふにもあった「頑張っていかんと」みたいな気持ちでした(笑)。でも、今回はすごく自信がありました。前回やってたくさん褒められたので、「広島弁は大丈夫だな」みたいな気持ちがありました。それで、今回も、方言の資料を事前に頂いて、練習してから臨みましたし、自信もあったのですが、いざやってみるとやっぱり難しかったです(笑)。

-3年の間がありましたが、今回足されていたシーンでも、声質やトーンなどは全く違和感がありませんでした。何か工夫したところはありましたか。

 何度も前作を見返して、原作も改めて読み直して、前回自分がどういう状態で臨んでいたのか、という感覚を思い出しながらやりました。せりふも何度も練習しました。自分で見ても違和感がなかったので、うれしかったです。

-今回は“自分の居場所”というテーマがさらに強く心に残りましたが、その点はどう思いましたか。

 それが一番のテーマだったのかなと思います。そのことが、よりダイレクトに伝わってくることによって、前作と同じシーンでも、せりふの響きが変わったり、違う印象になったりしていました。その作用がとても面白いと思いました。「こんなに変わるんだ」というのが意外で驚きました。例えば、最後にシラミの子を連れて帰るところは、前作だと「やっとすずさんはお母さんになれるんだ」というところに感動があったのですが、今回は、すずさんが「居場所がない。子どもが産めない」と悩んだり、焦ったりするシーンが加わったことによって、それを経たすずさんが、自分で決意して、自分が母親になりたくて、その子を連れて帰ったんだということがよく分かったので、そのことにとても感動しました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

『罪人たち』と『ワン・バトル・アフター・アナザー』が対決!『国宝』ほか日本にゆかりの作品も。授賞式直前!第98回アカデミー賞を占う【コラム】

映画2026年3月13日

 3月15日(日本時間3月16日(月))、映画の祭典・第98回アカデミー賞授賞式が、アメリカのロサンゼルスで開催される。今年は人種差別に対する風刺を交えたアクションホラー『罪人たち』が16ノミネートで、最多記録を更新したことが大きな話題とな … 続きを読む

LiLiCo「ドキュメンタリーは本気なんです」「TBSドキュメンタリー映画祭2026」【インタビュー】

映画2026年3月12日

 歴史的事件から、今起きている社会の動き、市井の人々の日常、注目のカルチャーまで、TBSテレビおよびJNN系列局の記者・ディレクターたちが、世に送り出してきたドキュメンタリーを集めた「TBSドキュメンタリー映画祭2026」が、3月13日から … 続きを読む

【インタビュー】「ルーツを大切にする心を知って」、台湾原住民シンガーのサウヤーリさんが大阪でパフォーマンス

音楽2026年3月11日

 台湾のグラミー賞「金曲奨」をはじめ台湾国内の主要3音楽賞を受賞したアルバム『VAIVAIK 尋走』。いま、アジアの音楽シーンで注目を集めるアーティストの一人が、台湾原住民族・パイワン族のシンガー、サウヤーリさんだ。沖縄と台湾を一つの海域と … 続きを読む

「再会」“万季子”井上真央の過酷な過去が判明 「ラストの4人の友情と愛情に泣いた」「真犯人はあの人」

ドラマ2026年3月11日

 竹内涼真が主演するドラマ「再会~Silent Truth~」(テレビ朝日系)の第8話が、10日に放送された。(※以下、ネタバレを含みます)  本作は、横関大氏の推理小説『再会』をドラマ化。刑事・飛奈淳一(竹内)が、殺人事件の容疑者となった … 続きを読む

「未来のムスコ」「将生(塩野瑛久)が本命ルートを突っ走っている。まー先生(小瀧望)は出走が遅い気が…」「颯太くん(天野優)、めっちゃ演技が上手で感心した」

ドラマ2026年3月11日

 火曜ドラマ「未来のムスコ」の(TBS系)の第8話が、10日に放送された。  本作は、夢も仕事も崖っぷちのアラサー女性・汐川未来(志田未来)のもとに、“未来のムスコ”だと名乗る颯太(天野優)が現れたことから始まる、時を超えたラブストーリー。 … 続きを読む

page top