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本当は福本さんに殺陣師の役で出てもらいたかったんですけど…。今回は衣装部の人が「福本さんが着ていた衣装です」と言って用意してくれたり、馬木也さんも全力で福本さんふうのエビ反りをしてくれたりしました。福本さんが亡くなった時に、奥さまが「死んでしまうシーンばっかりだから」と福本さんの作品を全然ご覧になれなかったそうです。それで優しい農家のおじいちゃんを演じてくださった前作『ごはん』のDVDを福本さんの担当の方に託しました、すると奥さまからすぐ「これが本当の福本です」というメールを頂きました。「侍タイムスリッパー」も見てくださって、奥さまが目を潤ませて僕の手を握り締めてくださいました。福本さんへの思いがたくさん詰まっているので分かっていただけたのかなと、とてもうれしかったです。
そうです。照明もやったし、衣装とか、あとはグラフィックデザイン、タイトルデザインとかも。これはコストダウンのためです。意外と大事なのが、自分でお金を出して人を雇うということ。それはリスクを背負ってやるということなんです。例えばインディーズ映画だと、インディーズだからギャラは出ませんということもあるけれど、それをやるとリスクを背負っていないから自分の好きなものだけを撮ってしまうところがあります。
僕は、結婚式のビデオ屋もやったことがありますが、その時師匠から「おまえが撮る映像は、おまえの才能を見せつけるために撮るんじゃなくて、お客さんが喜ぶものを撮るのがプロの仕事だ」ということを教えられて、それが今も続いている感じです。よく応援してくれる人が「安田監督はいわゆる天才型ではありません。ただ、本当に諦めない人だから、何だかんだと言いながら最後までやり遂げるので、できたものの感動がガツンと重い」と評してくれました。
僕としては、タイムスリップ時代劇というジャンルの中では、かなり面白くできているような気がします。あとは、本当の侍を目撃してほしいということです。僕は馬木也さんと一緒に映画を撮りながら、ずっとそういう錯覚をし続けているような感じでした。多分、年配の人たちは「剣客商売」で藤田まことさんの息子役をやっていた人だと思うでしょうけど、若い人にとっては、馬木也さんは舞台を中心に活躍されているから、あまり知られていないので、「本当の侍じゃないの」という錯覚を起こすかもしれないと。でもそれは、映画にとってはいいことなんです。
例えば、有名過ぎる俳優さんとかだったら、どうしても本人に見えてしまうけど、それがこの作品にはないので、本当に江戸時代の人が現代に来ていろいろとやっているドキュメンタリーみたいな感じに見える時があるんです。冨家ノリマサさんをはじめ、俳優さんたちが生き生きと演じている姿も見どころです。僕は有名になりたいとかは全くないので、もう製作費が回収できればそれでいいので、できれば助けると思って劇場に見に来てください。そうすれば米作りもゆっくりちゃんとできるので(笑)。
(取材・文・写真/田中雄二)

(C)2024未来映画社
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