【インタビュー】窪田正孝「今までやってきた役は極力捨てる」 「ヒトヤノトゲ~獄の棘~」で初の刑務官役

2017年3月17日 / 17:30
初めて刑務官役に挑戦する窪田正孝

初めて刑務官役に挑戦する窪田正孝

 3月19日からWOWOWで放送される連続ドラマW「ヒトヤノトゲ~獄の棘~」。主人公は刑務官であった亡き父親と同じ職業に就いた新人刑務官・武島良太(窪田正孝)。良太が赴任した刑務所では平然とギャンブルをする看守部長の秋村繫晴(萩原聖人)や受刑者のいざこざも見て見ぬフリをする上司など、善というのには程遠い刑務官たちの姿が。そんなある日、法務省からきたキャリア刑務官で看守長の名久井惣一(小澤征悦)が新たに着任。

 良太は名久井から刑務所内の秩序を乱している刑務官を調査して報告するように命ぜられる。所内で板挟みにあって悩む良太に、刑務所の受刑者で最大の力を持つ神宮組組長の神宮是清(泉谷しげる)から、父親の死が事故ではなかったかのようなことを聞かされ動揺する。良太が知る刑務所の本当の実態とは? そして死んだ父親の本当の死因とは?その先にある予想外の巨悪の存在と、過去に塗りつぶされた拘置所内での許されざる犯罪に辿り着く。新人刑務官の苦悩と成長を描く社会派サスペンスだ。

 2006年のデビュー以降、NHK連続テレビ小説「花子とアン」や「THE LASTCOP/ラストコップ」(日本テレビ系)などのテレビや映画で活躍する実力派俳優・窪田正孝。今回のドラマで初めて新人刑務官役を演じるにあたって裏話や見どころについて話を聞いた。

──初の刑務官役を受けたときの感想とドラマ全体の感想を聞かせてください

 刑務官役を受けたときは「重み」があるという印象でした。刑務所の中のことは未知の世界なので新鮮な気持ちで演じられればいいなと思いました。後半からお父さんの死について暴かれていきますが、視聴者の目線になることをずっと意識していました。ドラマは刑務所という世界で人間の弱さ・強さ・醜さを描いていますが、私たちが暮らす実生活にも多く共通しているので置き換えて見ると楽しめるのではないかと思います。

──今回の役を演じるに当たって工夫したことはありますか

 作品と一緒に進められればと思っていたので、新人刑務官・武島が持つ新鮮さを意識しました。初めは仕事に戸惑っていた武島も次第に慣れていく様子を監督と話しながらテストをして方向性を見つけていくという作業をしました。どう演じようとかはあまり意識せずに、あえて刑務官という職種についても調べませんでした。その方が新人刑務官の「新鮮さ」を出せると思いましたので。

──年上の役者さんが多いですが、受けたアドバイスや芝居に対する姿勢は?

 普段から年上の役者さんと仕事することが多く、いろいろな方にアドバイスをいただきます。いろんな方に役ごとのヒントをいただきますが、行きつく答えは共通しています。僕の中では今までやってきた役柄は毎回違う人間なので、今までの役作りは通用しないと考えています。そして今までの芝居をまず「捨てる」作業をいつもしています。歳を重ねても、いつも柔軟にいろいろな役をこなせるようでいたいと思っています。

──先輩役者と共演して勉強になったことはありますか

 先輩方の監督とのコミュニケーションのとり方が勉強になりました。話の引き出し方や話し方などいろいろ経験されているので、小さいことのようですが僕には大きいことなので勉強させてもらいました。

 ヘアメイク:及川美紀 スタイリスト:大石裕介(DerGLANZ) 衣裳協力:ディオール オム

ヘアメイク:及川美紀
スタイリスト:大石裕介(DerGLANZ)
衣裳協力:ディオール オム

──撮影中にリフレッシュするために何かされましたか

 撮影所にこもって撮影していたので、昼ごはんは外に出て小澤さんたちとラーメンを食べに行くこともありました。外の空気が吸いたくなるんです。言い方が悪いですが、昼食が終わるとまた現場に収監されていくような感じでしたね(笑)。

──今回は女性のキャストが少なく男性に囲まれている印象でしたが撮影はどんな様子でしたか

 そうですね、まるで部活をやっているような感じでした(笑)。先輩に囲まれていた、部活時代を思い出しました。高校生のころはバスケ部だったのですが、いつも男子だけで行動していたこととか思い出しましたね。それと僕自身、男兄弟で育っているので男性ばかりだとなんとなく気持ちが楽でした。小澤さんたちとも男だから話せるみたいな内容の…。内容はここでは話せませんけどそんなこともありました(笑)。

──看守長の役をされた小澤さんはどんな印象ですか

 小澤さんは演じる役柄に一番遠い方人ですね。役と違って普段は柔らかいというかいつも笑わせてくださる方です。クランクインは名久井さん(小澤)にカフェに呼び出されるシーンから始まったのですが、基本的に作品や芝居のことは一切話さないんです。でも、撮影が始まるといきなり名久井のトーンになるので「すごいな」というか、いろいろと狂わされました(笑)。

──刑務官役を演じて「醜さ」「優しさ」「厳しさ」を肌から感じたとコメントされていましたが、この中で一番強く感じたのは何ですか

 人間の「醜さ」ですね。醜さ=弱さだと思いますが、ストーリーではいつの間にか賭博など悪事に手を染めていたり、気づいたら間違った方向に行ってしまう。悪いことも多数でやれば正義になるのかということを深く考えさせられ、ドラマ全体を通して人の弱さや醜さを肌で感じることができました。

──刑務官は人を仕切るのが仕事だと思いますがプライベートでは仕切るほうでしょうか

 後輩などの年下に対してもいつも「自由でいいんじゃないか」と考えているので、明らかに仕切らないタイプです。先日も後輩とご飯を食べに行ったとき、自由に店を決めてもらったり、年下の後輩には上下関係を求めないです。いつもニュートラルでいるようにしています。

──作品全体の見どころはどこでしょうか

 静かに音もなく悪事が起きますが作品全体を通していえば、人との距離感、悪事に染まっていくところなど人の心情に静かに迫っていく映像に監督がこだわって作っています。地上波では伝えられない「重さ」がすごく詰まっています。そこを感じ取ってもらえれば幸いです。

kubota1

「獄の棘(ひとやのとげ)」とは刑務所の鉄条網を表し、刑務所の中の真実は決して見えてこない、という意味

WOWOW日曜オリジナルドラマ「連続ドラマW ヒトヤノトゲ~獄の棘~」
3月19日スタート(全6話)毎週日曜午後10時から(第1話無料放送)
4月22日(土)深夜0時より、第1話~第5話まで一挙放送


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

安田顕「水上くんの目に“本物”を感じた」水上恒司「安田さんのお芝居に強い影響を受けた」 世界が注目するサスペンスで初共演&ダブル主演「連続ドラマW 怪物」【インタビュー】

ドラマ2025年7月5日

 韓国の百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した極上のサスペンス「怪物」。WOWOWが世界で初めてそのリメイクに挑んだ「連続ドラマW 怪物」(全10話)が、7月6日(日)午後10時から放送・配信スタート(第1話・第2話 … 続きを読む

TBS日曜劇場「19番目のカルテ」が7月13日スタート 新米医師・滝野みずき役の小芝風花が作品への思いを語った

ドラマ2025年7月5日

 7月13日(日)にスタートする、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS 毎週日曜夜9時~9時54分)。原作は富士屋カツヒト氏による連載漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」 (ゼノンコミックス/コアミックス)。脚本は、「コウノド … 続きを読む

南沙良「人間関係に悩む人たちに寄り添えたら」井樫彩監督「南さんは陽彩役にぴったり」期待の新鋭2人が挑んだ鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』【インタビュー】

映画2025年7月4日

 第42 回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の小説を原作にした鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』が、7月4日公開となる。浪費家の母(河井青葉)に代わってアルバイトで生活を支えながら、奨学金で大学に通う主人公・宮田陽彩が、過酷な境遇を受 … 続きを読む

紅ゆずる、歌舞伎町の女王役に意欲「女王としてのたたずまいや圧倒的な存在感を作っていけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月4日

 2019年に宝塚歌劇団を退団して以降、今も多方面で活躍を続ける紅ゆずる。7月13日から開幕する、ふぉ~ゆ~ meets 梅棒「Only 1,NOT No.1」では初めて全編ノン・バーバル(せりふなし)の作品に挑戦する。  物語の舞台は歌舞 … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

 グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸 … 続きを読む

Willfriends

page top