エンターテインメント・ウェブマガジン
自分が桐島を演じる上で一番重要だと思ったのは、(偽名の)「ウチダヒロシ」として、1人の部屋で朝を迎えて、窓を開けてコーヒーを飲んでというシーンでした。せりふがないので、演じる側としては、目覚めた時にこの日の彼はどういう心境なのかということを考えました。最初の方は「見つからないかな」という不安の朝、「大丈夫だ」という安心の朝もあれば、後半は「もうここらで終わせたいな」とか、いろんな感情があります。同じことの繰り返しの中でも変化があるようにしたいと思ったので、そこに一番気を使いました。
僕は今38歳ですが、自分以外のことのために戦ったり、行動を起こしたことがあるかと言われるとそんなにないなって。そういう意味では共感はできていないかもしれません。ただ自分たちが年を取った時に、日本はどんな国になっているべきなんだろうと考えると、結局自分が持てる武器は作品だなと。彼は恐らくそのすべがなくて、爆弾だったのかもしれないと思いました。
脚本には曲名は書いてありませんでした。どの曲を歌うのかはいろいろと吟味してあの曲になりました。実際に桐島が暮らしていた部屋にはギターがあったり、音楽が好きだったという事実はあるので、歌を歌うシーンは僕にとっては大きなヒントになりました。どちらかというと彼が好んで聴いていたといわれるものは僕も好きなので。映画もそうですけど、その人がどういうものを好きだったのかを知るのは大きいですし、歌や踊りはせりふ以上の何かを持っている気がします。人格や性格を表すときにそういうものがヒントになります。演じる自分にとってもそうですし、多分この映画を見る人にとってもヒントになるんじゃないかと思います。
『夜明けまでバス停で』(22)もそうでしたが、ドライに淡々と進んでいって、そのどこかにロマンが見え隠れするというのが、高橋監督の映画で僕がすごく好きなポイントで、この映画にも同じような感覚がありました。最後はちょっととがった終わり方だという気はしますけど。
観客の層としては、恐らくこの時代を知ってる方が一番多いと思いますが、できるなら、桐島聡が2、30代だった頃と同じ年頃の今の若い人たちに想像をめぐらせながら見てほしいと思います。全く知らない時代の話だけど、この人は何に怒っているんだって想像することによって分かってくることがあったりもします。なるべく無知な状態で見てもらうのもいいんじゃないかなと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)

(C)北の丸プロダクション
映画2026年10月1日
-実在の人物を演じる難しさは感じましたか。 川口 彼女が残した日記や言葉、映像も少なからずありましたが、自分なりの解釈はせず、監督を信じて飛び込んでみるという感じでした。本当に一つずつ模索しながら作っていったという感覚でした。 高杉 こうい … 続きを読む
映画2026年10月1日
-今回は広瀬アリスさんとの共演でしたが、『ゆきてかへらぬ』では、妹のすずさんとも共演しましたね。 シンプルに、男と女として対峙(たいじ)する役ができたことはすごくうれしかったですし、すずちゃんもアリスさんも、自分の実年齢とは関係なく、僕が … 続きを読む
舞台・ミュージカル2026年9月30日
-そうした難しい役どころゆえ、共感はなかなか難しいのでは? それはあまり心配していないです。先日、トム・ストッパードの「ハード・プロブレム」という作品を観劇したんですよ。その作品も、日本人とは違う感情の変化が描かれた作品でした。楽しく会話 … 続きを読む
映画2026年9月30日
10月2日から全国公開となる『時給三〇〇円の死神』は、累計発行部数36万部を突破した藤まるの同名小説を原作にしたファンタジーだ。生きる希望を失った大学生・佐倉真司(西畑大吾)が、謎めいた同級生・花森雪希(福本莉子)に誘われ、この世に未練を … 続きを読む
2026年9月29日
K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む