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実際の官位は田沼の方が上なのですが、道廣としては田沼を見下すくらいの尊大な気持ちで接しなければいけません。ただ、大先輩の渡辺謙さんと本気で向き合うと、どうしても気後れしがちなので、そこをぐっとこらえて、ニコニコしながら演じるのには苦労しました。
とても勉強になりました。渡辺謙さんも生田斗真さんも、空気感を作る上でそれぞれのアプローチの仕方があり、その中でふっと緊張感のある瞬間が訪れるんです。さらに、「良い映像を撮るぞ」という真剣勝負のような空気も現場に生まれ、スタッフの皆さんのお力によって世界観に没入することができ、大げさでなく本当に江戸時代にいるような気持ちになりました。そういう空気に包まれたおかげで、自分の中でも渡辺謙さん、生田斗真さんというお名前が消え、役になりきれた気がして。それは、今思い出しても幸せな瞬間で、自分の役者人生の宝物になりました。
最初の収録の時、そんなふうにお褒めの言葉をいただき、すごくうれしかったです。しかも、それから1カ月くらい経った頃、くりぃむしちゅーの上田(晋也)さんから、「(三浦庄司役の原田)泰造が、謙さんから『えなりの殿様怖いぞ』と言われたらしいよ」と伺ったんです。周囲の方にそういうお話をされていたことを知り、あの言葉は決してお世辞ではなかったんだなと、さらにうれしく、ありがたい気持ちになりました。
大文字屋に「琥珀(こはく)で大儲けせぬか」と抜荷を持ちかけるシーンは、演じていて楽しかったです。道廣としては、田沼に尻尾をつかまれそうになりながらも、政治家らしく巧みにそれをかわそうとするわけです。僕は、時代劇も政治的な謀略ものも好きなので、そんな駆け引きができたことがうれしくて。しかも、伊藤敦史さんとお芝居したのも、子役時代以来、33年ぶりでしたから。
お互い、これまでどんな人生を送ってきたのか語り合い、連絡先も交換しました。おかげでその後、趣味のゴルフも初めてご一緒させていただくことができました。そんな再会の喜びもあり、本当にありがたかったです。
こんなに素晴らしいセットや照明の中でお芝居できるのは大河ドラマならではだと、幸せな気持ちになりました。でも同時に、好きなようにお芝居してくださいと、セットに問いかけられているような、気圧される感じもあって。実は撮影初日、そういう圧に負け、本当にせりふを忘れそうになったんです(笑)。初めての経験で、「こんなことがあるんだ!?」と、自分でも驚きました。
監督とのコミュニケーションも非常に密ですし、渡辺謙さんがお芝居のアイデアを出される一幕もあるなど、皆さんが一丸となって作り込んでいく様子を目の前で見ることができ、貴重な経験をさせていただきました。僕の中の「プロジェクトX」として、きちんとファイリングしたいと思います(笑)。
道廣が初登場したときの皆さまのお声を聞いていると、自分の芝居に確信が持てないときに評価をいただけたりする反面、意気込んで芝居をしたときになんの反応もなかったりすることもあり、お芝居の面白さや難しさを実感しています。まだまだ道廣は活躍しますので、これからも応援よろしくお願いします。
(取材・文/井上健一)
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