「冷たいそばと温かいそばが同時に食べられるような映画です」『破墓/パミョ』チャン・ジェヒョン監督【インタビュー】

2024年10月23日 / 16:00

 2人の巫堂(ムーダン=朝鮮半島のシャーマン=キム・ゴウン、イ・ドヒョン)と風水師(チェ・ミンシク)、葬儀師(ユ・ヘジン)が掘り返した墓に隠された恐ろしい秘密を描き、韓国で観客動員約1200万人の大ヒットを記録したサスペンス・スリラー『破墓/パミョ』が、10月18日から全国公開された。来日したチャン・ジェヒョン監督に話を聞いた。

チャン・ジェヒョン監督 (C)エンタメOVO

-この不思議なストーリーのアイデアはどこから得たのでしょうか。

 9歳の時に、町の近くに高速道路を作るため、100年前の墓があった山をなくすことになりました。その時、改葬を目撃してとても複雑で妙な感覚に襲われました。実際に墓を掘り、土を掘ってみると、100年前の人々が使っていた水筒や手袋のようなものが出てきて、まるでタイムマシンに乗って過去にタイムスリップをしたような気持ちになりました。その時の感覚を生かしてこの映画を製作しました。

-この映画に見られるような墓や先祖へのこだわりの強さは、儒教の影響があるのでしょうか。

 もちろん儒教の影響もあると思いますが、お墓やご先祖さまへのこだわりというのは、もちろん方式は国によって違うかもしれませんが、どこの国にもあるのではないでしょうか。

-韓国で若者を中心にヒットした理由はどこにあると思いますか。

 コロナ禍で映画館が深刻な状況に追い込まれました。その時、「映画館って何だろう」「なぜ映画館で映画を見るのだろう」「映画館がつぶれてしまったらどうなるのだろう」というようなことを考えるようになりました。それで、純粋に映画館で楽しめる映画、面白くて見たらうれしくなるような直感的で体験的な映画、映画館にぴったりな映画を作りたいという気持ちが湧き上がってきました。この映画は、そんな思いを生かした映画です。ヒットした要因の一つは、やはり役者です。彼らが素晴らしい演技をしてくれたので、たくさんの観客から支持を得たのだと思います。そもそも監督は、映画を作る際に、最初からヒット作を作ろうと考えたり、興行成績を意識して映画を作ることはありません。なので、ここまでヒットをするとは思いませんでした。

-主要キャストの4人については、どう感じましたか。

 僕が重点を置いたのは、若い世代と古い世代との新旧の融合みたいなことでした。それぞれについて言えば、チェ・ミンシクさんは従来のイメージを大きく変えたかった。恋愛ものが多かったキム・ゴウンさんは新しい姿を見せたかった。イ・ドヒョンさんはキャスティングをした時は新人だったのに、撮影をしているうちにスターになってしまった。それからユ・ヘジンさんは4人の主人公の一種の潤滑油のような役割を果たしてくれました。

-撮影のロケは1カ所ではないのですよね。

 まず、お墓自体は韓国のほぼ最南端である釜山で撮影をしました。韓国の11月は秋の雰囲気が濃くなって、物寂しい秋の色に染まるんですけど、そうした雰囲気を盛り込みたかったのです。また、12月に入ると雪が降るため、その前に撮影を進めたかったので、北の方から順番に、1カ所で2カットずつ撮りながら南下していく感じでした。

-この映画をホラー映画と呼ぶのは少し違うような気もしますが。

 僕は、前作も今回もホラー映画としてのアプローチはしていないつもりです。もしこの映画をホラー映画として仕上げるのであれば、アメリカ在住の依頼人を主人公にするべきです。なぜかというと、ホラー映画というのは基本的にその95パーセントが、被害者中心の物語であり、そうであってこそ恐怖感が増します。ですので、僕の映画はほとんどの場合、主人公が専門家のような人になっていて、逆の立場からすれば加害者になります。例えば、バンパイアならヴァン・ヘルシング、キョンシーなら道士といった具合に。日本のホラー映画は怖過ぎてあまり見ていませんが、『陰陽師』(01)が大好きです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

二宮和也「子どもたちの映画館デビューに持ってこいの作品です」『シナぷしゅ THE MOVIE ぷしゅほっぺダンシングPARTY』【インタビュー】

映画2025年5月17日

 テレ東系で毎週月~金、朝7時30分から放送中の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」の映画化第2弾。番組のメインキャラクター「ぷしゅぷしゅ」と相棒「にゅう」が、バカンスで訪れた「どんぐりアイランド」を舞台に繰り広げる冒険をオリジナルストーリーで描き … 続きを読む

【週末映画コラム】異色ホラーを2本 デミ・ムーアがそこまでやるか…『サブスタンス』/現代性を持った古典の映画化『ノスフェラトゥ』

映画2025年5月16日

『サブスタンス』(5月16日公開)  50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)は、容姿の衰えによってレギュラー番組を降ろされたことから、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、禁断の再生医療「サブスタンス= … 続きを読む

新原泰佑、世界初ミュージカル化「梨泰院クラス」に挑む「これは1つの総合芸術」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年5月16日

 世界中で大ヒットを記録した「梨泰院クラス」が、初めてミュージカル化される。主人公のパク・セロイを演じるのは小瀧望。日本・韓国・アメリカのクリエーターが集結し、さまざまな人種が混じり合う自由な街・梨泰院で権力格差や理不尽な出来事に立ち向かう … 続きを読む

グレッグ・ターザン・デイビス「とにかく、ただ純粋に面白い映画を撮ることだけが、自分たちに与えられたミッションでした」『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』【インタビュー】

映画2025年5月15日

 トム・クルーズ主演の大ヒットスパイアクション「ミッション:インポッシブル」シリーズの第8作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が、5月23日の公開に先駆けて17日から先行上映される。前作『ミッション:インポッシブル/デッ … 続きを読む

研ナオコ、認知症のおばあちゃん役で9年ぶりの映画主演「主演女優賞を狙ってます(笑)」岡﨑育之介監督「研さんの人生の奥行きがにじみ出た」『うぉっしゅ』【インタビュー】

映画2025年5月12日

 人生に迷いながらソープ嬢として働く若い女性・加那と、彼女に介護されることになった認知症の祖母・紀江の交流を明るくポップなタッチで描いたユニークな映画『うぉっしゅ』が絶賛公開中だ。  本作で、加那を演じる若手注目株の中尾有伽と共に、紀江役で … 続きを読む

Willfriends

page top