【インタビュー】『赤い雪 Red Snow』永瀬正敏「『この世界に身を置きたい』と思える素晴らしい脚本でした」菜葉菜「一生に一度出会えるか出会えないかという作品」

2019年2月2日 / 14:28

 ある雪の日、1人の少年が突然姿を消す。その行方は不明のまま30年が経過。事件の責任は弟を見失った自分にあると、自責の念にとらわれたまま大人になった少年の兄・白川一希と、少年誘拐の容疑者の娘として育った江藤早百合。被害者の兄と容疑者の娘である2人の周囲で再び事件が動き出し、思わぬ真実が明らかになっていく…。これが長編デビュー作となる甲斐さやか監督が、自身のオリジナル脚本を映画化した重厚なミステリー『赤い雪 Red Snow』が、2月1日に全国公開された。ダブル主演を務めた白川一希役の永瀬正敏と江藤早百合役の菜葉菜が、撮影の舞台裏を語ってくれた。

永瀬正敏(左)と菜葉菜

-オファーを受けたときに感じた作品の魅力は?

永瀬 何といっても、脚本が素晴らしかった。こんなに重厚な雰囲気のある作品に出会ったのは久しぶりです。まるで映画を見ているように、「どうなるんだろう?」と興味を引かれたまま読み終えてしまい、「ぜひ、この世界に身を置かせていただきたい」と。

菜葉菜 永瀬さんがおっしゃったように、重厚な雰囲気のある脚本で「これぞ映画だな」と。早百合という役はものすごく強烈ですが、その分やりがいもあって魅力的。そういう役を甲斐監督が「私に」と言ってくださったからには、何かあるんだろうと。そういう知らない自分を知りたいという気持ちもあり、「ぜひやらせてください」と答えました。こんなふうに思える作品は、一生に一度出会えるか出会えないか。私にとっては、それがまさに『赤い雪』でした。

-甲斐さやか監督はこれが長編デビュー作ですが、初対面の印象は?

永瀬 小柄でかわいらしい方だったので、「この人がこんなに鋭い脚本を書くの?」と驚きました。話をしても、作品に漂うアンニュイな雰囲気は全く感じられず、とても素直。ただ、じっくり聞いていると、節々に「なるほど」と納得できるものがある。だから、「この監督には、きっとまだ何かがあるはずだ」と。ますます「身を預けてみたい」と思うようになりました。

菜葉菜 以前、甲斐監督の短編を見る機会があったんです。そのときから、その世界観に魅了され、「この監督と一緒にお仕事をしたい」と思っていました。実際にお話をしてみると、自分のことを見抜かれていると感じることがあったり、自分でも感じていた「役者として足りない部分がある」ということを指摘してくださったり…。役者に対する愛がないと、普通はそこまで見てくれません。そういう意味で、ものすごく愛情を感じたので、「監督の世界に入りたい」とより素直に思うことができました。

-役作りはどのように?

永瀬 僕も幼い頃に弟を亡くしているので、身内を亡くすという点では、一希に通じるものがありました。とはいえ、基本的には甲斐監督に委ねた感じです。どんな作品でもその姿勢は変わりませんが、今回は監督が「この人は、絶対に何かある」と思わせてくれた分、いつも以上に委ねる気持ちが強かった気がします。

菜葉菜 撮影に入る前、監督とディスカッションして早百合像を掘り下げる機会があったので、事前にある程度は共有できていました。ただ、監督から「せりふが少ない分、たたずまいで見せないと」と言われていたこともあり、自分なりに彼女の生い立ちや背景を調べた上で、現場に臨みました。

-一希と早百合が雪の中で対峙(たいじ)する場面は、お二人のお芝居に圧倒されました。

永瀬 菜葉菜さんの顔が、それまでとは全く違いました。撮影が始まると、一希に追い駆けられた早百合が逃げる途中、自転車で思い切り転倒したのに、全く気にせず芝居を続けていて…。

-転倒は芝居ではなかった?

菜葉菜 本気で転びました…(笑)。

永瀬 普通だったらカット(の声)が掛かって、心配したスタッフが集まってくるはずなんです。でも、それをさせない気迫がありました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

高杉真宙「見どころは、何よりも坂口健太郎さんと渡辺謙さんの演技だと思います」『盤上の向日葵』【インタビュー】

映画2025年10月30日

 『孤狼の血』で知られる柚月裕子の同名小説を映画化。昭和から平成へと続く激動の時代を背景に、謎に包まれた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)の光と闇を描いたヒューマンミステリー『盤上の向日葵』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松 … 続きを読む

Willfriends

page top