杉野遥亮「100%の力を出し切ることができた」細川徹監督「杉野くんのかわいらしさや面白さが出ている」前代未聞の時代劇コメディーに挑戦「磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~」【インタビュー】

2024年7月11日 / 08:00

(C)エンタメOVO

-杉野さんが大河ドラマと同時期に撮影していたことも驚きですが、原作を読んでみたら、あまりに見事な実写化でさらに驚きました。静止画で表現される漫画を実写化する上で工夫した点を教えてください。

細川 ドラマ版の磯兵衛は、原作よりも刀の扱い方を雑にしています。刀を杖にして立ち上がったり、引きずったり、振り回したり…。「立派な武士になる」と言いながら、刀を大事にしない方が、磯兵衛らしくて面白いだろうと思って。それを杉野くんに伝えたら、紐を持ってくるくるっと回しながら歩いてくれて(笑)。

杉野 あれも、どうすればいいか悩んだ末に、たまたま思いついただけなんです。個人的には、間を埋めただけのようで恥ずかしいんですけど。

細川 でも、それを思いつくところが磯兵衛をつかんでいる証拠だよ。実は最初の頃、磯兵衛が街を歩くシーンで、杉野くんに漫画のまねをしてもらったら、やや硬かったんだよね。でも、スケジュールの後半でもう一度同じシーンをやってもらったら、だらしなく歩く姿が、漫画とは違うポーズなんだけど、完全に磯兵衛そのもので。きちんと磯兵衛をつかんでいることがわかって、感動した。走り方やジャンプの格好悪さも素晴らしかったし。

杉野 ありがとうございます。コメディーに妥協のない監督の姿勢も、とても勉強になりました。本当に面白いものを作ろうとするなら、こうあるべきなんだろうなと。面白いときはきちんと笑ってくださいましたし。

-本作を撮影した東映京都撮影所は時代劇の本場で、職人気質の方が多い印象がありますが、現場はいかがでしたか。

杉野 最初はやや心配でした。こんなバカバカしい作品を撮るなんて、と怒られるんじゃないかと思って。

細川 僕も最初は緊張したな。スタッフは僕以外全員、京都撮影所の方だったから。でも、最初にスタッフ全員で打ち合わせをした後、撮影所を歩いていたら、小道具の方が自転車で走ってきて、「監督、このカエルどうですか?」と“干したカエル”の小道具を見せてくれて。そこで、こんなバカバカしいことにもきちんと付き合ってくれる人たちなんだとわかって、安心した。

杉野 自分より大人の先輩方が「ああでもない、こうでもない」と、現場でわいわい楽しそうにやっている様子がうらやましくて、僕も加わりたくなりました。

細川 磯兵衛の刀で中島(襄・磯兵衛の親友/鈴木福)くんの服が真っ二つになるシーンも、デジタルではなく、アナログな仕掛けでやりたいと言ったら、いろいろと試行錯誤してくれて。

杉野 助監督さんが何度も裸になっていましたよね(笑)。京都ならではの伝統的な時代劇の仕掛けも、この作品の世界観にうまくはまっていた気がします。

細川 皆さんとても柔軟で、いろいろなアイデアも出してくれたし、京都でなければ撮れない作品だったと思う。

-杉野さんが本作を経験した感想は?

杉野 思い切りふざけているんですけど、実はものすごく難しいことをやっているんですよね。シュールな感じと同時に、芸術的なところもあって。“間”一つとっても、コメディーの難しさを実感しましたし…。そういう意味では挑戦でしたが、僕の好きな世界観でした。こだわろうと思えば、いくらでもこだわって精度を上げられるのかもしれませんが、今回は今持てる力を100%出し切ることができたと思っています。

細川 杉野くんの素のかわいらしさや面白さが一番出ている作品になったんじゃないかな。

杉野 自分でも、「格好いい役より、こういう役の方が向いているかも」と思いました。

細川 でも、こういう作品ばかり来たら困るよね。

杉野 それならそれでもいいかな(笑)。

細川 そんなことを言っていると、本当にオファーくるよ? 磯兵衛だって、まだまだ原作のエピソードがたくさんあるんだから(笑)。

-それでは最後に、視聴者に向けて一言お願いします。

細川 原作を読んだことのある方もそうでない方も、原作と見比べながらご覧いただけると、杉野くんの見事な磯兵衛ぶりも含め、さらに楽しめると思います。ぜひ原作と併せて楽しんでください。

杉野 中島役の鈴木福くんや磯兵衛の母上役の檀れいさんなど、共演者のみなさんも魅力的ですし、細川監督の天才ぶりが存分に発揮された作品になったと思います。ぜひ多くの方にご覧いただけたらうれしいです。

(取材・文・写真/井上健一)

WOWOW プライムにて7月12日(金)スタート、毎週金曜日23時放送・配信(第1話無料)

©仲間りょう/集英社 ©WOWOW

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

大河ドラマ「べらぼう」さらば平賀源内!「源内は蔦重の心の中で生き続ける」演出家が語る源内の最期

ドラマ2025年4月21日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。4月20日放送の第16回「さらば源内、見立は蓬莱(ほうらい)」では、 … 続きを読む

安田顕 さらば平賀源内!「心の中の源内さんと会話しながら演じてきました」【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年4月20日

ー第16回では、獄中の源内と田沼意次が面会するシーンも胸が詰まりました。  あのシーンでは、照明のセッティングなどいろんな準備をする間、僕がセットの中で座って待っていたら、謙さんが「ピンと張っていたら、本番で切れるときがあるから、うまく調整 … 続きを読む

AmBitious・岡佑吏、松岡昌宏との初共演に「緊張」も「振り切る自信はある」 「家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年4月19日

 女装した大柄な家政夫・三田園薫が、派遣された家庭・家族の内情をのぞき見し、そこに巣食う“根深い汚れ”までもスッキリと落としていくヒューマンドラマシリーズ「家政夫のミタゾノ」。松岡昌宏主演で2016年にスタートし、第7シリーズまで続く人気作 … 続きを読む

【週末映画コラム】人気シリーズの最終章『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』/実際の元収監者たちが演劇メンバーを演じる『シンシン SING SING』

映画2025年4月18日

『シンシン SING SING』(4月11日公開)  無実の罪でシンシン刑務所に収監されたディヴァインG(コールマン・ドミンゴ)は、刑務所内更生プログラムの一環である「舞台演劇」のグループに所属し、収監者仲間たちと日々演劇に取り組むことで気 … 続きを読む

神山智洋&中村海人、ドラマ初共演で“ブラザーバディ”が誕生 神山、中村は「かわいい弟という感覚」

ドラマ2025年4月18日

 WEST.の神山智洋とTravis Japanの中村海人が出演する、土ドラ「ミッドナイト屋台~ラ・ボンノォ~」(毎週土曜23時40分放送/東海テレビ・フジテレビ系)の第2話が4月19日に放送される。  本作は、味覚を失ったスゴ腕フレンチシ … 続きを読む

Willfriends

page top