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あのシーンでは、照明のセッティングなどいろんな準備をする間、僕がセットの中で座って待っていたら、謙さんが「ピンと張っていたら、本番で切れるときがあるから、うまく調整しようよ」とさりげなくアドバイスしてくださったんです。そんなふうに、謙さんは相手がどんなポジションで今、お芝居をしているのか、ちゃんと見ているんです。僕も、そんな気遣いができるようになりたいと思いますが、簡単なことではありません。でも、それができるのが、渡辺謙さんなんですよね。本当にすてきな方でした。
僕も横浜さんも格闘技好きなので、空き時間にはボクシングの話などをしながらコミュニケーションをとっていました。横浜さんは、そんなふうにさりげなく、共演者に合わせて空気感を作ってくださるんです。おかげで、一緒にいる時間が楽しかったです。
第11回で、エレキテルの実験をする源内さんが「この野郎、何で(火が)出ねえんだよ」と文句を言いながら、蔦重の頭をパチパチたたく場面がありました。実は、台本には1回しか書かれていなかったのですが、なぜかそのとき僕は、子どもの頃に見たドリフのコントを思い出し、つい4回もたたいてしまって(笑)。横浜さんも「全然大丈夫です」と楽しんで演じてくれて、ありがたかったです。まっすぐで真面目な上に、そんなやんちゃな面もあり、「漢」と書いて「おとこ」と呼びたくなるすてきな方でした。
やっぱり、第5回で源内さんが仕官のかなわない身の上を蔦重に明かした上で、「わが心のままに生きる。わがままに生きることを、自由に生きるっつうのよ。わがままを通してんだから、きついのは仕方ねえや」と「自由」について語った場面です。
あの時代に「自由」という言葉があったのか、気になって調べてみたら、源内さんは似たような言葉を書き残しているんです。それをヒントに、森下(佳子/脚本家)さんはあのせりふを書かれたわけです。誰もが共感できるすごい言葉ですし、それを書かれた森下さんも本当にすごい方だなと。
クランクアップは、源内さんと田沼様の出会いのシーン(第15回)だったのですが、撮影後、渡辺謙さんが握手をしながら「これで終わらせないぞ。森下さんに言って、もう1回出してもらうようにするから。やろうな」と言ってくれたんです。渡辺謙さんからそんな言葉をかけていただき、感無量でした。今回、まるでバディのように謙さんとお芝居させていただけたことは、この上ない幸せです。もちろん、スタッフの皆さんも笑顔で迎えてくれましたし、数多くの大河ドラマや朝ドラを経験しているメイクの方が「いろんな方が源内さんをやっていますが、安田さんの源内さんは、とっても人間くさかったです」と言ってくださったのも、うれしかったです。
実は今回、最初に打ち合わせをしたとき、「源内さんは、はたから見ると癖があり、ちょっと奇天烈な人だから、それを象徴するような癖をつけられませんか?」とご相談したことがあったんです。その後、届いた台本の決定稿を見たら「源内、舌を上唇に押し当てて」と書かれていて。おかげで、それを源内さんの癖として特徴づけることができました。先ほどお話しした最期のシーンのメイクの方や床山の方のことも含め、スタッフの皆さんと一緒に作っていることを実感しながら、「べらぼう」という作品に携わることができたのは、とても幸せな経験でした。
(取材・文/井上健一)
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