【コラム 2016年注目の俳優たち】第8回 松岡茉優&岸井ゆきの 信繁を取り巻く二人の女優 「真田丸」

2016年7月5日 / 16:39
大谷吉継の娘・春を演じる松岡茉優

大谷吉継の娘・春を演じる松岡茉優

 豊臣秀吉(小日向文世)による天下統一が実現した「真田丸」は、新たな展開を迎えて新キャストが登場。最初の妻を亡くした後、すっかり男やもめ状態だった真田信繁(堺雅人)の前にも、ようやく新たな女性が現れた。大谷吉継(片岡愛之助)の娘・春と豊臣秀次(新納慎也)の娘・たかだ。それぞれ、若手女優の松岡茉優と岸井ゆきのが演じている。

 今最も勢いある若手女優の一人である松岡は、現在「水族館ガール」(NHK)に主演中。明るく元気いっぱいなイメージが定着しつつあり、「育ちの良いお嬢さま」といった雰囲気の春はそんな松岡にピッタリだ。

 だが、信繁との結婚後は、苦難の日々が待ち受ける。先日NHKの「土曜スタジオパーク」に出演した際、松岡は春について「女性らしさの中にも貪欲さ、強さがある人」と語っており、明るさだけではない幅広い演技が見られそうだ。

 そんな松岡の特徴と言えるのが、クリっとした瞳に感情がにじむ演技。2014年に出演したNHKの時代劇「銀二貫」では、幼いころに実の親を亡くすという不幸な境遇の中、育ててくれた女性を母と慕って懸命に生きるヒロインの町娘を熱演。内に秘めた悲しみがまなざしからにじむ演技は深く心に残った。

 「真田丸」第26回「瓜売」でも、信繁を見詰める瞳に育ちの良さが漂っていた。今後は、ぜひそのまなざしにも注目してほしい。

 そしてもう一人、信繁の三人目の妻となるのが、秀次の娘のたか。こちらは春とは対照的に、家族が処刑された後、生き延びて信繁の側室に迎えられるという過酷な境遇を背負う女性だ。

 やはり初登場となった第26回「瓜売」では、秀次がきり(長澤まさみ)に側室たちを紹介する場面で不機嫌そうな表情を見せていたが、陰のあるたたずまいからは、朗らかな春との違いが際立った。

 演じる岸井は、09年に女優デビュー。近年は『友だちのパパが好き』(15)、『ピンクとグレー』(15)などに出演し、頭角を現しつつある。14年には東京ガスのCMでも注目を集めた。

 中でも強い印象を残すのが、振り切ったコメディータッチのキャラ。15年にはコント調のコメディー「SICKS ~みんながみんな、何かの病気~」(テレビ東京系)で、清純派AV女優つばめをあっけらかんと演じて見事なコメディエンヌぶりを披露。

 先日終了したばかりの「99.9-刑事専門弁護士-」(TBS系)には、松本潤演じる主人公が居候する小料理屋の常連客・加奈子役で出演していた。主人公に一方的な思いを寄せ、決してめげないコメディーリリーフぶりを記憶している人も多いだろう。

 「真田丸」は、一転してシリアスな演技を広くアピールする場になるはず。今後も、7月9日公開の『森山中教習所』をはじめ、出演作が続々と公開予定。これから注目していきたい女優の一人だ。

 持ち味の異なる松岡と岸井の個性が、境遇の異なる春とたかの役柄にどのように反映されるのか。彼女たちの活躍が楽しみだ。

(ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)


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