【インタビュー】「二度目の夏」東出昌大「ついにきたかという思い」太賀「僕の俳優人生にとってすごく大きなことになる」

2019年5月18日 / 16:00

 舞台「二度目の夏」で、東出昌大と太賀が映画『桐島、部活やめるってよ』以来、7年ぶりの共演を果たす。本作は、演出家・映画監督・そして俳優としても知られる岩松了がM&Oplaysと定期的に行っているプロデュース公演の最新作で、湖畔の別荘を舞台に、ある夫婦と夫の親友、そして彼らの周囲が繰り広げる「嫉妬」をめぐる物語が描かれる。プライベートでも仲がいいという東出と太賀に、久しぶりの共演について、そして公演に懸ける思いを聞いた。

東出昌大(ヘアメイク:AMANO/スタイリスト:及川 泰亮)、太賀(ヘアメイク:高橋将氣/スタイリスト:石井大)

-東出さんは岩松作品初出演、太賀さんは本作が4回目となりますね。まずは、出演が決まったお気持ちを。

東出 岩松さんの舞台は以前から何回も拝見していたので、そのせりふ量や熱量、それからお客さんを不思議なもやの中に置き去りにするような魅力は十分承知していました。なので、そういったさまざまな熱量を必要とするんだろうなと予想したので「ああ、岩松さんか」という…その一言です(笑)。僕の中では岩松さんは王道であり異端なんです。そんな岩松さんの作品に出演するということは、正気を保つのにも力が必要なぐらい引っ張られるんだろうなと。その上、演劇の聖地である下北沢のシンボルとも言える本多劇場でやるということだったので「ついに来たか」という思いもあります。

太賀 僕は初めて出演した舞台が岩松さんの作品だったんです。なので、岩松作品は、僕の演劇の原体験というふうに思っています。毎回、岩松さんとご一緒させていただく喜びと同時に、呼んでいただけていることは当たり前ではないという緊張感も持っています。今回のオファーを受けて、ここでもう1回、岩松さんとやれるってことは、僕の俳優人生にとってすごく大きなことになると、高揚しました。

-お二人は『桐島~』以来7年ぶりの共演ですね。今、お互いに役者としてどのような印象をお持ちですか。

東出 『桐島~』ではお芝居をすること自体が苦しかったという思い出があるのですが、僕が役者として一歩踏み込めた要因の一つがそのときの太賀くんも含めた『桐島~』のときの友情だったんです。あの頃は「ちょっと仕事行ってくるわ」って仕事して、帰ってきたら、家でまだ二日酔いの太賀が寝ているみたいな、ただ飲み明かして、無為な日々をよく過ごしていましたが(笑)。でも、それぐらい気心が知れている人とお芝居ができるのはすてきなことだと思うので楽しみです。

太賀 『桐島~』は、出演者の年齢もバラバラだったんですが、東出さんが最年長だったので、映画初出演、初お芝居にもかかわらず、その現場のみんなのお兄ちゃんでまとめ役でリーダーをしてくれていました。今、思えば、きっと東出さんも初めての映画の現場で訳も分からず、いろいろな思いがあったと思いますが、僕たちガキんちょたちの全てを請け負ってくれていて、器のでかさを感じましたね。今回、7年ぶりにガッツリと対峙(たいじ)してお芝居ができることに興奮しています。

-本作では、男の嫉妬心が描かれています。お二人は「嫉妬」について、どのように捉えていますか。

東出 若い頃は色恋においても嫉妬することはもちろんありましたが、30を過ぎて、家庭もありますし、男女の嫉妬ということからは遠ざかったように思います。でも、逆に年を重ねて、今振り返ると、嫉妬には自己愛がつきまとっていて、本当に他者をただ愛していたのか、他者を好きな自分が好きなのか、とどのつまり自分だけが好きなのか、とは考えます。この作品は、自己愛が裏テーマであると思うんですよ。現場でも、自己愛や愛、嫉妬というものを掘り下げて考えて、新しいことに気付かされるんだろうなと思います。

太賀 僕も10代の頃には、色恋に限らず、他者に対する嫉妬心がすごくありました。年を重ねるごとに、その嫉妬心は薄れてきていますが、それは嫉妬心が減ったのではなくて、嫉妬している自分の気持ちを隠す方法を覚えているってことなんだと思うんです。だから、根源的な嫉妬心のサイズ感やスケール感は変わっていないような気がしていて、そうやって人は大人になっていくのかなって、今、自分で実感しながら試しているところです。この作品では、自分がそう感じていることを演じる上で踏襲できたらいいなと思っています。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

 元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

Willfriends

page top