「いなくならないと話が始まらない役なので…」西島秀俊(小橋竹蔵) 【とと姉ちゃん インタビュー】

2016年3月28日 / 17:16

 4月4日から始まるNHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」。戦後、一世を風靡(ふうび)した生活総合誌『暮しの手帖』の創業者たちの軌跡をモチーフに、“父親代わりの長女”小橋常子(高畑充希)が家族を守るべく奮闘する姿を描く。常子たち三姉妹の父・竹蔵は仕事も家庭も大事にするが、常子が11歳の時に結核で死去。竹蔵が残した言葉は終生常子の指針となる。竹蔵を演じた西島秀俊が、竹蔵の伝えたかった思いや人柄について語る。

 

小橋竹蔵役の西島秀俊

小橋竹蔵役の西島秀俊

-常子の幼少期のパートに出演されますが、撮影現場での三姉妹(子役)との雰囲気はいかがでしたか。

 無理する必要はないと思いつつも、もしできたら本当の家族のような関係になれたらと思っていたのですが、浜松のロケに行った初日から、待機している車の中でじゃれあうような関係になれまして…(笑)。とにかく子どもたちと毎日、毎日、控室にも帰らずにワイワイ過ごしました。幸せな思い出です。

-長女・常子役の内田未来ちゃん、次女・鞠子役の須田琥珀ちゃん、三女・美子役の川上凛子ちゃんたちの印象はいかがでしたか。

 三人共全然キャラクターが違いました。役のキャラクターともちょっとずれていて…。実は、琥珀のほうが未来よりも活発で、未来ちゃんは他の二人よりもすごく照れ屋さんでした。また凛ちゃんは天才的な子で…。すごい子なんです(笑)。三人それぞれ個性がありました。実際の物語の中では、深い愛情で自分の家族を大きく守っている竹蔵さんですが、実際の撮影現場では、僕は三人の娘に翻弄(ほんろう)されっ放しでした。

-西島さんが翻弄されたのですか。

 一緒に遊んだ空気のままで撮影に入ったりすると、子どもの方がせりふもばっちり入っていてしっかりしていたりする。僕が吹き出してNGを出すこともあり、子どもたちによく怒られました(笑)。三人の娘に日々、いい意味で引っ張ってもらった感じです。

-竹蔵という人物にどんな印象を持ちましたか。

 竹蔵という人物は、当時の一般的な父親像からはかなりかけ離れた人だと思います。当時の父親というのは家族の中に君臨していて、奥さんや子どもが何かおかしいと指摘することは本当に許されない存在だったはず。でも、竹蔵という人は相手が奥さんでも、娘でも、丁寧な言葉で話して、自分が間違っていた時は「すまなかった」と素直に謝るような人物。男女や家族といった固定観念から外れて、娘とも一人の人間として接しています。男性の生き方として、理想の一つではありますね。

-すてきなお父さんですね。

 また「日々の生活を丁寧に生きることに価値がある」という思想を子どもに伝えようとしていた人で、子どもたちがまさにそのバトンを受け取っていく。ゆくゆくは才能を開花させていく彼女たちですが、その彼女たちの種が育まれる最初の土壌となる存在だと思います。

-良き父を演じる上で、特に気を付けた点はありますか。

 西田征史さんの脚本が本当に素晴らしくて、竹蔵の「こら」というせりふ一言でも、平仮名で絶対に感嘆符が付いていない。決して高圧的ではないんです。ただ、子どもが危険なことをしたり人に迷惑を掛けたりした時はきっちり怒る。その場合も頭ごなしに怒るのでなく、その行動の動機となったことは丁寧にくみ取って、そのことはむしろ認めてあげたりする。そういった厳しさと優しさの両方を持っている父親なので、そういう部分を大切に演じたいなと思いました。

-西島さんご自身が、お父さんから言われて心に残った言葉があれば教えて下さい。

 そうですね。自分がこの道に入るため、家を出ることになった時に、父親からは「とにかく食事をきちんと取れ」ということを言われました。苦労をしたら、恐らく食費から切り詰めがちですが「服はボロを着てもいいから、心が貧しくならないように、栄養のあるものをきちんと食べなさい」と言われて…。実際に、若い時の一人暮らしでは実践できませんでしたが、その言葉は自分の中に残っていて、できる範囲でそれを守っていこうと心掛けていました。

-普段から語り合うという親子関係なのですか。

 うちの父は、どちらかというと僕にとってちょっと怖いといいますか、古いタイプの近寄り難いような父だったので…。独り立ちしてからもなかなか話せませんでした。最近は、ちょっとは認めてもらえたのか、仕事の話をしたり助言をしてくれたりもしますが、それも僕が40代になってからですかね。

-ドラマの中に「月に1回家族皆でお出掛けをする」といった家訓がありますが、普段の西島さんにも何か決め事はありますか。

 特には無いですけど…。ルールがあるかといえば、ないです(笑)。

-普段の生活で大切にされていることは?

 基本的に家が好きであまり外に出るタイプではありません。とにかく家の中でのんびり快適に過ごせることが大事。個人的には、外ですごく刺激的な仕事をさせていただいているので、逆に、仕事を離れた時には、日常の何でもないことを丁寧に大切にしたいと思っています。

-出演は1週間のみで、後は遺影出演ということになりますね。

 「純情きらり」の時もそうでしたが、朝ドラの現場って、朝から晩まで実際に一緒に生活する様子を撮るので、他のドラマでは感じられない“家族の幸福感”があるんですよ。個人的には「幽霊としてでも出してもらいたい」という思いがあったので、1カ月で撮影が終わってしまうのは非常に残念。でも、いなくならないと話が始まらない役なので…(笑)。

-最近の朝ドラでは「あさが来た」での“五代ロス”など男性のキャラクターが絶大な人気を得ることもあります。“竹蔵ロス”現象が起きるかもしれませんね。

 竹蔵はないですよ(笑)。竹蔵は、丸眼鏡を掛けたちょっとぼんやりした人。娘たちにもいろんなことを突っ込まれて、「すまん」っていつも謝っているような人ですから。そんな、ちょっと抜けたお父さんを温かく見守ってほしいなというのが個人的な感情ですね。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

 ドラマ・映画・舞台と数多くの作品で活躍する生駒里奈が、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで作り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT「クリス、いってきマス!!!」に出演する。生駒に … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

 毎週月曜夜10時からカンテレ・フジテレビ系で放送している、ドラマ「モンスター」。趣里演じる主人公・神波亮子は、“高校3年生で司法試験に合格した”人物で、膨大な知識と弁護士として類いまれなる資質を持つ“モンスター弁護士”という設定。しかし今 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

 韓国発の大ヒットWEBコミックを日本で映画化したサスペンスホラー『他人は地獄だ』が、11月15日から公開された。  地方から上京した青年ユウが暮らし始めたシェアハウス「方舟」。そこで出会ったのは、言葉遣いは丁寧だが、得体のしれない青年キリ … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

「ローマの共和制の問題点は、今の世界が直面している数々の問題と重なる部分が多い」『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』コニー・ニールセン【インタビュー】

映画2024年11月15日

 古代ローマを舞台に、皇帝の後継者争いの陰謀に巻き込まれ、剣闘士(グラディエーター)として壮絶な戦いに身を投じる男の姿を描いたスペクタクルアクション『グラディエーター』。巨匠リドリー・スコットが監督し、アカデミー賞で作品賞や主演男優賞など5 … 続きを読む

Willfriends

page top