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【インタビュー】ミュージカル「ウェイトレス」宮野真守 舞台では「見た目でもどれだけその人物をかたどれるか」を意識

 映画『ウェイトレス〜おいしい人生のつくりかた』をベースに制作された、ブロードウェーミュージカル「ウェイトレス」が、高畑充希の主演で3月9日から上演される。本作は、グラミー賞にノミネート歴があり、楽曲を手掛けたサラ・バレリスをはじめ、脚本、作曲、演出、振り付けの主要部門を全て女性クリエーターが担当したことでも注目を集めた。日本では今回が初演となる。妻がいながら主人公ジェナと深い仲になってしまう産婦人科医のポマター医師を演じる宮野真守に、本作への意気込みを聞いた。

ポマター医師役の宮野真守

-出演が決まったときの心境は?

 自分にお話を頂けて本当に光栄だなと思いましたし、また新たに素晴らしいミュージカルに挑戦できるということが、自分の役者人生の中でとても大きな経験になると思いました。

-ベースになった映画やブロードウェー版はご覧になりましたか。

 はい。お受けした後で、いろいろと見させていただきましたが、歌がとんでもなく難しかったので、焦りました(笑)。もちろん、ストーリーも面白く、見応えのある作品でしたが、ミュージカルとしての華やかさや、楽曲の素晴らしさが印象に残る作品で、「これ、僕歌えるのかな」と(笑)。頑張ります。

-今回は、主人公と恋仲になる産婦人科医という役柄です。今現在、宮野さんはどのようなキャラクターだと考えていますか。

 「禁断の恋愛」と言いますか、「大人の恋」と言いますか…。非常にコメントが難しい関係です(笑)。でも、演じていく中で、彼自身が抱く衝動に、真っすぐ素直に向きあっていければいいのかなと思っています。高畑さんとのやりとりの中で、発見できることがいっぱいあると思うので、稽古が楽しみです。

-新しい宮野さんが見られそうですね。

 僕、舞台では日常を切り取ったような作品にあまり出演したことがないんです。刀を振るって100人斬り倒したり、古代エジプトにいたり、この間は、1950年代アメリカのウエストサイドにいたり…(笑)。「現代劇の恋愛」は初挑戦になるので、どれだけ身を委ねられるかというのがポイントになると思います。

-これまでに出演した作品とは、時代も違いますが、その点では、どのような楽しみがありますか。

 時代背景も、もちろん全く違いますが、何よりも楽曲の違いを感じます。「ウエスト・サイド・ストーリー」はセミクラシカルな楽曲でしたが、今回の「ウェイトレス」はポップミュージックです。歌唱の仕方も変わってくるので、「ウエスト・サイド・ストーリー」で経験して得たものや、自信をどう発揮できるのか。ポップミュージックをミュージカルの中でどう表現できるのか。自分の中でもまだ未知数なので楽しみです。

-声優としてはもちろん、ミュージカル界でも存在感を発揮している宮野さんですが、声で演じることと、ミュージカルの舞台に立って演じること、それぞれの楽しさや難しさをどこに感じていますか。

 役を演じる上での心掛けは変わりませんが、ミュージカルや舞台では、自分の見た目をどれだけ自信を持って提供できるかということは考えます。それは、僕にとっては意外と勇気がいることなんです。僕がポマター医師だと自信を持ってステージに立つまでには、自分の見た目も含めて、役としての要素や自分の中での気持ちをしっかり携えたい。だからこそ、見た目でもどれだけその人物をかたどれるかということは意識します。

 声優の仕事は、ある意味、自分の見た目を超えられるお仕事です。それこそ、年齢もそうですし、時には人ではない存在にもなれます。演じられる役の幅が広いというのは、声優の面白いところです。でも逆に、声だけでいかに表現するかという点では緊張感があります。キャラクターの精神性もどんどん突き詰めて、それが声色にまで表れるようにという気持ちの高め方をしています。

-見た目に自信を持つために、ステージに上がる前には何か準備をするのですか。

 音楽活動をするようになってからは、コンサートのステージに立つこともあるので、体力面の強化が必要だなと、特に感じるようになりました。それで、トレーニングジムに通って体を作っています。僕はとても緊張しいで、臆病な人間なので、しっかり準備をしないと自信を持ってステージに立てないんです。なので、お稽古もそうですが、納得がいくまで突き詰めるようにしています。

-宮野さんの活力源は?

 僕は子どもの頃から非常にテレビっ子で、お笑いもドラマも音楽番組もアニメも、テレビにかじりついてずっと見ていました。それが僕の中でのエンタメの原点でもあります。あのテレビの中の存在になりたい、あの世界が好きだと、小さい頃から思っていました。なので、今も疲れて帰ってきたときには、録りためておいたお笑い番組をひたすら見て、笑って1日を終えるというのが、僕の中の活力源です。

-2020年は、コロナ禍での舞台公演が続き、エンタメの世界も大きく変わりました。宮野さんはどのような思いを持って過ごしていましたか。

 世界的に危機的な状況で、苦しんでいる方もたくさんいらっしゃると思いますが、自分は諦めることだけはしたくないと思いました。コロナ禍になって、エンターテインメントもパタッと止まってしまって、自分も本当にどうしていいのか分からなくなりましたし、エンタメは不要不急なのかと思って切なくなりました。でも、苦しいときこそ娯楽やエンタメを求める人もいる。それならば、提供する側にいる僕は、どうにか足を止めずに、今できることを頑張ろう、と。

 この1年で、エンタメの可能性も大きく広がりました。僕自身も、最小人数で行うという意味での二人芝居にも挑戦し、自分の中でもエンタメに向けての可能性というものは広げてこられたと思うので、これを未来につなげていくためのエネルギーに変えて、面白いエンタメを届ける人間になりたいと思っています。

-公演を楽しみにしている方にメッセージを。

 日本初演となる作品なので、「この役なら宮野だよね」と言ってもらえる存在になれるように精進して、面白い作品を、みんなで力を合わせて作り上げたいと思います。開幕する3月までに、状況がまた変化しているかもしれませんが、僕らは諦めずに進んでいきます。ぜひ、皆さんも楽しみに待っていただけたらと思っています。

(取材・文/嶋田真己)

ミュージカル「ウェイトレス」

 ミュージカル「ウェイトレス」は3月9~30日、都内・日生劇場ほか、福岡、大阪、名古屋で上演。
公式サイト https://www.tohostage.com/waitress/

 

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