X


【インタビュー】Amazon Prime Videoオリジナル音楽番組『ザ・マスクド・シンガー』司会・大泉洋「中に入っているのが、先輩なのか後輩なのかも分からないので、どこまで失礼なことを言ってもいいのかとドキドキしました」

 Amazon Prime Videoオリジナル番組『ザ・マスクド・シンガー』が、9月3日から独占配信中。この番組は、全世界50カ国が熱狂している音楽ライブエンターテインメントの日本オリジナル作品。マスクをかぶった各界の豪華スター12人がパフォーマンスバトルを繰り広げ、その正体を推理する番組だ。司会を務めるのは、「紅白歌合戦」に続いての司会となる大泉洋。大泉に、番組の見どころや司会業、音楽などについて聞いた。

司会の大泉洋(ヘアメーク:西岡達也(Leinwand)/スタイリスト 九(Yolken))

-昨年の「紅白歌合戦」の司会の後で、今回のオファーがあったそうですが、司会者として番組に臨む際に、心掛けていることはありますか。

 「紅白」のときにも思いましたが、僕がやるからには、きれいな司会が求められているわけではないので、ある程度ガチャガチャとした危うさも含めて楽しんでもらう中で、まずは見る人に笑ってもらいたいなと思っています。後は、誰一人として嫌な気持ちにならないようにしたいなと。見てくれる方もそうだし、もちろん出てくれた方が、嫌な気持ちにならないで、皆がハッピーな気分で終われるようにしたいというのを、どんな番組でも心掛けています。とはいえ、失礼なことも言わざるを得ないときもある。僕はそういう笑いの取り方しかできないので…(笑)。そこが難しいところではあります。相手が嫌にならない悪態というか、かわいい悪態をつきながら、皆で楽しい番組ができたらいいなという願いをいつも持っています。

-自分のところに司会の話がくるのは、自分らしさが求められているから、ということを常に意識しているということですか。

 そうですね。きっちり司会をさせたかったら、わざわざ僕に頼む必要はないわけですから(笑)。もっと如才ない人はいくらでもいるわけです。ただ、今回の『ザ・マスクド・シンガー』は、アメリカ版を見ても、芝居じみているというか、司会者がどこか役者っぽいわけです。例えば、アカデミー賞の司会も俳優がやることが多いし、そういうところが僕に求められているのかなとは思いました。

-今回のように、一人で司会をするということに不安はありましたか。

 最初はありました。「一人か…」みたいな。これまでは、隣できちんと進行をしてくれるプロの方がいて、横でやいやい言っていればよかったので、気は楽だったのですが…。ですから、今回は「一人で全部やるのか」「ちょっとカロリー高いわ」と思って一度は断ったんです。僕自身は特に「司会者になりたい」と思っているわけではないので。それがなぜか続いてしまったんです。どんどんと司会者としての色が濃くなるので、それもどうなのかなと思いました。ただ、Amazon Prime Videoという、地上波とはまた違う土俵でやるのは面白いのかなとは思いました。引き受けた理由の一つはAmazon Prime Videoだったからかもしれません。ただ、一人で司会をすることは、僕にとってはハードルが高かったです。

-顔を隠してパフォーマンスをする人の正体を推理する音楽番組というのは新しい試みだと思いますが、最初にこの企画を聞いたときは、どう思いましたか。

 最初に話を聞いたときは、「とはいえ、分かるんじゃないの。マスクをして歌うといっても、超有名人でしょ」という感じでした。でも、本当に分からなかったです(笑)。思いのほか分からないんだな、というのがやってみての感想です。

-実際にパフォーマンスを見た感想は?

 すごいなと思いました。皆さんが優勝するつもりで参加しているから、優勝するまでの曲を何曲も、すごく練習してきているんです。それに、ダンスがあったり、お芝居をするパートもあったりして、とても気合を入れて挑んでらっしゃる。だから、どのパフォーマンスも面白かったし、皆さん歌がうまいから、本当にすごかったです。そして、正体が分かったときの、「こんな人が出てくれていたんだ」という驚きもありました。中にはすぐに正体が分かる人もいましたが、逆の意味で、「こんなに分かっちゃうってやっぱりすごいな。さすがだな」と(笑)。ただ、中に入っているのが、先輩なのか後輩なのかも分からないので、どこまで失礼なことを言ってもいいものかとドキドキしました。「ばかやろう」とか言って、正体が分かってから後悔したこともありました(笑)。

-司会を通して、音楽に対する意識に変化はありましたか。

 改めて、音楽の力は強いと感じました。短い時間でものすごいエネルギーを与えてくれます。昨今はコロナも含めて災害も多いですが、そういうときに、一番早く、人々に力や明るい希望を持たせてくれるのは、やっぱり歌なんだなあと思います。人に語られると、説教くさかったり、素直に聞けないこともありますが、不思議なことに、歌にして届けられると、聴けちゃうところがありますよね。生まれ変わったらアーティストがいいなと思います。生まれ変わったら、おやじとおふくろに「落語のテープを聴かせるのはやめてくれ。音楽を聴かせてくれ」と言います(笑)。

-マルチな才能を発揮する秘訣(ひけつ)は?

 結局、僕はどこへ行っても文句を言っているだけなんですが…(笑)。何かよく分からないけれども、人々は僕の文句やぼやきを求めているのかなと。仕事から疲れて帰ってきて、自分よりも不遇なやつを見たいんじゃないかな(笑)。自分が普段言えないような文句をやたらとテレビで言うやつがいる。「またこいつ文句言ってるよ」と。それで少しはすっきりするのかなと。今回もマスクドシンガーに文句ばかり言っていますから。自分でも「どうして人を笑わさなければ気が済まないんだ?」と思います。

-視聴者に向けて、番組のアピールポイントや見どころなどをお願いします。

 マスクドシンガーの人たちのパフォーマンスが圧倒的にすごくて、うまい歌ってすごい力があるんだなあと思いました。普通の歌番組では、アーティストが新曲を歌うので、当然知らない歌もあるわけですが、今回は名曲や大ヒット曲しか歌わないから、聴いていて楽しいし、皆が知っている歌を、一流の有名人が歌っているので、そこも見どころだと思います。単純に、「これ、誰が歌っているの?」と考えながら見るのも楽しいですよ。そこに、僕とパネリストの皆さんとの面白いトークも入るので、本当によくできた番組だと思います。日本の皆さんがあまり見たことがないような、海外の番組のフォーマットを、がちがちの日本人がやっているわけですが、そのコラボレーションも楽しいと思います。

(取材・文/田中雄二)

『ザ・マスクド・シンガー』司会の大泉洋とバード (c)2021 Amazon Content Services LLC

 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

玉置玲央「柄本佑くんのおかげで、幸せな気持ちで道兼の最期を迎えられました」強烈な印象を残した藤原道兼役【「光る君へ」インタビュー】

ドラマ2024年5月5日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。5月5日放送の第十八回で、主人公まひろ/紫式部(吉高由里子)にとっては母の仇に当たる藤原道長(柄本佑)の兄・藤原道兼が壮絶な最期を迎えた。衝撃の第一回から物語の原動力のひとつとなり、視聴者に強烈 … 続きを読む

「光る君へ」第十七回「うつろい」朝廷内の権力闘争の傍らで描かれるまひろの成長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年5月4日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月28日に放送された第十七回「うつろい」では、藤原道長(柄本佑)の兄である関白・藤原道隆(井浦新)の最期が描かれた。病で死期を悟った道隆が、嫡男・伊周(三浦翔平)の将来を案じて一条天皇(塩野瑛 … 続きを読む

妻夫木聡「家族のために生きているんだなと思う」 渡辺謙「日々の瞬間の積み重ねが人生になっていく」 北川悦吏子脚本ドラマ「生きとし生けるもの」【インタビュー】

ドラマ2024年5月3日

 妻夫木聡と渡辺謙が主演するテレビ東京開局60周年特別企画ドラマスペシャル「生きとし生けるもの」が5月6日に放送される。北川悦吏子氏が脚本を担当した本作は、人生に悩む医者と余命宣告された患者の2人が「人は何のために生き、何を残すのか」という … 続きを読む

城田優、日本から世界へ「日本っていいなと誇らしく思えるショーを作り上げたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年5月3日

 城田優がプロデュースするエンターテインメントショー「TOKYO~the city of music and love~」が5月14日から開幕する。本公演は、東京の魅力をショーという形で世界に発信するために立ち上がったプロジェクト。城田が実 … 続きを読む

【週末映画コラム】台湾関連のラブストーリーを2本『青春18×2 君へと続く道』/『赤い糸 輪廻のひみつ』

映画2024年5月3日

『青春18×2 君へと続く道』(5月3日公開)  18年前の台湾。高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)は、アルバイト先のカラオケ店で4歳年上の日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)と出会い、天真らんまんでだがどこかミステリアスな彼女に恋 … 続きを読む