「不思議な感覚になった最終回を見てほしい!」森下佳子(脚本)前編【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年12月10日 / 20:50

 残すところあと1回となったNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」。主人公・井伊直虎(柴咲コウ)を先頭に、戦国乱世を駆け抜けた人々のドラマは、多くの視聴者を魅了してきた。最終回(12月17日放送)を前に、全50回の脚本を書き上げた脚本家の森下佳子氏が、この1年を振り返った。

脚本の森下佳子氏

-脚本を書き終えた今のお気持ちは?

 最初は書き切れる気がしなかったので、なせば成るものだな、というのが一番です。すごく楽しかったです。

-数少ない史実の隙間を、さまざまなエピソードでつないでいく展開が見事でした。豊富なアイデアは、どのように発想されたのでしょうか。

 4分の3ぐらいは井伊谷の中の話なので、そこで起こり得るとしたら何があるのか、ということから考えていくことが多かったです。海があるわけではないので、基本的に貿易はできない。だけど、少し行ったところに気賀という町があって、そこではどうやら湖を使って船が行き来していた形跡がある。さらに、そこでは方久という人が城主をやっていたのではないかという話もある。そうすると、この人とこの人は同じ人だから、ここをつなげられないか、というふうに、痕跡を拾って井伊谷で起こり得ることにフィードバックしていく形です。

-大変そうですね。

 あとは、主人公が尼さんだったというファクターも、物語を作る上で大きく作用しました。禅僧の世界に浸ったことがある人が、どう考えてさまざまな困難に立ち向かったのか。そういうパーソナルなキャラクターの部分と、史実に痕跡が残っている部分を組み合わせていった感じです。方程式を解くのに似ています。物語を作らなければいけません。こういう条件がそろっています。さて、ここからどういう解が導き出せるでしょう…というような。解けた時はすごくすっきりするので、しんどいけれど楽しい作業でした(笑)。

-綿花の栽培や材木の商売、小姓の日常など、当時の文化を巧みにドラマに取り入れていたことも特徴ですが、苦労した点は?

 とにかく分からないというのが一番です。その辺は、考証の先生に教えていただいたり、岡本(幸江/チーフプロデューサー)さんに調べていただいたりしましたが、少し先の時代の資料を参考にして作ることが多かったです。小姓の生活についても、詳しく書かれた資料がほとんどなかったので、残っているお家のものを基に作っていきました。

-綿花や材木を物語に取り入れるアイデアは、どこから?

 綿花については、三河木綿というものが割と早い時代からあったんです。そこで、何か商品作物で物語を作ろうとした時、直虎が飛び付くことができるのはそれだろうということで、井伊谷で綿花を栽培することになりました。材木に関しては、井伊は山だらけで他に資源がないので、売れるのはこれしかない、ということで。

-柴咲コウさんのお芝居は、どのようにご覧になっていましたか。

 華がある上に、こうと決めたことを迷いなくピシッと出される印象です。やんちゃな領主時代と尼さんの時と在野の農婦になった今。すべておとわという1人の人間ですが、柴咲さんが時代ごとに別の色にきちんと塗り分けてくださったのは、すごく有り難かったです。そこがぼやけてしまうと、「おとわ変わったな」と思ってもらえず、面白くありませんから。

-柴咲さんとお芝居の話をされることはありましたか。

 基本的に、そういう話は誰ともしていません。ただ、現場で柴咲さんを捕まえて、まだ書いていない先の展開を話しまくり、柴咲さんは次のスタンバイに行きたいんだけど…みたいになったことが何回かありました(笑)。主役だから先々の展開が不安だろうと思って話したのですが、彼女の方がずっとどっしりしていました。さすが殿です(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

 ドラマ・映画・舞台と数多くの作品で活躍する生駒里奈が、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで作り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT「クリス、いってきマス!!!」に出演する。生駒に … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

 毎週月曜夜10時からカンテレ・フジテレビ系で放送している、ドラマ「モンスター」。趣里演じる主人公・神波亮子は、“高校3年生で司法試験に合格した”人物で、膨大な知識と弁護士として類いまれなる資質を持つ“モンスター弁護士”という設定。しかし今 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

 韓国発の大ヒットWEBコミックを日本で映画化したサスペンスホラー『他人は地獄だ』が、11月15日から公開された。  地方から上京した青年ユウが暮らし始めたシェアハウス「方舟」。そこで出会ったのは、言葉遣いは丁寧だが、得体のしれない青年キリ … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

「ローマの共和制の問題点は、今の世界が直面している数々の問題と重なる部分が多い」『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』コニー・ニールセン【インタビュー】

映画2024年11月15日

 古代ローマを舞台に、皇帝の後継者争いの陰謀に巻き込まれ、剣闘士(グラディエーター)として壮絶な戦いに身を投じる男の姿を描いたスペクタクルアクション『グラディエーター』。巨匠リドリー・スコットが監督し、アカデミー賞で作品賞や主演男優賞など5 … 続きを読む

Willfriends

page top