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細川 ドラマ版の磯兵衛は、原作よりも刀の扱い方を雑にしています。刀を杖にして立ち上がったり、引きずったり、振り回したり…。「立派な武士になる」と言いながら、刀を大事にしない方が、磯兵衛らしくて面白いだろうと思って。それを杉野くんに伝えたら、紐を持ってくるくるっと回しながら歩いてくれて(笑)。
杉野 あれも、どうすればいいか悩んだ末に、たまたま思いついただけなんです。個人的には、間を埋めただけのようで恥ずかしいんですけど。
細川 でも、それを思いつくところが磯兵衛をつかんでいる証拠だよ。実は最初の頃、磯兵衛が街を歩くシーンで、杉野くんに漫画のまねをしてもらったら、やや硬かったんだよね。でも、スケジュールの後半でもう一度同じシーンをやってもらったら、だらしなく歩く姿が、漫画とは違うポーズなんだけど、完全に磯兵衛そのもので。きちんと磯兵衛をつかんでいることがわかって、感動した。走り方やジャンプの格好悪さも素晴らしかったし。
杉野 ありがとうございます。コメディーに妥協のない監督の姿勢も、とても勉強になりました。本当に面白いものを作ろうとするなら、こうあるべきなんだろうなと。面白いときはきちんと笑ってくださいましたし。
杉野 最初はやや心配でした。こんなバカバカしい作品を撮るなんて、と怒られるんじゃないかと思って。
細川 僕も最初は緊張したな。スタッフは僕以外全員、京都撮影所の方だったから。でも、最初にスタッフ全員で打ち合わせをした後、撮影所を歩いていたら、小道具の方が自転車で走ってきて、「監督、このカエルどうですか?」と“干したカエル”の小道具を見せてくれて。そこで、こんなバカバカしいことにもきちんと付き合ってくれる人たちなんだとわかって、安心した。
杉野 自分より大人の先輩方が「ああでもない、こうでもない」と、現場でわいわい楽しそうにやっている様子がうらやましくて、僕も加わりたくなりました。
細川 磯兵衛の刀で中島(襄・磯兵衛の親友/鈴木福)くんの服が真っ二つになるシーンも、デジタルではなく、アナログな仕掛けでやりたいと言ったら、いろいろと試行錯誤してくれて。
杉野 助監督さんが何度も裸になっていましたよね(笑)。京都ならではの伝統的な時代劇の仕掛けも、この作品の世界観にうまくはまっていた気がします。
細川 皆さんとても柔軟で、いろいろなアイデアも出してくれたし、京都でなければ撮れない作品だったと思う。
杉野 思い切りふざけているんですけど、実はものすごく難しいことをやっているんですよね。シュールな感じと同時に、芸術的なところもあって。“間”一つとっても、コメディーの難しさを実感しましたし…。そういう意味では挑戦でしたが、僕の好きな世界観でした。こだわろうと思えば、いくらでもこだわって精度を上げられるのかもしれませんが、今回は今持てる力を100%出し切ることができたと思っています。
細川 杉野くんの素のかわいらしさや面白さが一番出ている作品になったんじゃないかな。
杉野 自分でも、「格好いい役より、こういう役の方が向いているかも」と思いました。
細川 でも、こういう作品ばかり来たら困るよね。
杉野 それならそれでもいいかな(笑)。
細川 そんなことを言っていると、本当にオファーくるよ? 磯兵衛だって、まだまだ原作のエピソードがたくさんあるんだから(笑)。
細川 原作を読んだことのある方もそうでない方も、原作と見比べながらご覧いただけると、杉野くんの見事な磯兵衛ぶりも含め、さらに楽しめると思います。ぜひ原作と併せて楽しんでください。
杉野 中島役の鈴木福くんや磯兵衛の母上役の檀れいさんなど、共演者のみなさんも魅力的ですし、細川監督の天才ぶりが存分に発揮された作品になったと思います。ぜひ多くの方にご覧いただけたらうれしいです。
(取材・文・写真/井上健一)
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