「この役を通して、言葉をどう伝えるのか、表現するのかということを探っていたような気がします」『劇場版 アナウンサーたちの戦争』森田剛【インタビュー】

2024年8月15日 / 08:00

 戦時下における放送と戦争の知られざる関わりを題材に、プロパガンダの先頭に立ったアナウンサーたちの葛藤や苦悩を実話を基に描いた『劇場版 アナウンサーたちの戦争』が8月16日から全国公開される。本作で、開戦ニュースと玉音放送の両方に関わった伝説のアナウンサー・和田信賢を演じた森田剛に話を聞いた。

森田剛(ヘアメーク:TAKAI/スタイリスト:松川総)(C)エンタメOVO

-脚本や資料を読んで、和田信賢という人物をどのように捉えましたか。

 「虫眼鏡で調べて望遠鏡でしゃべる」というせりふがありますが、本当にそういう人なんです。徹底的に調べて、実際に人と会って、その人の言葉を聞いて、自分の中でかみ砕いて、自分の言葉でしゃべるという人だったので、そういう人のうそのない言葉というのは、演じる上でも興味がありました。そういう人だからこそ、誰よりも傷つき、悩み、葛藤するという姿を、今の自分なら表現できるんじゃないか、チャレンジしてみたいと思いました。

-今の自分なら表現できると思った理由は?

 自分でもなぜかは分からないです。でも、やっぱりいろいろと経験してきて、痛みを知って、それを強さに変えるということができるような気がしたんです。和田信賢さんってぐちゃぐちゃな人なんです。中身がボロボロなんですよ。それでも自分が信じたこと、信じた言葉を伝えようとする姿勢に心を打たれたし、今の自分だから表現できることがあるんじゃないかと思ったんです。

-クライマックスの学徒出陣のシーンはどんなことを考えながら撮影したのでしょうか。

 あのシーンは撮影の最終日でした。それまでにいろいろとあって、学生とのシーンを踏まえてのシーンだったので、自然と気持ちが入りましたし、あのシーンの思い出はたくさんあります。僕はもっと距離的に遠いことを想像していたのですが、実際はすごく近い所で撮影したんです。だからこそ、この距離なら大きな声を出せば届くのに、絶対に届かないという現実があるのはすごく切ないと思ったし、あそこで「国民の皆さま」と語る和田信賢さん…。このドラマを受けた時に、このシーンはぜひやりたいと思ったし、ここを成立させたいと思いました。あそこで全てをぶつけるつもりでやっていました。

-伝説のアナウンサーといわれる和田信賢さんを演じ終えて感じたことは。

 言葉の難しさもそうだし、言葉の脅威ですね。今はそんなに感じない時代かもしれませんが、当時の言葉の力というのはすごく感じました。その言葉を聞いた人が影響されてしまうこともそうですし、言葉の怖さというものを撮影中はずっと考えていました。アナウンスをするシーンも、実際はマイクに向ってしゃべっているんですけど、和田さんはそれを聞いているマイクの向こう側の人をすごく意識してしゃべっていた人だから、余計にそういうことは思っていたかもしれないですね。

 こうやって人と対峙(たいじ)している時も、和田さんは結構人の話を聞いていないんです。信念が強過ぎて、これはこういうものだというのがあるから。だから、誰かとやり合っていても、自分の思いが強いから相手の話を聞いていない、響いていないことが多いです。でも、その裏でめちゃくちゃ悩んでいる。忙しい人ですね。だから毎日くたくたでした。でも、そういう経験ができたことは、役者としての瞬発力や忍耐力が鍛えられた気もするし、すごく楽しいことでもありました。

-アナウンサーが国策に利用されて、戦場の最前線にまで連れて行かれるということについてはどう思いましたか。

 そのことについては僕も知りませんでしたが、僕の周りでも結構知らない人が多いんです。だからそれだけでもやってよかったなと思います。ここに出てくるアナウンサーの方は、自分の中に信念があって、誰も間違ってはいないんです。和田さんは、自分の言葉で人々を楽しませたいという純粋な気持ちだったし、ほかのアナウンサーの方もそうだったと思います。それが、戦争のせいで取り返しのつかないことになってしまって…。だから撮影中も、皆が信念を持ってぶつかり合ったり、熱い思いを持っているのに、何で皆が戦争に傾いていってしまったのかと思いました。そうしたどうにもならないことがあることを、今の若い人たちに感じてもらえたらいいなと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

大西礼芳「どうやって死ぬかということは、どうやって生きるかということとつながりますよね」『安楽死特区』【インタビュー】

映画2026年1月21日

 「安楽死法案」が可決された近未来の日本。国家戦略特区として、安楽死を希望する者が入居しケアを受けられる施設「ヒトリシズカ」が開設された。難病を患い余命半年を宣告されたラッパーの酒匂章太郎(毎熊克哉)は安楽死法に反対しており、パートナーでジ … 続きを読む

M!LK・吉田仁人、「怒涛の1年」を振り返り“チームM!LK”に感謝 シリーズ第2弾「FFBE幻影戦争 THE STAGE II」では「第1弾を超えられるような作品に」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年1月21日

 「イイじゃん」が大ヒットを記録し、第67回日本レコード大賞優秀作品賞を受賞、第76回NHK紅白歌合戦にも出場するなど、旋風を巻き起こしたM!LK。グループのリーダーも務める吉田仁人は、息つく間もなく1月30日から上演される「FINAL F … 続きを読む

志田未来「子どもが泣いていると、うるっとしてしまうのは新しい感情」 火曜ドラマ「未来のムスコ」で母親役【インタビュー】

ドラマ2026年1月20日

 志田未来が主演する火曜ドラマ「未来のムスコ」(TBS系)が、1月13日から放送中だ。本作は、阿相クミコ氏・黒麦はぢめ氏の人気漫画をドラマ化。“定職なし、貯金なし、彼氏なし”の崖っぷちアラサー女子・汐川未来(志田)が、ある日突然5歳児・汐川 … 続きを読む

竹内涼真、5年ぶりの舞台に「リニューアルした自分で臨む」 ミュージカル「奇跡を呼ぶ男」でゴスペルにも挑戦【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年1月17日

 主演作品のドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(TBS系)が話題を呼び、Netflix映画『10DANCE』では美しく激しいラテンダンスで視聴者を魅了する竹内涼真。2026年1月から放送のドラマ「再会~Silent Truth~」(テレ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(10)石浦神社で語る「八田與一と嘉義農林学校」

舞台・ミュージカル2026年1月16日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。  語りは、土地と人を結び直します。 … 続きを読む

Willfriends

page top