【インタビュー】映画『ミラベルと魔法だらけの家』製作イベット・メリノ 「眼鏡には、本質を見ることの大切さを託しています」

2021年11月25日 / 06:56

 ディズニー・アニメーションの最新作『ミラベルと魔法だらけの家』が11月26日から公開される。『ズートピア』(16)のバイロン・ハワード&ジャレド・ブッシュが監督し、音楽を『モアナと伝説の海』(16)のリン=マニュエル・ミランダが手掛けている。舞台は、南米コロンビアの山奥に建つ魔法の力に包まれた不思議な家。家族全員が家から与えられた魔法の才能を持つ中で、ミラベルだけは何の魔法も使えなかった…。まさに『ズートピア』と『モアナ~』が融合したような娯楽性と多様性を兼ね備えたミュージカル・アニメーションで、ラテンのリズムが心地いい。自身もラテンの出自である製作のイベット・メリノに、その魅力を聞いた。

イベット・メリノプロデューサー (C)2021 Disney. All Rights Reserved.

-この作品のユニークな設定はどこから得たのでしょうか。

 監督のバイロンとジャレドが、『ズートピア』が終わったときに「次はミュージカル映画をやりたいね」と話していました。それで、音楽のリン=マニュエル・ミランダが加わって、3人でどんなミュージカルにしようかと相談していく中で、家族をテーマにすることで一致しました。ラテンアメリカを舞台にしたいと提案したのはミランダです。

-主人公のミラベルは眼鏡を掛けていて、美少女でもプリンスでもありません。一つの家が舞台で、冒険の旅にも出掛けませんね。

 そうですね。ディズニーのアニメーションの中では、今までで一番複雑かもしれません。主人公が2~3人いて旅に出るというパターンが典型ですから。でも、今回は12人も家族がいて、しかもずっと家が舞台。家族の物語にしたかったので、典型的なラテンアメリカの家族がどうやって暮らしているかをリサーチして、3世代が同居している設定にしました。確かに、ミラベルは眼鏡を掛けています。私も同じなのでうれしいのですが、私たちは眼鏡に意味を託していて、自分の期待や先入観に縛られないで本質を見ることの大切さを示唆しています。

-これまでにない設定に不安はありましたか。

 確かに不安に思うこともありましたが、同時に確固たる自信もありました。それはバイロンとジャレドが、素晴らしい世界観を作り上げる才能と、興味深くて、ときには笑ってしまうようなストーリーテリングの能力に長けていることを知っていたからです。ただ、作業するアーティストたちは大変だったと思います。製作がスタートする前には、既にステイホームの状況になっていたので、各自が作業を全て家でしなければならなかったからです。

-バラエティーに富んだ魔法がたくさん出てきます。個人的にお気に入りの魔法は?

 私だったら、アントニオの動物とコミュニケーションが取れる魔法が欲しいです。というのも、私の愛犬が何を考えているのかを知りたいので(笑)。

-魔法の表現で技術的に苦労したところは?

 イサベラの花を咲かせる魔法とか、カミロが他の人物に変身するときの描き方には特に気を付けました。視覚効果では、ペパの天気の魔法です。彼女の気分によって雨が降ったり、風が吹いたり、竜巻が起きたりするので、エフェクトチームが協力し合って、ペパと一緒に動いていく天気が、その時々でどう変化するのかを考えなければなりませんでした。

-魔法以外では?

 テクニカルアニメーション部門の人たちにとって最も大変だったのは、むしろ布や髪でした。例えば、ドレスやスカートが動く際、今回は重ね着が多く、コスチュームのレイヤーが幾重にも重なる表現というのは私たちがあまり使わない技術でしたから。ミュージカルシーンでくるくる回る際の層になったスカートの動きなどは相当悩んでいました。また、髪の毛の表現も、例えば、ペパの場合、風が吹いたときの髪の動き方や質感が大変でしたし、キャラクターにも多様性があって、それぞれの髪の質感がバラバラなので、キャラクターに合わせて一人一人変えていかなければなりませんでした。

 
  • 1
  • 2

関連ニュースRELATED NEWS

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

オダギリジョー「麻生さんの魅力を最大限引き出そうと」麻生久美子「監督のオダギリさんは『キャラ変?』と思うほど(笑)」『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』【インタビュー】

映画2025年10月17日

 伝説の警察犬を父に持つオリバーとそのハンドラーを務める鑑識課警察犬係の青葉一平(池松壮亮)のコンビ。だが、なぜか一平だけにはオリバーがだらしない着ぐるみのおじさん(オダギリジョー)に見えており…。  この奇想天外な設定と豪華キャストが繰り … 続きを読む

【映画コラム】初恋の切なさを描いた『秒速5センチメートル』と『ストロベリームーン 余命半年の恋』

映画2025年10月17日

『秒速5センチメートル』(10月10日公開)  1991年、春。東京の小学校で出会った遠野貴樹(上田悠斗)と転校生の篠原明里(白山乃愛)は、互いの孤独を癒やすかのように心を通わせていくが、卒業と同時に明里は栃木に引っ越してしまう。  中学1 … 続きを読む

大谷亮平「お芝居の原点に触れた気がした」北斎の娘の生きざまを描く映画の現場で過ごした貴重な時間『おーい、応為』【インタビュー】

映画2025年10月16日

 世界的に有名な天才浮世絵師・葛飾北斎。その北斎と長年生活を共にし、自らも絵師“葛飾応為”として名をはせた娘・お栄の生きざまを描いた『おーい、応為』が10月17日から全国公開となる。劇中、北斎(永瀬正敏)の弟子の絵師“魚屋北渓”として知られ … 続きを読む

黒崎煌代 遠藤憲一「新しいエネルギーが花開く寸前の作品だと思います」『見はらし世代』【インタビュー】

映画2025年10月15日

 再開発が進む東京・渋谷を舞台に、母の死と残された父と息子の関係性を描いた『見はらし世代』が10月10日から全国公開された。団塚唯我のオリジナル脚本による長編デビュー作となる本作で、主人公の蓮を演じた黒崎煌代と父の初を演じた遠藤憲一に話を聞 … 続きを読む

草なぎ剛「今、僕が、皆さんにお薦めしたい、こういうドラマを見ていただきたいと思うドラマです」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」

ドラマ2025年10月14日

 草なぎ剛主演の月10・新ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時/初回15分拡大)が13日から放送スタートとなった。本作は、妻を亡くし、幼い息子を男手一つで育てるシングルファーザ … 続きを読む

Willfriends

page top