「一瞬の呼吸までも合わせようと努力した」 『ザ・テノール 真実の物語』で声を失った天才オペラ歌手を熱演したユ・ジテ

2014年10月3日 / 17:08

 感動の実話を基に、声を失った天才オペラ歌手と彼を支えた日本人プロデューサーとの絆を描いた奇跡の物語『ザ・テノール 真実の物語』が、10月11日から日本公開される。本作で過酷な現実に直面しながらもそれを乗り越えていく主人公チェチョルを演じたユ・ジテに、作品に込めた思いを聞いた。

 

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―天才オペラ歌手役を演じましたが、役作りで特に気を付けた点は?

  僕が演じたチェチョルは、韓国のオペラ歌手ベー・チェチョルさんがモデルで、彼は今も精力的に活動されています。なので、ご本人そのものに成り切るよりは、映画的なキャラクターを作り上げたいとまず考えました。僕は本物のオペラ歌手ではないので完璧に歌うことはできませんが、より魅力を感じられる人物にしようと心掛けました。劇中で僕がオペラを歌うシーンは、後でチェチョルさんの全盛期の声をかぶせているのですが、だからといって力を抜いて演じようとは全く思いませんでした。僕の歌声が映画に使われるわけではないけれど、チェチョルさんの声に自分の演技を百パーセントシンクロさせることで、より細かい部分まで全て生かしたいと思ったのです。そのためにはオペラというものを深く理解した上で、全ての曲を自分で歌えるようにならなければいけなかったので、一瞬の呼吸まで全て合わせられるように努力しました。

―演じていて最も大変だったシーンは?

 チェチョルが手術台の上で歌うシーンがありますが、顔に手術用の布をかぶせられていて、口元以外は見えないんです(苦笑)。口元しか見えないので、声でしか表現できないのに、その声も後でチェチョルさんの声をかぶせるので、一体どう表現すればいいのかすごく悩みました。結局、あまり感情を高ぶらせずに淡々と演じたのですが、監督のおかげでとても感動的なシーンに仕上がったと思います。

―本作で共演した伊勢谷友介さんとは同い年だそうですね。共演してみていかがでしたか。

 とても素晴らしいパートナーだと思います。彼の演技に対する情熱やステージに対する真心に感銘を受けました。彼だけではなく、全ての日本人俳優の方々が真剣な態度で撮影に臨んでいました。

―劇中、チェチョルは「歌は僕にとって宿命だ」と話します。ジテさんにとっての宿命は?

 僕の宿命は演技と映画です。これだけは断言できます。

―特に注目してほしいシーンはありますか。

 チェチョルが「女心の歌」を歌う姿がテレビ画面に流れるシーンです。短いシーンなんですが、そのシーンのために曲を丸ごと覚えて歌いました。監督が僕にどの部分を使うのか教えてくれなかったので(笑)。それは監督が僕の性格をよく理解していたからでもあります。僕には少々粘り強いところがあって、もし監督がどの部分を使うのか教えてくれたとしてもきっと全部覚えて歌ったと思います。でも監督は本当に教えてくれなかったので(笑)、最初から最後まで歌うしかありませんでした。

―以前、日本で語学研修していたと聞きました。

 はい。『春の日は過ぎゆく』(01年)を終えてから休みが欲しくて、1人で日本に来て4、5カ月ぐらい生活しました。

―日本語はどれくらい話せますか。

 ある程度はできますが、流ちょうにはしゃべれません。英語もそうですが、韓国語のように完璧にはできません。僕は韓国人ですから(笑)。

―本作は日韓合作映画ということで、日本人のスタッフも多かったと思います。コミュニケーションで苦労したところは?

 特になかったと思います。もちろんそれぞれの現場に特徴があるので、少し意見がずれたりはしますが、それは韓国人だけの現場でも常に起きることなんです。

―日本映画『人類資金』(13年)にも出演されていますが、ジテさんが思う韓国と日本の撮影現場の違いは?

 日本の方が韓国より規格化されているところがあると思います。リハーサルをたくさんやって、ベストだと思える状態で本番に入ります。あ、でもこれは阪本順治監督の性格かもしれませんね。最近の韓国映画界はデジタル撮影ばかりで、リハーサルをほとんどせずに本番に入るのです。『人類資金』もデジタル撮影だったのですが、まるでフィルムで撮影しているような現場でした。自分がデビューしたころに戻ったようで、ノスタルジーを感じました。

―普段から日本映画はよくご覧になりますか。

 はい、もちろん。僕は国に関係なく、本当にたくさんの映画を見ます。西川美和監督の『ゆれる』(06年)や、是枝裕和監督の『幻の光』(95年)は非常に印象的でした。また、うちの(笑)伊勢谷友介君が出演した三池崇史監督の『十三人の刺客』(10年)も素晴らしかったです。もちろん阪本監督の映画も好きです。『闇の子供たち』(08年)を通じて阪本監督とのつながりができて、『人類資金』に友情出演することになりました。

―これから『ザ・テノール』を見る日本の観客にメッセージを。

 この映画には平和や希望のメッセージが込められています。ですが、一つの映画作品としても非常に完成度の高い映画だと思います。ぜひ映画館に足を運んでいただいて、映画そのものを楽しんでください。より多くの方の心に響く作品になることを祈ります。

 

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●公開情報

『ザ・テノール 真実の物語』
10月11日(土)新宿ピカデリー、東劇ほか全国ロードショー
配給:『ザ・テノール 真実の物語』プロジェクト


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