【インタビュー】『カーズ/クロスロード』山口智充 「挫折を経験した時、どう乗り越えるか、子どもたちへの良い教科書に」

2017年7月10日 / 08:10

 

 ディズニー/ピクサーの人気アニメーション映画『カーズ』が2006年に公開されてから11年。シリーズ第3作『カーズ/クロスロード』が7月15日から公開される。華々しく活躍してきた主人公の天才レーサー、マックィーンの前に、今回は新キャラクターのストームが立ちはだかる。挫折を経験したマックィーンは、人生の岐路(クロスロード)に立つことに…。第1作から、日本語吹き替え版で、マックィーンを支える陽気なおんぼろレッカー車メーターの声優を務める山口智充に、本作のみどころやメーターの魅力について聞いた。

メーターの声優を務める山口智充

-最新作『カーズ/クロスロード』を見た感想は?

 まず映像のリアルさが素晴らしいですね。実写のような映像が第1作、第2作にもありましたが、本作ではさらにクオリティーアップしています。特に森のシーンなどは、実写と見間違うほどでびっくりしました。そして、迫力あるスピード感は、途中からアニメという感覚がなくなっていくほどすごかったです。本作は、テンポの良さや、レース部分が大きな軸になっているので、エンターテインメントとしても多いに楽しめました。

-主人公のマックィーンから感じたことを教えてください。

 マックィーンに関しては、ついにこういう時代がやってきたかと…。今回は、マックィーンの生きざまが描かれた人間くさい物語がリアルに描写されていると思います。シリーズの年月の経過とともに、ベテランになったマックィーンが人生の岐路に立たされますが、芸能界においても同じで、共感しながら見させていただきました。人生には「老い」が必ずやってきますが、車もそうなんですよね。年式が古くなると老いてくる。改めて車と人間は似ているなと思いました。

-子どもたちのファンも多いと思いますが、子どもたちが本作を見たら何を感じ取ると思いますか。

 子どもたちには「かっこいい!」という見方が多いのではないかと思います。というのも、本作はシリーズの中でもレースシーンが一番多いので、スピード感に興奮したり、ハイテク新型車との対峙(たいじ)に「かっこいい!」と感じたり、リアルなクラッシュシーンに驚いたりと、とても楽しめると思います。そして、スランプに陥ったマックィーンが立ち直っていく様子などは、「頑張れ!マックィーン!」と感情移入しやすく、他の人気ヒーローと同じように、一度やられて、最後に応援で立ち直るみたいなところにも、子どもたちは大喜びすると思います。

-子どもたちに見てもらいたいところはどこですか。

 第1~2作にも、仲間、友情、絆などは描かれていますが、最新作はより強く描かれています。カーズのメンバーたちとの絆が年月とともにさらに深まっていますので、そこを子どもたちに感じ取ってほしいです。それから、ピンチや挫折を“どう乗り越えるか”ということを学べますが、僕たち大人も学ばなければいけないですし、子どもたちにその背中を見せなきゃいけないこともあると思います。挫折を経験した時、どう乗り越えるか、そこを本作で見てもらえると、すごく良い教科書になるはずです。

-メーターの魅力はどんなところにあるのでしょうか。

 『カーズ』の中でも、メーターは存在感が大きいキャラクターです。これは「何でかな?」と思うんですけど…。本作は、第1作の公開から11年も経っていますが、メーターは最新作でもさびれたまんまで変わっていないんですよね。相変わらず、ライトも片っぽだけだし、ボンネットもない、ボディーもボロボロ。でも「俺はそれでいいんだ。レッカーの仕事はできているし…」とシンプルに自分をしっかり持っている。そこが魅力でかっこいいし、「そういう人でありたい」と思っています。そして見た目はオンボロでも「こいつ(メーターは)、やる時はやるよ」という信頼感も周りから得ているのがすてきですね。

-全作を通して、メーターが語るせりふで好きなものはありますか。

 マックィーンに「僕は親友だから」と言うんですけど、そういうのって言われた方はすごくうれしいと思うんですよ。“あざとさ”がなくてはっきり言える。そういうことってかっこいいなと思います。相手も「君は僕の親友だ」と改めて認識できるし、そういうことってなかなか言えないですけど、大事なのかなと思います。

-メーターはとても心優しい陽気なキャラですが、ご自分と似ていると思うところはありますか。

 散々メーターを褒めているので、メーターと似ているところを話すのはおこがましいというか恥ずかしいですね(笑)。強いて言えば、陽気で仲間を大事にすることと、正義感が強いところです。メーターは悪に対してはものすごく怒ります。僕も正義感は強い方ですが、一度信用した仲間というのはとことん付き合いたいというか、仲間意識が強いです。そういうところは似ているかもしれません。

-初めてメーター役の声にチャレンジした時、声はどのようにしようと決めましたか。

 「メーターの声はこんな声かな」と決めた時は、意識せずにこの声でスタートしました。初めてキャラを見た時は「前歯出てるやん!」と思って、「こんな感じかぁ」と僕の中の印象で練習したんです。自分がやっている物まねと一緒で、瞬間でやりますが、メーターの場合も、声が「ぱっ」と出ました。レコーディングの初日に、映像に合わせてアフレコしたのですが、監督から「ちょっとそのイメージ違うな」とか言われるかと思ったら、そのままでオーケーだったので意外でした。

-声だけで表現する難しさや、苦労した点はありますか。

 本国(アメリカ)の方は、先に声優さんが台本のせりふをしゃべって、それにアニメを合わせるということを聞きました。僕らは後から声を合わせていくので、日本の声優さんの方が難しいことをやっていると思うんです。ただ、本国の声優さんがアドリブで言った、何と言っているのか分からない表現を、監督から「ネイティブな表現にしてください」と言われることがあったんですが、それが難しくて苦労しました。今後は本国の声優さんが自然に入れたアドリブを、どれだけ自然に吹き替えられるかが課題ですね。

(C)2017 Disney/Pixar. All Rights Reserved.


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋克典「これは吉良の物語でもあるのだと感じていただけるような芝居をしたい」 堤幸彦「『忠臣蔵』は、演劇的に言えば1丁目1番地的な作品」 舞台「忠臣蔵」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年12月10日

 元禄時代に実際に起こった仇(あだ)討ちを題材に歌舞伎などで取り上げられて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されてきた屈指の名作「忠臣蔵」が、上川隆也主演、堤幸彦演出によって舞台化される。今回、吉良上野介を演じるのは、高橋克典。高橋はデビ … 続きを読む

生田斗真が驚きの一人二役!「最初から決まっていたわけではありません」制作統括・藤並英樹氏が明かす舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月8日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。謎の絵師“写楽”が、蔦重の下で歌麿(染谷将太)ら当 … 続きを読む

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

Willfriends

page top