エンターテインメント・ウェブマガジン
人々が貧困と出口のない閉塞感にあえぐ大正末期の日本を舞台に、実在した「女相撲」の一座とアナーキスト・グループ「ギロチン社」の青年たちが心を通わせ、自由を追い求めて生きる姿を描いた映画『菊とギロチン』。同作のブルーレイ・DVDが発売されるにあたり、構想30年という瀬々敬久監督の熱いエネルギーを感じながら、主人公で女力士の花菊役に体当たりで臨んだ木竜麻生が、過酷な撮影現場を振り返るとともに、女優としての進化を語ってくれた。
瀬々監督をはじめ、スタッフ・キャストの熱量がすごくて、映画に対する愛情が伝わる作品の現場にいられたことは本当に幸せです。
新人賞は一生に一度しか頂けないものだし、壇上でトロフィーを受け取ることも初めての経験だったので純粋にうれしかったです。でもやはり、クラウドファンディングを通して支援してくれた大勢の方をはじめ、製作に携わった全員の代表としていただいた賞だと思います。
自分だけではたどり着けないところまで、スタッフ・キャストの皆さんに引っ張ってもらった部分もありますが、至らないところが多く、もう少し役に向き合えたんじゃないかと思うこともあります。でも今は、初めて主演をさせてもらって「よし!」という気持ちよりは、こうやって反省できただけでもいいのかな…と思います。
大学4年生のとき、もう少し映画の現場に入りたいと考えていたので、作品のオーディションがあると聞いて挑戦しようと決心しました。
最初は「うわっ、力士なんだ…」と思いました。アナーキストとかも、よく分かりませんでしたが、登場人物それぞれが悩みを抱えていて、ちょっと悲しいけど、すごい人間っぽくて、懸命に生きようとする姿や、そのために行動を起こすところに引かれたので頑張ろうと決めました。
最初から力士役ではなく、農家から逃げ出して女相撲「玉岩興行」に入る設定だったので、3~5キロぐらい増量する程度でした。共演者の中には10キロも増やされた方がいました。
撮影中は、女性だから言動を妨げられ、女性であることを邪魔に思ったり、手も足も出ない自分は弱いと痛感したりする花菊を実感することができました。その共感する気持ちがあれば、経験がないことも補えるのかなと思いながら演じていました。
撮影中は心掛けも飛ぶくらいいっぱいいっぱいでした(笑)。でも、実力も経験もないけど、花菊が泥だらけになりながらもがむしゃらに真っすぐに進んでいくので、その姿を大事に、自分が今やれることを全部出し切ろうと頑張りました。
何が何でも生きます!花菊みたいに言葉にして行動を起こしていきたいです。撮影に入った当初はきっとそうは思えなかったけど、花菊が強くなったように私も変わったので、ボロボロになりながらも生きていきたいです。
ありました。ギロチン社のメンバーの大次郎さん(寛一郎)との大事なやりとりのあと、そのときの感情を背負って臨まなければいけないシーンなのにそれができず、周りで起きていることを細やかに感じてくみ取ることもできていなかったときでした。ただ、必死過ぎて、その瞬間を覚えていなくて、撮影後にスタッフさんが「花菊がすごい怒られていた」と言っているのを聞いて、そういえば今の正気の自分が聞いたら、かなりショックなことを言われていたな…と思いました(笑)。
「自由に動いてください」というスタンスだったので、そもそも苦戦ばかりでした。後半の爆弾シーンは何テイクも撮っているうちに日が落ちて、雨も降り始めて、瀬々監督が「大体分かったな。あとは自由演技だ!」と言ったんですが、分かってもいないのに「はい」と応えていました(笑)。
私は最高で10テイクくらいです。寛一郎くんの爆弾シーンが最高値で、「朝8時から17時までワンシーンしか撮っていないんだって」と現場がザワザワしました。なので、自分はこれぐらいでへこたれている場合じゃないと奮起しました。
年が近いこともあって、撮影期間はホテルからコンビニまでよく一緒に歩きました。爆弾シーンのことは「もう、午前中の記憶なんてないよ」って言っていました(笑)。そういうおしゃべりの時間はとてもありがたかったし、「明日も頑張ろう」と助けになりました。寛一郎くんは、今でも久しぶりに会うと戦友に見えてホッとします。
映画2025年12月12日
イギリスで最初の原作絵本が誕生してから80周年を迎えた人気児童向けアニメ「きかんしゃトーマス」の劇場版『映画 きかんしゃトーマス サンタをさがせ!パーシーのクリスマス急行』が12月12日から全国公開された。シリーズ初のクリスマスムービーと … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年12月10日
元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む
ドラマ2025年12月8日
NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む
映画2025年12月5日
戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む
舞台・ミュージカル2025年12月4日
YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む