【花燃ゆインタビュー】高橋英樹「井伊直弼はやむを得ず松陰に死の査定を出したのではないか」 松陰の処刑を決めた幕府の大老、井伊直弼役

2015年4月18日 / 08:28

 NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」で、徳川幕府の大老として、日米修好通商条約を結び、尊王攘夷派と激しく対立。安政の大獄で吉田松陰(伊勢谷友介)の処刑を命じた井伊直弼を演じている高橋英樹。時代劇の象徴的な存在として長く活躍してきた高橋が、井伊の厳格な幕府運営の苦悩を語る。

 

井伊直弼役の高橋英樹

-7年ぶりの大河ドラマ。オファーがあったときはいかがでしたか。

  前回の「篤姫」で演じた島津斉彬も大変楽しくやらせていただきましたが、井伊直弼には特別な思いがあります。私の芸の上での師匠である(二代目)尾上松緑が第1回の大河ドラマ「花の生涯」で演じましたし、私が長野主膳を演じさせて頂いた初舞台「花の生涯」では、もちろん松緑が直弼を演じました。舞台袖からずっと師匠の演じている直弼をにらみつけるようにして見ていまして、いつかこの役を演じたいと思っていました。45年かかりましたが、どう表現しようかと考えると楽しみです。

-「花燃ゆ」で描かれる井伊直弼像は?

 長州側から描くドラマなので、井伊直弼はワルで敵方の人物です。でも、あの時代を必死になって駆け抜けていった一人の人物であることは間違いない。結果的にワルに見えますが、諸外国に負けないように、徳川家の行政官としてどう務めるかということを考え、日本のために努力した人であることは間違いないと思います。

-悪役は難しそうですが。

 人間には必ず善と悪があって、その悪の部分を表現する人間というのはなかなか深いものがある。昔からやりたいと言ってきました。

-井伊直弼にはどんなイメージを持っていましたか。

  井伊が藩主を務めていた彦根は現在もロケでよくお世話になりますし、彦根城を散策するのが大好きなんです。彼は鎖国という状況の中で、諸外国と新たに結びを始めるために、あの時代の行政官としては最大のことをやったと思っています。

-長州藩についてはどうですか。

 松陰は死ななくても良かったんじゃないかな。松陰は井伊のことも褒めていますし、井伊も松陰自身には悪意を持っていなかったと思います。松陰は自分の持っている才能や思考、思想などに自分自身が耐え切れなかったのではないでしょうか。すぐに死を給わるようなことをしてしまう。井伊はやむを得ず死の査定を出したのではないでしょうか。ただ幕末は行政を行う上では邪魔になる思想や急進的な考え方がいっぱい出てきますから、切っていかないといけなかった。その立場にいる人間としてはやらざるを得なかったんだと思います。

-伊勢谷友介さんはいかがですか。

 肖像画で見る松陰と感じがよく似ていませんか。期待できますね。彼は芝居も良いですから。

-主演の井上真央さんは?

 昨今の若い俳優の中で、すごく実力のある女優だと思います。

-台本を読んだ感想は?

 歴史はどうしても分かりにくいところがありますが、女性目線なので分かりやすいですね。若い女性が見ても面白いと思います。

-最後の桜田門外の変の演技をどう思い描いていますか。

  襲ってくる水戸藩の人たちも若いんです。彼らがどういう思いで来たのか。長州にも幕府を倒そうという同じようなエネルギーがあった。そういうものの一つだと思っています。襲撃は当然起こると考えていたはず。今日襲ってくるのか、明日かという気持ちだったと思います。井伊直弼という人物は、そういう動きを冷静に見詰めていたような気がします。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

安田顕「水上くんの目に“本物”を感じた」水上恒司「安田さんのお芝居に強い影響を受けた」 世界が注目するサスペンスで初共演&ダブル主演「連続ドラマW 怪物」【インタビュー】

ドラマ2025年7月5日

 韓国の百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した極上のサスペンス「怪物」。WOWOWが世界で初めてそのリメイクに挑んだ「連続ドラマW 怪物」(全10話)が、7月6日(日)午後10時から放送・配信スタート(第1話・第2話 … 続きを読む

TBS日曜劇場「19番目のカルテ」が7月13日スタート 新米医師・滝野みずき役の小芝風花が作品への思いを語った

ドラマ2025年7月5日

 7月13日(日)にスタートする、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS 毎週日曜夜9時~9時54分)。原作は富士屋カツヒト氏による連載漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」 (ゼノンコミックス/コアミックス)。脚本は、「コウノド … 続きを読む

南沙良「人間関係に悩む人たちに寄り添えたら」井樫彩監督「南さんは陽彩役にぴったり」期待の新鋭2人が挑んだ鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』【インタビュー】

映画2025年7月4日

 第42 回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の小説を原作にした鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』が、7月4日公開となる。浪費家の母(河井青葉)に代わってアルバイトで生活を支えながら、奨学金で大学に通う主人公・宮田陽彩が、過酷な境遇を受 … 続きを読む

紅ゆずる、歌舞伎町の女王役に意欲「女王としてのたたずまいや圧倒的な存在感を作っていけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月4日

 2019年に宝塚歌劇団を退団して以降、今も多方面で活躍を続ける紅ゆずる。7月13日から開幕する、ふぉ~ゆ~ meets 梅棒「Only 1,NOT No.1」では初めて全編ノン・バーバル(せりふなし)の作品に挑戦する。  物語の舞台は歌舞 … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

 グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸 … 続きを読む

Willfriends

page top