「急に関白になるって、現代なら『来年からアメリカ大統領だから』と言われたようなものですから」 新納慎也(豊臣秀次)【真田丸 インタビュー】

2016年7月6日 / 11:08

 NHKの大河ドラマ「真田丸」で、豊臣秀吉(小日向文世)に代わって関白の位に就くおいの豊臣秀次を演じている新納慎也。戦国の世では人が良過ぎる秀次が、秀吉からのプレッシャーを受け止める苦悩を語る。

 

豊臣秀次役の新納慎也

豊臣秀次役の新納慎也

-秀次役で出演依頼を受けてどんな気持ちでしたか。

 舞台が多かったので、大河ドラマや時代劇は一生やらないものと思っていましたから、びっくりしました。オープニングで自分の名前が出た時は携帯電話で撮って親にメールしました。

-役作りのための勉強は?

 書籍通販サイトで「豊臣秀次」と検索して、出てきた7、8冊の本は全部読みました(笑)。(秀次の首塚を供養するために建てられた)京都の瑞泉寺も訪ねました。穏やかな表情の肖像画がありまして、住職さんとも「今までのエキセントリックなイメージではない秀次であればいいですね」と話していたんです。そうしたら、(脚本の)三谷(幸喜)さんも「時代と秀吉に翻弄(ほんろう)されていく等身大の人間」として描いていたんです。

-演技で一番難しかった部分は?

 綱渡りのようなキャラクターをどう表現するかです。バランスが難しかったですね。

-秀吉のことは好きだけど気を遣っている感じがしますね。

 本当の両親はいるのですが、秀吉と寧(鈴木京香)は父と母そのもの。愛情を感じて、秀次もちゃんと返している。ただ秀吉はかんしゃく持ちでどこに地雷があるか分からないから、秀次はここまではOKかなと確かめるのが癖になっているんです。

-なぜ秀次は追い込まれていったのでしょうか。

 急に関白になるということは、現代なら「来年からアメリカ大統領だから」と言われたようなものでしょ。秀吉からのプレッシャーがずっとたまっていて、なにかの瞬間にあふれたのだと思います。あふれ出したらもう誰が何を言おうと聞こえない、見えない。重圧をかけられ続けた人はそうなっていくんだと思います。

-切腹のシーンはどんな撮影になりましたか。

 その世界に入り込めるように、休憩も入れず、順々に最後まで五つのシーンを続けて撮りました。僕から「笑えないけど笑おうとする瞬間を作らせてほしい」と提案をしました。その時の秀次は、生んでくれた両親、きり(長澤まさみ)、寧さん、真田信繁(堺雅人)のことなどを走馬灯のように思い出していたはず。自分に関わってくれた人の良い部分が思い出され、自分の人生は悪くなかったという笑顔かなと思って演じました。最後までいい人なんです。秀次は(笑)。

-秀次の人間的な魅力は?

 あの地位にいるのにフランク。本当に国を治めるようになっていたら、もっと町民や商人の意見も聞いてうまくいったかもしれないですね。

-“小日向”秀吉の怖かったところは?

 チラッと見られるだけでも怖いですよ。でも本番が終わると「あーもう声が出なくなっちゃう、何回もやらせないでよー」って豹変します。「ドラマですから」って周りから突っ込まれると、「やだよー」って(笑)。

-三谷さんは新納さんにとってどんな存在ですか。

 役者人生のここぞというときにすてきなオファーをしてくれる。日本のオリジナルのミュージカルでブロードウエーの舞台に立つ機会を与えてくれたのも三谷さん。方向をガチャンと変えてくれて「この道を進みなさい」と言ってくれる存在です。

-今回の大河で得たものは何ですか。

 映像の面白さが分かってきたことかな。切腹する直前のシーンで、せりふを録るマイクが「ドク、ドク、ドク」っていう僕の心拍音を拾ったんです。僕自身も心臓の音を感じていたし、感情が制御できなくなっていました。舞台では稽古で一度ぐらいそうなることはあっても毎回の本番でそれを再現することはできません。1回きりの奇跡を映像に刻みつける面白さ。自分でも分からないものが生まれてくる瞬間を感じた時に、映像の楽しさや素晴らしさを体験できました。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

河合優実「少しでも戦争について考えるきっかけになれば」戦争で大切な人を失った蘭子役への思い 連続テレビ小説「あんぱん」【インタビュー】

ドラマ2025年5月21日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルに、何者でもなかった朝田のぶ(今田美桜)と柳井嵩(北村匠海)の2人が、数々の荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパ … 続きを読む

稲垣吾郎、ハリー・ポッター役で「新しい風が吹かせられれば」 舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年5月21日

 稲垣吾郎が、現在、ロングラン上演中の舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」にハリー・ポッター役で出演する。本作は、小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者であるJ.K.ローリングらが、舞台のために書き下ろした「ハリー・ポッター」シリーズの8作目 … 続きを読む

二宮和也「子どもたちの映画館デビューに持ってこいの作品です」『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』【インタビュー】

映画2025年5月17日

 テレ東系で毎週月~金、朝7時30分から放送中の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」の映画化第2弾。番組のメインキャラクター「ぷしゅぷしゅ」と相棒「にゅう」が、バカンスで訪れた「どんぐりアイランド」を舞台に繰り広げる冒険をオリジナルストーリーで描き … 続きを読む

【週末映画コラム】異色ホラーを2本 デミ・ムーアがそこまでやるか…『サブスタンス』/現代性を持った古典の映画化『ノスフェラトゥ』

映画2025年5月16日

『サブスタンス』(5月16日公開)  50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、容姿の衰えによってレギュラー番組を降ろされたことから、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、禁断の再生医療「サブスタンス= … 続きを読む

新原泰佑、世界初ミュージカル化「梨泰院クラス」に挑む「これは1つの総合芸術」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年5月16日

 世界中で大ヒットを記録した「梨泰院クラス」が、初めてミュージカル化される。主人公のパク・セロイを演じるのは小瀧望。日本・韓国・アメリカのクリエーターが集結し、さまざまな人種が混じり合う自由な街・梨泰院で権力格差や理不尽な出来事に立ち向かう … 続きを読む

Willfriends

page top