【インタビュー】映画『ツーアウトフルベース』阿部顕嵐「自分の幅を広げるチャンスだと思いました」長編映画初主演でドラッグに溺れる青年役

2022年3月24日 / 08:00

 7人組ユニット「7ORDER」の阿部顕嵐が、長編映画初主演を飾る『ツーアウトフルベース』が、3月25日から公開される。本作は、かつてはプロ入りが期待されるほどの高校球児だったイチとハチが、薬物に手を出し、堕落した生活を送っていたことでハプニングに巻き込まれ、人生サイアクの1日を疾走する羽目になる姿を描く。バンド活動を夢見てもがく元高校球児のイチを阿部、野球部時代の相棒で腐れ縁のハチを板垣瑞生が演じる。脚本は映画『ミッドナイトスワン』の内田英治、監督は映画『レディ・トゥ・レディ』で高い評価を受けた藤澤浩和が務める。今回は、阿部に役作りについてや、撮影の思い出などを聞いた。

イチ役の阿部顕嵐

-イチは、普段の阿部さんのイメージからは想像もつかないような役でした。阿部さんにとっては挑戦となる役柄だったのでは?

 そうですね。これまで泥くさい役を演じたことはほとんどなかったので、だからこそ自分の幅を広げるチャンスだと思いました。これまでは決められたことを決められた通りに演じることが多かったのですが、今回の撮影では決められたことの中で自由に演じるという経験をさせていただき、僕にとっては新たな挑戦でした。

-決められた中で自由に演じるというのは、例えば?

 台本に書かれたせりふを言うだけではこの作品は成り立たないと感じていたので、よりイチらしさを出すための芝居を自分なりに考えました。例えば、イチは常に何かほかのことをしながら話している、会話に集中しない人物だと思うので、台本には何も書かれていなくても、常に動いて、落ち着きのなさを出す芝居をしたり…。

-なるほど。ルックスもかなり作り込んでいましたね。ヨレヨレのTシャツにボサボサの金髪姿はインパクトがありました。

 今回は、体重も落としたんです。やっぱり、ふっくらしていると堕落した感じが出ないと思ったので、5キロ痩せました。それに、撮影中は猫背でいることもずっと意識していたので、今、猫背が取れなくなってしまって困っています(笑)。

-もともと細いのに、そこから5キロの減量は大変だったのでは?

 大変でした。基本的には食事制限で絞ったので、食事をひたすら減らしたのですが、やっぱり食べないのはよくないと改めて思いました。僕はあまり不安定にならないタイプですが、精神的にもかなりきつかったです。

-ハチ役の板垣さんとは今回、初共演だそうですが、バディを演じてみて板垣さんにどんな印象を持ちましたか。

 瑞生は、物事を俯瞰的に見る人だという印象でした。基本的に、現場以外もずっと一緒にいたんです。家にも泊まりに来たし、ご飯も一緒に食べに行きました。僕はすぐに仲良くなるタイプではないので、深く付き合う人は少ない方なのですが、瑞生は特別でした。年齢差も感じさせないし、一緒にいてすごく楽で、すぐに仲良くなれたんです。多分、似ているところがあるんだと思います。

-板垣さんとの撮影で印象に残っていることは?

 瑞生も僕も、台本をギリギリまで覚えられなかった日があったんです。本来、よくないことだと思うんですが、この作品においては、今振り返るとそれもよかったんだなと思います。せりふを間違えたり、かんでいるシーンも使われていますが、決められていないアンバランスさや、完璧じゃないところがこの映画の表現にふさわしかったのかなと思いました。

-確かに、せりふをかんでいるシーンもありました。

 それから、「エンジンのレストア」というシーンで、瑞生が「エンジンレストア」とつなげて言ったシーンも使われていると思います。瑞生は自分が間違えていることに気付かずに話していたそうですが、(板垣が演じた)ハチは車のことをよく分かっていないというキャラクターなので、それが逆にリアルでいいと、監督がOKを出したシーンもありました。

-車といえば、本作では車もキーワードの一つですね。阿部さん自身は車の運転はしますか。

 します。すごく好きなんです。今回は撮影でいろいろな車に乗せていただきました。今回、黒のベンツでカメラに向かって突っ込むシーンがあるのですが、そのシーンも僕が運転しています。ワンカットで撮影したのですが、あれは今までの人生で3本の指に入るぐらいドキドキしました。カメラを持っている(撮影の)伊藤(麻樹)さんに向かって突っ込んでいくのですが、砂利道だったこともあって、ひいてしまうのではないかと本当に怖かったです。

-撮影は1回でOKが出ましたか。

 はい、1回で。隣に乗っていた瑞生も「本当に怖い」と言っていました。でも、思い切り突っ込んでいかないと、スピード感がある映像にはならないと思ったので、ハラハラドキドキではありましたが、スピードを出してよかったと思います。

 
  • 1
  • 2

関連ニュースRELATED NEWS

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top