女優の中谷美紀が平成26年NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」に、黒田官兵衛(岡田准一)の正室・光(てる)役で大河ドラマに初出演する。光は官兵衛の主君である小寺政職の縁戚・櫛橋家の次女。おてんばで率直な物言いをし、戦で城を空けがちな官兵衛に代わり、城を守る黒田家の“女主人”を演じる。第4回から登場。
物語は智力をもって戦い、生涯五十幾度の合戦で一度も負けなかった黒田官兵衛の生涯と乱世を描く。政職による政略結婚ながら夫婦の絆は強く、官兵衛は生涯、側室を持たなかったという。昨年8月27日にスタジオでクランクインし、その後の岩手県江刺ロケでは、光の初登場で官兵衛との出会いとなるシーンを撮影。大河初出演への意気込みや夫婦を演じる岡田の印象を聞いた。
--岡田准一さんとの共演はいかがですか?
官兵衛はとても冷静沈着で思慮深い方。(豊臣)秀吉が太陽であるならば月のような存在であったような人物で、岡田さんはまさにふさわしく、佇まいの中に威厳をたたえているとてもすてきな方です。官兵衛を演じるべくして生まれていらしたのではないかと思えるほどイメージ通りです。歴史もよくご存じですし、おそらく人知れず影でお勉強なさっているのではないでしょうか。
--演じる光と中谷さんご自身の共通点について感じる部分はありますか?
おてんばなところでしょうか。 官兵衛との最初の出会いのシーンが木登りをしているところ。木登りをして、官兵衛様にはしたないとたしなめられるのですが、それでも構わず木登りをするシーンがあって、そんな一面に共感を覚えます。
--大河ドラマ初出演で、これまで外から見ていた印象との違いはありますか?
これまで拝見していた大河ドラマはそうそうたる熟練した俳優さん達がたくさんご出演されていて、その中に若手の俳優が入っていくのは恐れ多い気持ちでした。実際に入ってみると皆さん本当に温かい方ばかり。役者の皆さんもそうですし、スタッフの方々も大変優秀で、今回の現場は本当に明るい方々が多いんです。みんなで同じ志の下で気持ちよく作らせていただいております。
--光の女性としての魅力で何か感じていることはありますか?
官兵衛が月のような存在なので、それに対して光は名前も光と書いて“てる”と読むぐらいですから、まるで太陽の光のように官兵衛さんを照らす、明るくて朗らかなところが魅力でしょうか。そんな存在であれたらいいなと思っています。時には幽閉されたり、あるいは息子を失うような悲しみに打ちひしがれることもあると思いますが、そのようなときに常に明るく夫を支えられる、ある意味現代においても理想の女性といえるのではないでしょうか。
--戦国時代がお好きとのことですが、これまで演じてこられた戦国の女性たちと光との違いはありますか?
やはり特筆すべきは、官兵衛さんが側室をとらなかったからこそ、火花を散らすような場面もなく、本当に愛されておおらかに朗らかにいられたのではないかと思います。一方で、光の意志の強さや勝気な面を、官兵衛さんが本当に許してくださっているんです。それはこの時代においてとても珍しいことなのではないかと思います。
--この時代の女性の生き方について、どう感じますか?
明日命があるかどうかも分からない時代に、生きることの尊さを教えられる素晴らしい時代だと思います。それを支えた女性たちはどれだけの思いだったのだろうと今も思います。私が演じる光もやはり自分の長男を(織田)信長の元に人質として差し出すシーンがあり、台本を読んでいて本当に涙が出てしまいました。本当に悲しかったしつらかった、それでも送り出さなくてはならない女性たちの思いを現代にきちんと表現したいと思っています。
--官兵衛との夫婦像についてどのような印象がありますか?
松寿丸という長男が産まれた後は子宝に恵まれず、武家の嫁としての務めを果たせていないのではないかと光はしばらく悩みます。そのときにも官兵衛さんは、「子は授かりものだから」「そんなに気に病むことはなく」と温かい心遣いをしてくれて、さらには同じ領内で親を失った子供をもらい受けて、その子供を自らの長男と同様に家族のように育て上げるという懐の深い人。そういう男性に愛された光は本当に幸せだと思いますし、またそのむつまじい姿もすてきだなと思っています。
--女性の記録が残っていない時代、資料が少ない面で難しさはありますか?
難しさの裏で、資料がない分、何でもできるという自由度もありますので、そこは時代劇の魅力であり特権であると思っています。ご存命の方であったら、やはりそのご家族であったりご親戚であったりさまざまに配慮しなければならない方がいらっしゃいますが、誰も知らないからこそ、いかようにも描けますので、今からワクワクしています。
--岡田さん演じる黒田官兵衛の、最大の魅力を教えてください。
まずかっこいい! 容姿端麗でかつ冷静沈着な姿は本当にりりしくて。出会いのシーンが、木に登って下りられなくなった子どもを助けようとして、私が木に登ろうとするのですが、その後に官兵衛さんが自ら木に登ってヤマモモの実を採ってきてくれるんです。子どものために採ってきたんですけど、その一方で子どもが走り去った後に光にもそのヤマモモの実を差し出してくださる。そこでまず光はときめくんです。さらにその後、何事もなかったかのように馬で疾走して帰って行く後ろ姿が本当にかっこよかったです。
--本で読まれた官兵衛の印象と岡田さんの印象で、何か違う、新しく感じられたことはありますか?
官兵衛さんにはどうしてもずる賢いというイメージがあるようですが、ただずる賢いのではなく、あるいはただけちなのではなく、世の中の先の先まで見通している、とても冷静で頼りがいのある方だと思います。実際に岡田さんも大変冷静でかつ自分より若い方にちゃんと目をかけてとてもかわいがっていらして、現場でもこちらがクスッと笑ってしまうような仲の良さで。私たちの子どもたちにも優しく接してくださって、あぁ、この人はリーダーになる人なんだな、大きな器の方だな、と思います。
--中谷さんの中で理想の妻像があればお聞かせください。
どちらのご家庭においてもおそらく、奥さまというのはやはり一番強いものだと思いますので、だからといって自分が強いんだと威張るのではなくて、旦那さまを上手に立てつつ上手にのせつつ、疲れた夫をいたわり、日々の糧を与えてくださることに感謝しつつ、でもうまくリードできる賢い妻というのに憧れます。
--ドラマへの意気込みをお願いします。
これだけ長い時間を費やして一つの作品を作るのは私にとっては初めての経験ですので、まだこれからどうなっていくんだろうという思いです。だからこそ、この1年間を本当に大切に、この作品を育んでいきたいと思いますし、黒田家という家も守り、夫を支え、また子どもたちを育んでいきたいと思っています。