「映画を見終わった後で、自分の愛する人ともっと話したい、つながりたいという気持ちになっていただけたら、本当にうれしいです」『マイ・エレメント』ピーター・ソーン監督【インタビュー】

2023年7月19日 / 08:00

 火、水、土、風のエレメントたちが暮らすエレメント・シティ。家族のために火の街から出ることなく父の店を継ぐ夢に向かって頑張る火の女の子エンバーは、ある日、自分とは正反対で自由な心を持つ水の青年ウェイドと出会う。ディズニー&ピクサー最新作『マイ・エレメント』が8月4日から全国公開される。本作を監督したピーター・ソーンに映画に込めた思いを聞いた。

ピーター・ソーン監督

-日本には「水と油」という言葉もありますが、この映画では「火と水」とのユニークな関係が描かれていました。この発想はどこから生まれたのでしょうか。

 実は火と水というよりも、この映画は親と自分との関係が発端になっています。というのは、若い頃、僕はアメリカ育ちということもあり、韓国から移住してきた親とは結構ぶつかっていました。ところが、自分があるステージに立ったときに、観客席に両親がいて、彼らがどのぐらい年を重ねたのかとか、今まで自分たちのためにどんなに犠牲を払ってくれたのかといった感情が急に湧き上がってきて、壇上から感謝の言葉を述べました。実はそのことが、この映画のきっかけになっています。そこから、移民であることや、外国人であること。それから、好きになった人が、自分とは違う背景を持っていたらどうなるのかといったことに発展していきました。水に関しては、僕自身が韓国系ではない人と恋に落ちたときに、両親や家族から「韓国人でなければ…」という反応があったので、そこから出てきたものです。

-ピクサーアニメのパターンの一つに、最初は違和感がある異形のキャラクターが徐々になじんできて、いつの間にか感情移入させられてしまうというのがあります。この映画も、その一つだと思うのですが、主人公たちを異形の者とする意図は、どこにあったのでしょうか。

 すごい質問ありがとうございます。僕が子どもの頃は、アジア系の作品はほとんどなくて、自分とは違う人種の人たちが出てくる作品ばかりでした。なので、親たちには全く理解できないし、心が通じ合わないようなところがありました。でも、アニメは違いました。擬人化されているものも含めて、親も自分も理解できて、そのアニメ作品を通して通じ合うことができたり、絆を深めることができました。そうした普遍性みたいなものを、僕は子どもの頃からずっと求めていました。大人になってからは、メタファーを見つけることが面白いと思うようになりました。おっしゃるように、大事なのは共感できるのか、感情移入できるのかということです。そう考えると、アニメは人生のいろいろなことを象徴表現することができるし、同時に爆発的な存在にもなり得る。そういう存在にわれわれ人間は果たして感情的につながることができるのか。今回はそんなふうに考えながらスタートしました。

-この映画は、これまでのピクサー作品とは違い、エンバーとウェイドのラブストーリーが前面に出ていたと思います。何か意図するところがあったのでしょうか。

 もちろん意図的な部分もあって、交わることが不可能だと考えられている火と水という逆の存在同士が、それを超えられるのか、ミラクルは起きるのかというところが、この作品の原動力になっています。同時に、同じような体験をした人の話を取り入れて、私たちはどこに属しているのか、あるいは居場所はあるのかというテーマも掘り下げました。

-この映画は、色遣いが印象的でした。火や水を表現するのはなかなか難しかったと思いますが、色遣いについて特に気を使った部分はありましたか。

 感情表現という面では、とても重層的に色彩設計をした作品です。テーマの一つであるアイデンティティーという意味では、エンバーがその場所に属しているのか、いないのかが重要でした。ファイアタウンにいるときは、みんなと同じ赤に染まっていますが、外の世界に出たときは違う色彩になります。でも、ウェイドという存在を通して、赤と青が混ざり合って紫になり、最終的には、その二つが一つになったときに、とても強い紫になります。このように、エンバーの感情を色彩で表現するというのも重要な部分でした。

-この映画は、人種、移民、差異、親子、出会い、可能性など、いろいろな問題が内包されていると思いますが、監督自身が、一番観客に感じてもらいたい、見てもらいたいと思うのはどの部分でしょうか。

 やはり、共感力や思いやりというものが架け橋になって、誰かとつながるというところかなと思います。それは実際に自分が親に対して行ったことでもあります。それには、ちょっとした勇気が必要でしたが、そのちょっとした行動が、とても大きなものにつながっていくと分かったので、映画を見終わった観客が、例えば、久しぶりに家族と連絡を取ってみたり、誰かとより親しい関係でつながろうと思ってくれたら、本当にうれしいです。

 
  • 1
  • 2

関連ニュースRELATED NEWS

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

大西礼芳「どうやって死ぬかということは、どうやって生きるかということとつながりますよね」『安楽死特区』【インタビュー】

映画2026年1月21日

 「安楽死法案」が可決された近未来の日本。国家戦略特区として、安楽死を希望する者が入居しケアを受けられる施設「ヒトリシズカ」が開設された。難病を患い余命半年を宣告されたラッパーの酒匂章太郎(毎熊克哉)は安楽死法に反対しており、パートナーでジ … 続きを読む

M!LK・吉田仁人、「怒涛の1年」を振り返り“チームM!LK”に感謝 シリーズ第2弾「FFBE幻影戦争 THE STAGE II」では「第1弾を超えられるような作品に」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年1月21日

 「イイじゃん」が大ヒットを記録し、第67回日本レコード大賞優秀作品賞を受賞、第76回NHK紅白歌合戦にも出場するなど、旋風を巻き起こしたM!LK。グループのリーダーも務める吉田仁人は、息つく間もなく1月30日から上演される「FINAL F … 続きを読む

志田未来「子どもが泣いていると、うるっとしてしまうのは新しい感情」 火曜ドラマ「未来のムスコ」で母親役【インタビュー】

ドラマ2026年1月20日

 志田未来が主演する火曜ドラマ「未来のムスコ」(TBS系)が、1月13日から放送中だ。本作は、阿相クミコ氏・黒麦はぢめ氏の人気漫画をドラマ化。“定職なし、貯金なし、彼氏なし”の崖っぷちアラサー女子・汐川未来(志田)が、ある日突然5歳児・汐川 … 続きを読む

竹内涼真、5年ぶりの舞台に「リニューアルした自分で臨む」 ミュージカル「奇跡を呼ぶ男」でゴスペルにも挑戦【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年1月17日

 主演作品のドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(TBS系)が話題を呼び、Netflix映画『10DANCE』では美しく激しいラテンダンスで視聴者を魅了する竹内涼真。2026年1月から放送のドラマ「再会~Silent Truth~」(テレ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(10)石浦神社で語る「八田與一と嘉義農林学校」

舞台・ミュージカル2026年1月16日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。  語りは、土地と人を結び直します。 … 続きを読む

Willfriends

page top