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松本穂香「“推し”がいるってすてきなこと」 ”推し“への思いが高じて家政婦になりすました主人公を熱演「ミワさんなりすます」【インタビュー】

 もしもあなたが、“推し”の家で家政婦をすることになったら…? そんな夢のような出来事に巡り会った女性を主人公にしたドラマが始まる。ただしそれは、赤の他人に“なりすます”ことだった…。10月16日からNHK総合で始まる夜ドラ「ミワさんなりすます」(毎週月~木夜10時45分)は、偶然の成り行きから、“推し”の俳優・八海崇(堤真一)の豪邸でスーパー家政婦になりすまして働くことになった映画オタク、久保田ミワが巻き起こす騒動を描いたコメディーだ。主人公・ミワを演じるのは、連続テレビ小説「ひよっこ」(17)でブレークし、今やさまざまな作品で活躍する人気若手俳優・松本穂香。放送開始を前に、撮影の舞台裏を語ってくれた。

(C)エンタメOVO

-拝見しましたが、松本さん演じるミワさんのキャラクターがユニークで、今後の展開が気になります。演じるに当たって、ミワさんをどんな人だと捉えましたか。

 ドラマの中で、自分のことを「何をやっても不器用で、地味で、流されやすくて…」と言っているように、基本的には「私なんか…」という自己肯定感の低いタイプなんですよね。でもその一方で、年に1000本以上も映画を見る筋金入りの映画オタクでもあり、“推し”の八海崇を「八海様」と呼び、すべてをささげている。そんなふうに、映画と八海様に対してだけは、人一倍強い思いを持っている。さらに、八海様の家の家政婦になりすます大胆な一面もありつつ、同時に「自分は罪深いことをしている」と考える謙虚さもある。そういういろんな面を持っていて、ちぐはぐなところが面白い人だなと。

-松本さんご自身がミワさんに共感する部分はありましたか。

 年に1000本以上も映画を見るって、すごいですよね。しかも、ただ見ているわけではなく、細かくメモを取りながらですから。もはや趣味の域を越え、それが生きがいで、食べることより大事、というぐらいの愛情を持っている。私もそこまではいきませんけど、関西出身で小さい頃から吉本新喜劇などのお笑いは好きだったので、何かを好きな気持ちはよく分かります。ただやっぱり、ミワさんとは比べ物になりません。ミワさんは他のことには一切目もくれず、その分、映画と八海様に対して思う存分エネルギーを注いでいるわけですから。すごいな…と、演じていても圧倒されました。

-ミワさんにとっての八海様のように、“推し”を日々の支えにしている人は、世の中にたくさんいますね。

 日々の生活を頑張る上で、生きがいやモチベーションになる“推し”がいるって、すてきなことですよね。「次のライブがあるから仕事を頑張ろう」みたいな感じで、日々の力になるでしょうし。私には今のところ、そういう“推し”と呼べる存在はいないので、日常のささやかな楽しみを仕事のモチベーションにしています。例えば、「次の休みにはあれを食べに行こう」とか、「この仕事が終わったら、最近会っていない地元の友だちに会いに行こう」とか。だから、“推し”がいたら楽しそうだな…とうらやましくなる時もあります。

(C)エンタメOVO

-ここで改めて、本作のオファーを受けたときのお気持ちをお聞かせください。

 面白いテーマで、楽しそうな作品だと思いました。原作(青木U平氏の漫画)を読んでみたら、少しシュールな感じもありながら、どこかドキドキするような、面白くて笑えるという、いろんな要素を詰め込んだ印象で。演じる上では、そういう原作のニュアンスをうまく表現できたら…と思っていました。

-ミワさんが八海様にハグされて失神する場面なども、原作に忠実に描かれていますね。

 “推し”と急接近して、同じ部屋に閉じ込められたり…というファンタジーな要素が全体的に強いんですけど、演じる上ではやり過ぎてもダメで、かといって普通にやっても面白さが伝わらないので、その辺のさじ加減が難しかったです。ミワさんとしては、ただ一生懸命なだけで、決して面白くしようとしているわけじゃないんですよね。それが、ちょっと引いて見たときに、面白おかしく見えるということで。だから、演じる際には狙いすぎず、その都度、監督や周りの方と加減を相談しながらやっていました。

-現場の様子はいかがでしたか。

 私は主演の場合でも、どちらかというと「自分が現場を引っ張っていこう」というタイプではないんですけど、今回は、明るい方たちがそろったキャストやスタッフの皆さんに助けられました。堤さんはもちろん、片桐はいり(八海邸のベテラン家政婦・一駒和枝役)さんも楽しい方ですし、恒松(祐里/ミワさんがなりすましている“美羽さくら”本人役)さんはいつも元気で、山口(紗弥加/八海のマネジャー、藤浦華純役)さんは周りをぱっと明るくしてくれる方ですし。それぞれの役はもちろん、ご本人もすごく魅力的な方たちばかりだったので、そういう意味では、めったにないくらい楽しい現場で、毎日、笑って過ごすことができました。

-そういう現場の明るいムードは、作品からも伝わってきます。それでは最後に、放送を楽しみにしている視聴者へのメッセージをお願いします。

 月曜から木曜まで1日の終わりに15分、その日あった嫌なことをクスッと笑い飛ばしてくれるドラマになっていると思います。原作はまだ連載中なので、今回のドラマは途中からオリジナルの展開になっていきますが、その点は原作をご存じの方も、また違った作品として楽しんでいただけるのではないでしょうか。また、ミワさんの家のセットなども、美術さんが遊び心を持って飾り付けしてくださったので、そういう部分も、一時停止してじっくりご覧いただけたら、一味違った面白さが見つかると思います。ぜひ1日の終わりに、気軽に楽しんでください。

(取材・文・写真/井上健一)

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